【Historic Bikes/~bimota・BB3T CR~】「bimota(ビモータ) BB3T CR」~究極のさらにその先へ~【R/C インプレッション archives】
※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。
現在、ビモータから送り出されるモデルの多くは頭文字に「D」に文字を持つ。それはDUCATIのLツインエンジンを搭載していることを意味するが、例外にして孤高の存在がここで取り上げるBB3シリーズである。 BB3はBMWのエンジンが与えられた3番目のモデルだ。
95年に登場したBB1、12年に披露されたコンセプトモデルBB2に次ぐカタチで、13年に発表。S1000RRの4気筒エンジンをオリジナルフレームに懸架した生粋のスーパースポーツとして送り出されることになった。 このBB3がその他シリーズ、つまりDBやテージと異なるのは、かつてのビモータを彷彿とさせるように積極的にレースに挑んだことだ。
発売が開始された14年には、スーパーバイク世界選手権のEVOクラスに2台のマシンを送り込み、改造範囲が厳しく制限されるクラスにもかわらず、時にファクトリーマシンを上回るリザルトを残して活躍したのである。 翌15年には世界屈指の過酷さで知られるハイスピード公道レース、マン島TTにも参戦。この時、ファステストタイムまであと0.1マイル/hに迫るスピードを記録して存在感を見せつけ、話題を呼んだ。
ビモータはそのノウハウを出し惜しみすることなく、「BB3トロフェオ(Trofeo)」という名のロードゴーイングレーサーをわずかな台数のみ制作。本物を求めるエンスージアストの元に届けられたわけだが、ここで紹介する「BB3T CR」には、それをさらに上回るスペックが盛り込まれている。
『ライダースクラブ』読者なら、末尾のCRには馴染みがあることだろう。ビモータとの間に絶大な信頼関係を築いているモトコルセのコンプリートモデルに付けられるネーミングであり、実際このBB3もスペシャルだ。
アルミ削り出しなど市販車とは思えない車体構成
ベースになったBB3トロフェオに対し、エンジンと足周りのポテンシャルが大幅に引き上げられている。ピストンはピスタルレーシングの鍛造ハイコプレションタイプに換装。もちろんバランス取りやポート研磨も実施した上ですべて組み直され、スロットルボディは48mmに広げられている。 足周りは誰もがまず、そのフロントに目が奪われるに違いない。オーリンズのFGR SBK倒立フォークもさることながら、そこにブレンボのレーシングラジアルマウントCNCモノブロックキャリパー・P4‐34/38を装備。しかもブレーキディスクにはSICOMのカーボンセラミック製が採用され、一見しただけで普通ではない独特の凄みを効かせている。
逆に一見しただけでは見過ごしそうになるが、ビモータの真髄が味わえるのがスイングアームだ。これはSTDのBB3とも共通するパーツで、驚くべきことにアルミのブロック材から削り出された塊を左右から溶接。しかも、その内側は剛性バランスを計りながらも徹底して肉抜きが施されるという、普通の工業製品ではあり得ないコストと手間が掛けられている。 そうした造形美はフレームとスイングアームをつなぐピボットプレートも同様で、機能とデザインが極めて高いレベルでバランス。決してそれがまやかしではないことは、既述の通り、トップクラスのカテゴリーで残してきたリザルトがなによりの証明に他ならない。
オーナーの寛大なはからいによって、納車のその日に乗せて頂くことができたが、「マチ」や「タメ」をまったく感じさせないソリッドな動きは不特定多数のための量産車では得られないものだ。1対1で対話することに歓びを見出したいのなら、これほどふさわしいマシンはない。
bimota(ビモータ) BB3T CR ディテール
オーナー:氏平直行さん
世界に数台、日本には1台しかないBB3のマン島レプリカを入手