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原田哲也&中野真矢も驚愕の”野獣” MV AGUSTA BRUTALE 1000 RS

イタリア語で、獣のような猛々しさを意味する“BRUTALE”。その名に違わぬ、パワー溢れるエンジンと、秀麗なエクステリアを纏い、スーパースポーツをも凌駕するパフォーマンスを放つのがこのRSだ。牙を剥き出しにする猛獣を、原田哲也、中野真矢はどう手懐けるのだろうか。

スーパーパワーを堪能する、という“大人の嗜み”――原田哲也

208hpはダテじゃない。正直言って、試乗の舞台となった筑波サーキット・コース1000では本領を発揮させられなかった。このモンスターマシンの本性を暴くなら、鈴鹿サーキットやツインリンクもてぎのような国際サーキットに持ち込む必要がありそうだ。

F4譲りのエンジンは、凄まじいほどのパワーを叩き出しながら、素晴らしく美しい音色を奏でる。かなり熟成されたとはいえ、国産4気筒に比べると剥き出し感があって、いろいろな意味でアグレッシブだ。「乗れるものなら乗ってみな」と挑みかかられているかのようで、ライダーとしてのチャレンジングスピリッツがかき立てられる。

ネイキッドのアップライトなポジションなので、フロントが振られそうなスリリングさもある。実際は剛性がしっかり出されているし、電子制御もかなり効果的なので怖い思いをすることはない。だが、気を抜くわけにもいかない。ネイキッドとしては限界に近いパワーではないだろうか。 

コース的に手に余る感じはあるものの、これだけのハイパワーエンジンを搭載していながら、ハンドリングを違和感なくまとめているあたりにも驚かされる。フレーム剛性が適正で、安心感の中で刺激を楽しむことができる。

ただしこの刺激、公道で味わうにはハイポテンシャルすぎるかもしれない。僕としてはネイキッドを公道で走らせるならのんびりとツーリングしたいのだが、208hpエンジンはそれを許さないだろう。

意識せずにスロットルを開けてしまうと、瞬く間にとんでもない速度域に連れて行かれてしまう。公道ではかなりの自制心が求められる。


それにしてもカッコいい。奇抜なようでいて、全体的なまとまりがよく、ディテールまで手抜き感がまったくない。こだわりぬいたデザインは、さすがイタリアンメーカーの仕事だ。

フルカウルのF4は曲面で構成されたカウルの美しさを重視し、ブルターレは剥き出しのメカニカルな迫力を重視している。カラーリングも抑えが利いていてハイセンスだ。

公道では持て余すほどのパワーと、迫力のデザイン。置いてあるだけで人目を惹きつける存在感。これは四輪で言うところのスーパーカーだ。しかも、スーパーカーの中でもランボルギーニやフェラーリといったイタリアントップブランドの香りを感じる。やはりラテンのセンスには敵わない。

バイクの場合は、四輪以上に走りの機能がしっかりと作り込まれていないと、走れたものではない。だがブルターレ1000RSは、先述したように走りのまとまりも良好だ。見た目だけではなく、コケ脅しだけのパワーでもなく、走る・曲がる・止まるというバイクとしての総合性能の高さをキッチリと維持している。 大人の嗜みとして、ブルターレの持ち味をじっくりと堪能する余裕があるライダーにお勧めしたい。

洗練、個性、官能、挑戦。すべては快楽のために――中野真矢

おしゃれに敏感なライダーが選ぶバイク、というイメージがあるブルターレは、僕にとって憧れのネイキッドだ。実際に以前、3気筒のブルターレ800を所有していたことがあるが、満足度は高かった。

しかも最近、MVアグスタはどのバイクも洗練度を増している。4気筒も3気筒も熟成され、扱いやすさを高めているのだ。最新のブルターレ1000RSはどんな仕上がりか、ワクワクしながら走り出した。

やはり最新のMVアグスタだけあって、208hpという凄まじいスペックながらパワー特性は良好だ。アグレッシブというよりはマイルドと言いたくなるほどで、かつての荒々しさはだいぶ抑えられている。

