【アプリリア|RS457】エントリースポーツの覇権を狙える本格派【中野真矢×平嶋夏海インプレッション】

先行披露を経て2023年のEICMA(ミラノショー)で詳細が発表された、アプリリアの新型ライトウエイトスポーツが、2025年から日本市場にも導入が開始された。スポーツライディング入門やサーキット専用マシンにも使えそうなこのRS457を、中野真矢さんと平嶋夏海さんが筑波サーキット・コース1000で吟味した。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA
取材協力/ピアッジオグループジャパン TEL03-3454-8880
https://www.aprilia.com/jp_JA/
走りのペースを掴みやすい車体の剛性感やバランス
RC 新型ライトウエイトスポーツRS457は、2023年9月に母国で開催された MotoGPのサンマリノGP 会場で初披露され、同年のEICMAで詳細なスペックが発表されたモデル。そして今年2月から、日本市場にも導入が開始されます。
アプリリアとしては新たなセグメントへの参入となり、RS660とRS125の間を補完してフルカウルスポーツ系のシリーズを完成させる重要なピースともなる1台なのですが、サーキットで試乗してみて、中野さんと平嶋さんはどのような印象でしたか?
中野 こういう表現は失礼かもしれませんが、想像していたよりも素直なフィーリングで走り始められたことに驚きました。ミドルクラスの中でも、2気筒や単気筒のエンジンを搭載したいわゆるエントリースポーツ系は、公道での乗り味を重視したモデルのほうが一般的。つまりサーキットを走らせたとき、車体やサスペンションをはじめとするいろんなものが柔らかく感じられ、慎重に入らざるを得ないことが多いんです。
ところが RS457 にはそういう印象がなく、少なくともスピードレンジが低めの 筑波1000 では、最初からある程度のペースで走ることができました。

平嶋 私は想像していたよりもツーリング向きのバイクという印象でした。RS457 は、かなり精悍なスーパースポーツスタイルなので、もっとスパルタンな乗り味を想像していました。でも実際には車体が軽くて、私(身長154㎝)がレーシングスーツを着用した状態でも両足が着くという、またがった段階での取っつきやすさがあります。
これまでもそうでしたが、私のレベルだとスポーティすぎる車種は慣れるまでに時間がかかるんです。でも RS457 には走り始める前から扱いやすそうな雰囲気があり、それだけで心の余裕が生まれました。
RC 補足すると、スタンダードでもシート高は 800mmと低めですが、今回の車両にはノーマル比20mmダウンとなるコンフォートローシートが装着されていました。こちらは純正アクセサリーのひとつで、今年 2月末までにアプリリア正規販売店でRS457を成約すると、なんとパッセンジャーシートカバーとともにプレゼントされます。
中野 だから余計に地面が近く感じられたんですね。でも、それに対するネガティブな印象はなかったし、アルミ製フレームの採用も効いているのか、コーナリングには十分な信頼感もありました。
筑波1000は1〜2コーナーが高速で、特に2コーナーはGも掛かり、速度をのせていきたいけど曲がらなければいけないという難しい区間。だからこそマシンの差が出やすいんです。フロントが逃げるとか、接地感が抜けちゃうとか、なんとなく車体が華奢な感じが伝わってくるなんて車種も……。しかし、そこでも RS457 に嫌なフィーリングは皆無で、気持ちよく走れました。
平嶋 私は、コーナーの進入から一次旋回にかけてスパッと曲がってくれるのが気に入りました。中野さんに以前教わった、低速コーナーで鋭く向きを変えるV字ラインのコーナリングを実現しやすく、走っていて「今、イケてたよね!」と気持ちよさを感じる瞬間が多かったです。

