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【RIDERS CLUB 500号記念コラムvol.6】 レーサーレプリカとは一線を画した個性派

【RIDERS CLUB 500号記念コラムvol.6】 レーサーレプリカとは一線を画した個性派 【KEN’S TALK 特別編】

実はスズキがビッグバイク参入で4ストローク・エンジン化した、日本メーカーでは最後の存在でした。GS750/1000と後発でも性能・信頼性でも優れた機種を世に出していましたが、レースなどで性能的に追いつき追い越したとしても、肩を並べただけではない、メーカーとしてのオリジナリティを欲していたのは間違いありません。KATANAはまさにその思いを具現化する好機と捉えたからこそ、妥協をしない徹底ぶりを貫き、日本のバイク史上に残る名車が生まれたのです。 このKATANAシリーズにはデザインコンセプトを共有したGS650Gもあって、中型機種らしいコンパクトさで乗り味を含め好感度でした。ただ1100ccのKATANAは、国内では750ccまでという当時の自主規制でそのままでは販売できず、排気量をサイズダウンしたGSX750S KATANAとして登場したのですが、何と規制のためにオリジナルの低いセパレート・ハンドルが許されず、大きく長く上に持ち上げられたアップハンドル装着という個性を台無しにするカタチでした。当然オーナーはこの耕耘機のようなハンドルが許せず、輸出用KATANAの部品でオリジナル・デザインへ改造?する人が多く、そこに目をつけた取り締まりもありました。いわゆるカタナ狩りと呼ばれた懐かしい逸話もあって、憶えていらっしゃる方も少なくないと思います。

Ninjaというカワサキらしい迎合しない個性

KATANAのお話をしたので、ちょっと時間的にはズレてしまうのですが、レーシーな流れに迎合しなかったもういっぽうの雄として’84年にデビューしたカワサキGPz900R Ninja を忘れるワケにはいきません。カワサキはZ1・Z2の成功で、一躍ビッグバイク・メーカーのトップブランドへ躍進しました。その後も高性能と優れたハンドリングなど信頼性の高いZシリーズでリーダー的存在でしたが、’83年のGPz1100でも依然として空冷エンジンを採用していたので、高性能化への限界と大型すぎる車格にライバルとの差を感じさせるようになっていたのです。そこを一気に巻き返す水冷化エンジン開発で、カワサキは他にないコンパクト化も重視、シリンダーのスリーブを直接冷却するウエットライナーを珍しく量産車へ採用したり、キャブレターからの吸気をストレート化するのにDOHCを駆動するカムチェーンを常識的な4気筒の中央ではなく、左端に配置するというバイクでは初のレイアウトを採用したのです。さらに全体のコンパクト化のために、エンジンを車体の強度メンバーとするためリジットマウントを採用、振動を抑えるため4気筒エンジンでも2次振動バランサーを駆動する革新的な構成でもありました。 【RIDERS CLUB 500号記念コラムvol.6】 レーサーレプリカとは一線を画した個性派 【KEN’S TALK 特別編】 【RIDERS CLUB 500号記念コラムvol.6】 レーサーレプリカとは一線を画した個性派 【KEN’S TALK 特別編】

そしてこの革命児の纏うデザインに、カワサキは一目瞭然で他との差別化ができるコンセプトを込めたのです。ライト回りの尖った処理、テールカウルにも同様なラインを与え、ビッグバイクにありがちな大人向けのバランスの良いメジャー感を排除するという冒険にチャレンジしました。しかし、まだ強烈さが足らない、このバイクにしかない個性とは……そんなとき、カウルに隠れたサイドカムチェーンのエンジンが、センターカムチェーンを見慣れた目にはカッコ悪いという声を聞いたのです。まァカウルがあるから気にならないでしょうとの意見に、だったらその大きなカバーに見えるカッコ悪いサイドカムチェーンを露出してしまおうという奇策に出たのでした。 それがフルカウルが既に珍しくなくなっていた当時に、敢えてカウルの両サイドを切り取ってエンジンを見せた個性的なデザインとなったのです。この個性的なスタイルは多くのファンを魅了し、カワサキがさらにフラッグシップとして新型を投入しても人気が衰えず、モデルチェンジの絶えなかったこの時代に、何と2003年まで継続生産されるというロングランとなったのでした。 このKATANAとNinjaという、マーケティングで圧倒的多数を追い求めるのが大前提の日本メーカーが、メジャー感を否定した製品を開発したという事実は、バイク史上で燦然と光を失うことのないエポックとして語り継がれていくでしょう。

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