【Historic Bikes/HONDA CBR250RR】250ccモデルの優等生を中野真矢がインプレッション
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
レーサーレプリカ全盛時代、多くのライダーが250ccでバイクの魅力に目覚め、やがてヨンヒャク、そしてナナハンへとステップアップしていったが、昨今では手軽に楽しめる250ccが「開けられるから楽しい、楽しいからどんどん上手くなる」ということで再び人気となっている。今回はそんな250ccクラスのヒットモデル、ホンダCBR250RRの実力をチェックしてみた。
Tester 中野真矢 Shinya Nakano
TZR250で鈴鹿4耐を制し(’94年 )、’98年に全日本GP250タイトルを獲得。 WGP250ではランキング2位(’00年 )まで上り詰めた元MotoGPライダー
サーキットを主戦場とし、ライダーを育てるマシン HONDA CBR250RR
20年最大のヒットモデルのひとつであるZX25Rの武器が超高回転域のパワーだとすれば、ライバルCBR250RR(以下CBR)の強みは幅広い回転域で発揮される力強いトルクだ。それはまさに対称的と言ってもいい。
例えば4000rpm前後の回転域だと、ZX25Rの加速 力は頼りない限りだが、CBRはスロットルに対して間髪入れずにエン ジンが反応。少々ギアが外れていて もグングン車速が増していく。 こういうワイドなトルクバンドは、2気筒エンジンに共通するメリットながら、その中でもCBRは突出している。それがいつでもどこでも引き出せるトラクションにつながり、ライバルを圧倒する。
特に今回の筑波コース1000のようなステージでは、抜群に相性がいい。回転が落ち込むタイトなヘアピンも難なく立ち上がることができ、コーナーからの脱出スピードは抜きん出たもの。実際それが明確にタイムアタックの結果として表れることになった。
エンジンは力強く、ブレーキング 時のスタビリティにも優れ、コーナリングもシャープに仕立てられているのがCBRというバイクである。 その意味で、スポーツ性に的を絞った割り切りを感じさせるものの、かといってピーキーさはない。むしろスロットルは開けやすく、それがサーキットにおける速さのみならず、ストリートでの扱いやすさももたらしている。
ホンダはどんなステージもソツなくこなす万能なバイク作りを得意とするが、CBRの開発過程ではそういう意図はなかったのでないかと思う。レースを想定し、思い切ってエンジンのスペックを高めたところ、相乗効果として優れた過渡特性が得られた。そんな雰囲気が端々に見て取れるのだ。
とはいえ、単に懐が深いわけではなく、コーナリングを突き詰めていくとシビアさも垣間見えてくる。ブレーキをギリギリまで我慢してから車体をパタンと寝かせ、一気に旋回力を引き出す。そういう入力の先に本当のポテンシャルがあるからだ。
例えばヤマハYZF-R25と比較するとラインの自由度は限られるため、進入の手前からコーナリングのプランを練り、それをきちんと遂行するスキルが求められる。 言い方を変えると、考えながらスキルを磨けるよき素材でもあり、若いライダーだけでなく、サーキット走行を楽しむベテランの向上心にも応えてくれる。
それをフォローしてくれるのが、スポーツ/スポーツ+/コンフォートの3パターンがあるライディングモードだ。これによってCBRの強 みでもある過渡特性が変化。サーキ ットも含め、基本的にスポーツがベ ースになるのではないだろうか。オプションのシフターを装着するだけで、存分にスポーツマインドを満たしてくれるモデルだ。
細身でエッジの効いたスタイルがスピード感を演出。フレームやホイール、カウルに施された塗装のクオリティは高く、CBRの名にふさわしい上質さが与えられている
HONDA CBR250RR DETAILS
右:プロリンクサスペンションをアルミスイングアームが支持、左:フロントサスペンションにはφ37mmの倒立フォークが採用される