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【検証-ブレーキ】サスペンションのキホン 自分仕様の乗りやすいバイクをつくる!

愛車のサスペンションに調整機構があることは知っていても「下手にいじるとバランスを崩してしまうだけ……」と不安に思ってまったく触ったことがないという人も多いはず しかし、アジャスターをわずかに回転させるだけで、バイクが思い通りに動くようになるとしたら……それにチャレンジしない手はない。今回は、そんなブレーキに関するポイントのひとつ、「減衰力の強さと曲がりやすさ」を検証してみる。

減衰力の強さは曲がりやすさにどう影響する!?
硬いor柔らかい……サスはどちらが曲がりやすい!?

サスペンションは硬ければ硬いほどスポーティな走りができる なんとなくそんなイメージが刷り込まれているかもしれないが果たしてそれは本当なのだろうか?

サスペンションのセッティング企画を進めていく時、もっともよく耳にする声が「どうせ違いなんて分からない」というものだ。 セッティングはプロライダーがスピードを競うために行うもの。そんな風にも思われがちだが、そんなことはない。スピードを突き詰めるという作業は、結局のところ「乗りやすさ」や「扱いやすさ」を追求していくこととイコールであり、安全性や快適性にもつながるため試さない手はない。

とはいえ、なにを試して、どんな違いを感じればいいのかもまた分からないはずだ。そんな時は振り幅を広くしてみるといい。その一例として減衰力(プリロードは標準のまま)の最強と最弱のフィーリングを体感してみよう。方法は簡単だ。前項の通り、伸び側と圧縮側の減衰力をすべて締め込めば最強、逆に緩めれば最弱になるので、それぞれの状態で走ってみるというものだ。

減衰力は「強い弱い」、「硬い柔らかい」、「遅い早い」とさまざまな言葉で表現されるが、荷重を掛けてもサスペンションがジワッとしか動きたがらない状態が「強い・硬い・遅い」、逆にスコスコと前後に姿勢が変化しやすい状態が「弱い・柔らかい・早い」である。

今回、その違いがより明確だったのがMT‐ 09SPだった。とりわけ最強はかなり手強く、静的な状態で車体を揺さぶったくらいではほとんどストロークしない。走らせても重さがつきまとったままでタイヤのグリップ感も終始希薄だった。 ところが最弱にすると一転。軽快感が大きく向上し、コーナーではクルリと旋回。スロットルも開けやすくなり、まったく別モノのハンドリングをみせてくれたのだ。

もちろん程度こそあれ、動くべきところはきちんと動かす。それによって一体感が高まり、安心して操作できることが分かった。旋回力をより積極的に引き出せるのが柔らかいサスペンションである。

ライテクにも役立つQSTARZを使ってテスト

今回の検証を数値化&視覚化してくれたのはアクティブが取り扱うキュースターズのLT-Q6000Sだ。GPS機能により、タイムはもちろん走行ラインや加減速Gなど、さまざまなデータ収集が可能。価格:6万1560円
MT-09 SP
GSX-R1000R

軽快感と自由度の高さが「最弱」のメリット!

【進入】 最強 向き変えから重く感じる/最弱 車体姿勢の変化を感じやすい

最強のデメリットを体感しやすいのが進入、つまりブレーキングだ。車体のピッチングが分かりづらく、タイヤが路面に押しつけられている感覚も希薄なため、ターンインのタイミングを逃しやすい他、高い位置から一気に倒れ込んでいくようなイメージで不安定な挙動を誘発しやすい。

写真左:最強 写真右:最弱
最強はゆっくりとストロークするため、ターンインするポイントに来てもステアリングの位置が高く、コーナーへ向かってバンクさせる操作が遅れがち

クリッピングポイント

最強 徐々にアウトにはらんでいく/最弱 走行ラインの自由度が高い

最弱 
しっかりとインに寄ることができる最弱に対し、最強はここからさらにアウトにはらむため、スロットルが開けられない状態が長く続く

最強
最強は車体の動きが緩慢で、乗り手の入力に対してレスポンスが遅れがちだ。そのため、狙ったラインを走っているつもりでもアウトにはらみやすく、接地感も希薄。サスペンションに荷重を掛けられない時間が長くなり、その間にさらにはらんでいく、という悪循環に陥りやすい

立ち上がり

最強 
スロットルONが遅れる / 最弱 トラクションを掛けやすい
最強の場合はタイヤのグリップ感が乏しく、旋回力を引き出しづらいこともあって、スロットルをなかなか開けられないまま。一方、最弱の時は向き変えが早く終わっているためスロットルをしっかり全開。トラクションをリヤタイヤにフルに掛けながら立ち上がっていくことが可能だ

最強(赤)と最弱(黒)の時の走行軌跡イメージ。最強はブレーキング時からリズムが掴みづらく、レスポンスの遅れがコーナー立ち上がりまで影響する。波線が減速区間。最強はなかなかスロットルを開けられないのが分かる

安心感が速さを生む 最弱のタイムがそれを証明している

感覚的には明らかに最弱の方が乗りやすく、走行ラインもコンパクトだった。ならばそれは速さに直結しているのかどうかを検証するためにラップタイムを計測した。結果はどちらの車両でも最弱が最強を上回り、ワーストタイムとの差も少なかった。集中力を要する最強に対し、最弱は速いタイムを安定して刻み続けることができた。

柔らかい方が自由に動けて不安が少ない 編集部員・中澤

筑波コース1000 を使った今回の最強・最弱の比較走行で、僕は公道と同じようなスピード域でその違いを体感してみた。 特に印象に残ったのは、最弱で走行したときのラインの自由度の高さ。どんなコーナーでも車体の向きを変えやすく、速度域が低い中でもライディングが楽しめた。一方の最強は、寝かしにくく開けにくい……すべてのコーナーで大回りしてしまうといったところ。 もし先の分からない公道だったら、どちら側の設定を選ぶかは言うまでもない。

減衰力最強で、少しペースを上げて走ったときのもの。ラインがどんどん膨らんでいく……

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