中野真矢直伝! ライディグフォーム意識改革
ライディングフォームと言えば、多くの人がハングオフのことを思い浮かべるだろうもちろんそれは間違いではないが、正しいハングオフは、正しくまっすぐ走っていればこそまずはストレートにこそ、大切な基本があると中野真矢さんは語るそれは一体どういう意味なのか? まずはそれを紐解いていこう。
ストレートは休むところではありません!
企画としてライディグフォームのことを取り上げるとき、それはほとんどコーナリングフォームのノウハウとイコールだ。いつお尻をズラすのか、その時なにに注意すべきなのか、いかに旋回力を引き出すのか……といったアレコレがそれに当たり、もっとざっくばらんに書くなら「どうしたら格好よくヒザを擦れるのか」というテーマに集約されていく。
そこにはスポーツライディングの醍醐味が詰まっていて、バイクとの一体感を語る上で欠かせないテーマであることは間違いない。
本誌としても、世界最高峰クラスを知るライダーにその一端を解説してもらおうと考えたのだが、元モトGPライダーの中野真矢さんは意外なことを語った。
それが「みなさん、いろいろと難しく考え過ぎだと思います。まずはきちんとまっすぐ走る。もっと分かりやすく言うと、〝ストレートはちゃんと伏せましょう〞ということです。これはいかに重心位置を意識するか、という意味を含んでいるのですが、それがわかればコーナーでは身体を横にズラすだけなんです。多くの人はその部分をおろそかにしているように思います」という言葉だった。
その実践ポイントを左にいくつか挙げてもらったが、いかがだろう?ストレートは気を抜く場所ではなく、コーナリングのための準備区間というイメージが必要なのだ。
ストレートが決まったら後はそれをズラすだけ
コーナリングフォームはストレートの延長線上にあるそのため、正しいストレートフォームを身につけることが最優先だ伏せたことがないというライダーは意外と多いのではないだろうか?
STEP1:ストレートで加速【ここでサボるとすべて台無し】
今まではなんとなく流していたストレートを本気で走る。その意識が大切だ。空気抵抗を軽減するために身体をスクリーンにもぐり込ませ、お尻を浮かすことで低い位置に頭をキープ。見よう見まねでいいので、まずここからやってみよう。お尻を上げて、ヒザ・ヒジ・足は閉じる、頭は可能な限り下げる。
STEP2:ブレーキング開始【脱力のことは忘れてOK】
ブレーキングでは浮かせたお尻をシート後端に降ろし、右コーナーの場合は左足の内モモで燃料タンクをホールド。減速Gで身体が前方へズレないようにしよう。よく言われる「脱力」はここでは無視。力は入っていて構わない。
STEP3:徐々にリーン【身体を横にズラしていく】
ブレーキのリリースと並行し、減速Gの弱まりを感じたら、身体をそのまま横方向へ移動。ここで腕の力を軽く抜くことで、自然にお尻の位置がシート後端から前方へ移っていく。ブレーキを緩めた分だけバンク角を増やすイメージだ。
STEP4:フルバンクに到達【遠心力を感じつつ自然に脱力】
ヒザが路面に接地した段階ではブレーキを完全にリリース。この時、進む方向に目線を向けることが大切なポイントだ。コーナリングG(=遠心力)が掛かっているため、脱力してもバイクと身体の一体感は失われないはず。
頭の中で常に三角形をイメージして走ってみよう
ストレートで伏せる。その真意は頭を低くし、重心を下げることにある。そのまま減速するとフロントに荷重が掛かり過ぎるため、一度頭を上げるが、コーナリングでは再び下げて安定性を確保。図のように三角形をイメージし、それを低く、小さくするのがスポーツライディングの基本となる。まずはストレートで試すことによって、その動きを身体に染み込ませよう。
ハングオフはヒザ擦りではなく、重心を下げるためのフォーム
身体の重心は腰付近(黄色点)にあるが、リーンウイズ(左)だとその移動量が少ない。しかし、ハングオフ(右)の体勢をとると重心位置が大幅に低下。これによって安定性が増し、同じコーナリングスピードならバンク角も少なくて済むのだ。ヒザ擦りは副産物的な要素に過ぎない。
スポーツライディングを楽しむためのワンポイントアドバイス
「ストレートは伏せる」だけでは、その次にどうすればいいか、わからないかもしれないここでは中野さんが実践している即効性の高いノウハウを教えてもらった。
あまり脱力に捉われないようにしよう
ライテク企画で必ず出てくるのが「脱力」や「リラックス」、「腕にゆとり」といったワードだ。ただし、これを意識し過ぎるあまり、フォームが崩れてしまっている人が意外と多い。特に減速時は踏ん張る必要があり、力を抜くのはそれが終わってからだ。
シートの前後長もフル活用しよう
フロントを軸に曲がりたければ前へ、リアのグリップを確保したければ後ろへ、と今のスポーツバイクは自在に動いてポテンシャルを発揮するディメンションになっている。ライダーは最も自由度が高く、重たいパーツでもあるため、積極的に活かそう。
ハンドルの握り方にも気を配ろう
特にコーナリング中のイン側グリップは少し斜めに握るようにしよう。まっすぐだと腕全体がツッパリ棒のようになり、自然な舵角を阻害。グリップの外側から包み込むようにすると上半身にスペースが生まれ、力の加減をコントロールしやすい。
ステップはツマ先入力がベター
なにか動作をする際、ベタ足よりもツマ先立ちの方が素早く動けることはイメージできるだろう。ライディングでもこれは同じで、旋回中のイン側ステップは写真のように踏むことで下半身が安定。ツマ先が路面に触れないためバンク角も確保できる。
ステップを踏みこんできっかけ作り
車体が倒れる時、一瞬その方向とは反対側にハンドルが切れる。いわゆる逆操舵と呼ばれる現象だが、これを意図して行う必要はない。僕の場合、右に曲がる時は左ステップを軽く踏み込み、フェイントをかけるようにして最初のきっかけを作っている。
アップハンドルこそ積極的に動こう
フォームの考え方はセパレートハンドルと同様ながら、その構造上、アップハンドルのネイキッドはフロントタイヤの抑えが効かず、荷重が少なくなりがちだ。そのため、より意識して身体を前後左右、上下にも動かすようにしよう。