中野 車体は軽く、だからこそ寝かし込みや切り返しも軽快。このクラスなら当然なんて言われちゃうかもしれませんが、でもコレは、楽しく乗るには重要なポイントですよね。
平嶋 低速コーナーの中間でダラダラとアウトにはらむなんてことはまずなく、ミスするとしたら、インに寄るのがちょっと早すぎるパターン。それくらい、私でもスパッと旋回できます。高速コーナーでもよく曲がる感触は同じで、徐々にペースが上がっていることに気づいたのですが、だからこその段階で、調子に乗りすぎて転ばないよう、一度ピットに戻りました。
中野 前後サスペンションの感じはどうでした? 僕は最初に触れたように、想像していたよりも柔らかすぎず、でもだからといってハードということでもなく、落ち着きがあるというイメージ。とくにリアは好印象でした。前後ともに無段階のプリロードアジャスターを装備していますが、スタンダードセットでとりあえず不満はありませんでした。


平嶋 中野さんは他のエントリースポーツモデルと比較した印象だと思うんですが、私の場合はもっと過激なスーパースポーツを事前に思い描いていたので、逆によく動いてくれると感じました。まぁ、だからこそ私でも最初からいいペースで走れたし、大きなミスなくアベレージペースで楽しめたのかと……。
中野 全体的なバランスは本当に好印象ですよね。純正装着タイヤは、初めて聞く TVS ユーログリップというインドメーカー製ですが、路面温度がかなり低めの状況でもそれなりのグリップや接地感もあるし、旋回中などに変な挙動が発生することもなく、タイヤも含めて車体はかなりまとまっていますね。
乗りこなす楽しさをムリせずとも味わえる
平嶋 車体だけでなくエンジンも、扱いやすいけど250ccほどは遅くない、ちょうどいい感じですよね?私は最初にエコモードで走ったのですが、さすがにサーキットだと少し物足りなく、すぐスポーツモードに切り替えました。
でも最後にもう一度エコモードで乗ってみて、公道ならこれもアリなのか……と。より気楽に乗れて、ツーリングにはちょうどいいかもしれません。

中野 僕がまず注目したのは排気音。走行中のサウンドが心地よく、鼓動感もあります。これ、絶対にV4を意識したサウンドチューニングがされていると思うんです。
平嶋 たしかに、中野さんがコースを激走しているときも、「2気筒なのに4気筒のRSV4みたいな排気音でカッコいい!」と、ピットレーンで見てました。
中野 性能的には457ccという排気量設定のおかげで十分な中回転トルクがあり、250ccクラス、あるいはそこから少し排気量を増やしたバイクとは完全にクラスが異なる力強さ。とはいえレブリミットまで引っ張るよりも、少しだけ早めにシフトアップしたほうが、エンジンのおいしいところを使えて気持ちよく操れる感じでした。
平嶋 でも中野さん、けっこう上までギンギンに回しているときもありましたよね!?
中野 やっぱりサーキットだし、いろいろ試してみないとね。その結果、少し早めのシフトアップというところに落ち着きましたが、一方で上まで引っ張ったときの長所は、レブリミッターがパツンといきなりカットするようなタイプではないところ。緩やかに回転上昇は止まるけど、急激な失速感はないので、いきなりレブリミットに達して驚くこともありません。限界まで使い切れてしまうクラスだからこそ、この特性はとても素晴らしいと思います。

平嶋 これでクイックシフターが装着されていたら完璧ですよね……。
中野 さっきカタログを見ていたら、ちゃんとオプションにありましたよ。それ以外にも、純正アクセサリーはけっこう充実しています。ちなみに、サーキットを攻め込んだときにRS457で唯一物足りないと感じたのは、フロントブレーキの制動力。もっともハードなブレーキングが求められる3コーナー進入だけは、自分が思っているよりも少しだけ早めにブレーキングを開始する必要がありました。
でもこれも、純正アクセサリーにある公道使用可能なレーシングブレーキパッドに換装するだけで、改善の可能性はありそう。純正アクセサリーを使って自分好みに仕上げるのもおもしろそうです。
平嶋 その中のローシートとパッセンジャーシートカバーは、2月中の成約ならもらえちゃいますしね!
中野 ローシートは不要と感じる体格の人も多いと思うけど、これを装着することで地面が近くなって、膝を擦りやすくなります。厳密には、着座位置が下がることで旋回性に対するデメリットも多少はあるはずですが、エントリースポーツという役割で考えたら、余裕のあるバンク角なのに攻めている雰囲気を味わえるのは、悪くないことだと思います。
先行予約でローシートをゲット!
現在全国のアプリリア正規販売店でRS457を成約すると、コンフォートローシート(ノーマル比20mmダウン)とパッセンジャーシートカバーがもらえるキャンペーンが行われている。期間は2025年2月28日まで