最近のバイクは電子制御の装備は当たり前で、制御をいかに感じさせずに自然なフィーリングを味わわせてくれるかがポイントになっている。


その点、ブルターレ1000RSは不自然さを感じさせない。分からない程度のほどよい制御で、気持ちよくスロットルを開けていくことができる。

従来の4気筒はメカっぽさを存分にアピールしていて、フィーリングも粗削りだった。しかし最新モデルではかなり洗練されている。工業製品として正しい進化の方向であることは間違いないが、いちバイク乗りとして個性が薄れたような気がして少し寂しさもある。

ただし、特徴的なマフラーから絞り出されるエキゾーストノートは、相変わらずたまらない。セクシー、と言うと理解してもらえないかもしれないが、官能的な響きはMVアグスタならではのものだ。エンジンの完成度を高めながらも、エキゾーストノートというアイデンティティは譲らないという姿勢がうかがえる。

譲らない個性、という点では、なんといってもデザインだろう。従来モデルに比べるとこちらも洗練されているが、ひと目見た瞬間に「おっ、ブルターレだ」と分かるだけの「らしさ」はしっかりと残されている。

先日試乗したスーパーヴェローチェはシンプルな造形だったが、ブルターレ1000RSは真逆。隅々まで凝っており、個性と迫力をダイレクトに主張している。なおかつ下品にならず美しくまとめ上げる力量は、簡単にマネできるものじゃない。 
ポジションはネイキッドの割にリアが高く、フロントに荷重がかかりやすい設定。スーパースポーツほどではないが、スーパーネイキッドと呼びたくなるほど運動性能を重視していることが分かる。

前傾がキツめだから体が前に、視線は下に行きがち。腹筋背筋をしっかり使ってライディングすることが求められる。官能的な音を奏で、個性的なデザインで魅了しながら、本質はストイックなアスリート。この多面性もブルターレRSの魅力だ。

いかに洗練され、電子制御でしつけられたとはいえ、そこは208hp。これぐらいの身構え、心構えを求めてくれてちょうどいい。「どう手なずけようか」と思わせてくれる、濃いラテンの血が流れるバイクだ。

ラジアルバルブなど、F1から転用した技術を熟成した4気筒は、チタンコンロッド、DLCコートバルブなどで抵抗を低減。吸気系統の新設計などで中低速トルクを高めつつ、208hpを発生
Fフォークはマルゾッキ製、ブレーキキャリパーはブレンボ製で、コーナリングABSを採用
リアショックはザックス製のプログレッシブモノショック
200km/h以上ではっきり効果を感じられるというウイングレットや、ミニマルなテールカウルなど、独特なエクステリアによりシャープなシルエットを形成
メーターには視認性に優れる5.5インチTFTカラーディスプレイを採用。スマートフォンをBluetoothで接続でき、車両の各種セッティングを簡単にカスタマイズできる
メーターステーはなんとアルミ削り出し。細部の造形にも抜かりがないのがMV AGUSTAらしい
プロペラのような曲線基調のデザインが目を引くホイールはアルミ鋳造製。軽量なのでハンドリングの向上にも大きく影響する

SPECIFICATIONS
エンジン:水冷4ストローク直列4 気筒DOHC 4 バルブ
総排気量:998cc
ボア×ストローク:79.0×50.9mm
圧縮比:13.4:1
最高出力 :208hp/13000rpm
最大トルク:11.9kgf・m/11000rpm
変速機:6 速
クラッチ:湿式多板クラッチ
フレーム:スチールパイプ トレリスフレーム
サスペンション:F=マルゾッキ製Φ50mm倒立フォーク
R=ザックス製プログレッシブモノショック
ブレーキ:F=ブレンボ製4ピストンラジアルマウントキャリパー+φ320mmダブルディスク
R=ブレンボ製2ピストンキャリパー+φ220mmシングルディスク
タイヤサイズ:F=120/70ZR17
R=200/55ZR17
全長×全幅:2080×805mm
ホイールベース:1415mm
シート高:845mm
車両重量:186kg(乾燥)
燃料タンク容量:16ℓ
カラー&価格:357万5000円

※本記事はRIDERS CLUB 2022年2月号(No.574)に掲載された内容の誤りを修正し、加筆した物です。

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