待望の復活! 油冷エンジンの本格スポーツ SUZUKI GIXXER SF 250
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
開けられるから楽しい、楽しいからどんどん上手くなる、ライテクのすべては250ccにアリ? というテーマで国産250ccスポーツの実力に迫ってきた特別企画。カワサキがこのクラスに4気筒エンジンを復活させたことで、さらに250ccモデル注目がされている。そんな250cc特集の最後にお届けするのがSUZUKI GIXXER SF 250。復活した油冷エンジンの実力をチェックだ。
Tester 伊丹孝裕 Takahiro Itam
二輪専門誌の編集長 を務めた後、フリー ランスのライターへ。 マン島TTやパイク スピーク、鈴鹿8耐 といったレースでは ライダーとしても活 動してきた
ツウ好みのライトウェイトスポーツシングル SUZUKI GIXXER SF 250
エンジンの冷却方式も気筒数も他とは異なり、独自の道を歩むモデルが、スズキのジクサーSF250(以下、ジクサー)である。スチールフレームに搭載されているのは、油冷の単気筒だ。そう聞いてグース250/350と思い出した人は確実にアラフィフだが、これはれっきとした新開発ユニットであり、ブランニューモデルとして20年4月に発売が始まった。
ご覧の通り、見た目はかなりスタイリッシュで上質感が漂う。今回揃えたライバル各車がスーパースポーツ然としたカラーリングとエアロフォルムを纏っているのに対し、ジクサーのそれはスッキリとしている。 もっとも、ジクサーにもモトGPマシンをイメージしたカラーバリエ ーションがあるものの、そのシルエットはシンプルにまとめられているため、大人が乗ってもミスマッチな感じがしない。
シートにまたがると視界がクリアだ。スクリーンが大げさにそびえ立っていないことが主な要因で、全体のフォルムが引き締まって見えるところが好印象だ。切削加工が施された繊細なホイール、唯一のスイングアームマウントフェンダー、ブロンズカラーに塗装されたエンジンなど、凝った意匠が散りばめられ、質感の高さを後押ししている。
エンジンは(例えばKTMの250デュークのように)快活過ぎず、かといってGSX250Rほど穏やか過ぎないちょうどいいところに落とし込んである。右手の操作に対してコロコロと回り、リニアそのものだ。6000~7000rpmあたりをキープして走らせると、実に心地いい、シングルらしい鼓動感に身体が包み込まれていく。
単気筒ゆえ、トルクフルだがトルクバンド自体は広くない。右手を大きく捻ると、すぐにレブリミット(10000rpmあたりで作動)に当たるのだが、そうならないようにタコメーターの動きに気を配りつつ小まめにシフトチェンジを繰り返すのが楽しい。バイクの声に耳を傾け、自分でトラクションを引き出している手の内感が強く感じられるのだ。
のんびり流したい時は操作をサボッてトルクに任せ、スポーティさを味わいたい時はクラッチレバーとシフトペダルをフル稼働。その間を自由に行き来できるのが、ジクサーというスポーツシングルだ。 アベレージスピードが上がるとすぐにバンク角が足りなくなるのだが、見方を変えるとグリップ限界のはるか手前(意外と言ってはなんだがダンロップのラジアルタイヤが標準だ)でお尻を大きくズラしたり、上体をインに引き込んだりと、あの手この手を試せるところがいい。
しかも車重が158㎏と軽量のため、少々ラフに扱ってもリカバーが 容易だ。前後のサスペンションに特筆すべき性能はないものの、その軽さゆえ挙動はそうそう乱れない。 唯一不足を感じるのがフロントのブレーキキャリパーとディスクで、制動力は引き上げたいが、車体価格がリーズナブルなぶん、ステップとともにカスタマイズするのもいいだろう。ライディングのイマジネーションを広げてくれるバイクとして高く評価したい。
他のモデルとは一線を画す大人っぽさとシャープさが融合したデザイン。唯一スイングア ームマウントのフェンダーが採用されている
Riding Position
SUZUKI GIXXER SF 250 DETAILS
左:フロントフォークはφ41mmの正立。ホイールはエンケイの10本スポークを採用し、切削加工によって高い質感を得ている、右:リアサスペンションには7段階のプリロード調整が備わる