平嶋 私も、いつもほど周回を重ねないうちに膝と地面が近くなって、だからこそ最初から楽しめました。先行予約キャンペーン中なら無料でゲットできるし、好みに合わなければスタンダードに戻せばいいだけだから、本当にお得だと思います。
中野 そもそも、この性能で85万8000円というだけでコスパは最高。フレームはアルミ製だし、メーターはカラーだし、ライディングモードも搭載されていますしね。
平嶋 しかもカッコいいんですよね。アプリリアのカラーリングやデカールは、奇抜で斬新なのに嫌味がないデザインが多く、以前から大好きだったのですが、それが今回のRS457にも感じられて、さすがだなと思います。400ccを少しだけ超えているために大型二輪免許が必要で、「それなら、もっと上のクラスを……」という気持ちも理解できなくはないけど、最初に乗るスーパースポーツとして最適ではないでしょうか?

中野 排気量設定こそ、EUとは免許制度が異なる日本にそぐわない部分があるとはいえ、走行性能や車格は日本にもピッタリだと思います。コースでストップ&ゴーをしてみたり、パドック周辺をゆっくり走ってみたりして、エンジンが生む適度なトルクや鼓動感、アシスト機能付きスリッパークラッチがもたらす軽いレバー操作荷重やスムーズなシフトダウン、キツすぎない前傾姿勢など、サーキットだけでなくストリートでも楽しめる要素がたっぷり詰まっていると感じました。
平嶋 少なくともローシートなら私の身長でもハンドルが低すぎる感じはないし、もちろん足も届くので、ムリなくツーリングできそうです。スーパースポーツのカタチが大好きというバイク女子は多いんですが、RS457はマウントを取られるような車格やルックスではなく、でも乗りやすいので本当にオススメ。ぜひこのバイクで、サーキット走行にも挑戦してもらいたいです!
中野 男女問わずスポーツライディングのエントリーモデルとして本当にちょうどいいバイクですね。加えてRS457は、ベテランが乗っても十分に楽しめます。速くはないけど車体がそれなりにしっかりしているので、ついハードに追い込みたくなるし、仮にそうなったとしても速度域は低いので、心に余裕を持ちながら楽しめます。リッタークラスで走ることに疲れちゃった人にもオススメですよ!
APRILIA RS 457
インド生産のライトウエイトスポーツで、日本には今年から導入。MotoGP マシンを思わせるアグレッシブなデザインも特徴だ。
電子制御スロットルを採用し、ライディングモードは3タイプ、トラコンは3段階+オフに調整できる。









エンジン | 水冷4ストローク直列2 気筒DOHC4 バルブ |
総排気量 | 457cc |
ボア×ストローク | 69.0×61.1mm |
圧縮比 | 10.5:1 |
最高出力 | 47.6hp/9400rpm |
最大トルク | 43.5Nm/6700rpm |
変速機 | 6段リターン |
クラッチ | 湿式多板(アシスト/スリッパ―システム付) |
フレーム | アルミニウム製ツインスパー |
キャスター/トレール | 未発表 |
サスペンションF | φ41mmテレスコピック倒立フォーク(プリロード調整式) |
R | モノショック(プリロード調整式 |
ブレーキF | φ320mmシングルディスク+ByBre製4ピストンキャリパー |
R | φ220mmシングルディスク+ByBre製1ピストンキャリパー |
タイヤサイズF | 110/70ZR17 |
R | 150/60ZR17 |
全長×全幅×全高 | 1982.5×760×1161.5mm |
ホイールベース | 未発表 |
シート高 | 800mm |
車両重量 | 175kg |
燃料タンク容量 | 13L |
価格 | 85万8000円 |