ライテクQ&A【コーナリング編:②】|元モトGPライダーが一問一答!
読者の皆さんから寄せられたライディングの疑問に中野真矢さんと青木宣篤さんが答える! 世界のトップカテゴリーレースで戦ってきたお二人は一体どんな回答で我々を導いてくれるのか! 本稿ではコーナリング関する内容その②。コーナリングはスポーツライディングの醍醐味。それだけにベテランになっても悩みは尽きないし、ステップアップする度に新たな疑問も生まれてくる。ではプロライダーは、どんなことを意識して走っているのだろうか?
Q1:ライン取りってどうやって決める
A=Aoki:立ち上がりで大きく開けられるかどうか
速く走るためには、立ち上がりでできるだけ大きくスロットルを開けることがもっとも重要です。「立ち上がり重視のライン」を、コーナー出口から逆算して決めていきます。また、ギャップがない場所を通ることも大切。複合コーナーなら次のコーナーへのアプローチも意識します。
A=Nakano:バンクする時間は短く、タイトに曲がる
基本は今も昔もアウト-イン-アウトですが、現代のバイクとタイヤだと以前よりもタイトなラインになります。とくに1000ccクラスは深くバンクする時間を短くし、立ち上がりの加速を重視します。そのイメージがイラストの赤ラインなんですが、ボトムスピードは青より遅くなります。早く開けるために、遅いポイントを作るんです。ライパでもバンク時間が長くてコーナリング速度が速い人が多いですが、それはリスクが高いですよ。
Q2:フロントタイヤのグリップ感が感じられません!
A=Aoki:ハンドルを切ったときの抵抗感を体感しましょう
タイヤのコンディションが正常であることを前提として、走りを見直す必要もあります。ブレーキング時にグリップ感が得られないなら、大事なのはきちんとブレーキングができるようになること。制動力が足りないと荷重も不足し、グリップ感も薄くなります。
コーナリング中にグリップ感が得られない場合は、もう少し難しい話になります。私はコーチングする際、コンクリート路面でバイクに跨がってもらい、ハンドルを左右に切ります。次にアスファルト路面で同じことをします。
一般的にコンクリートは摩擦係数が低いのでハンドルが軽く切れ、アスファルトでは重くなります。この手応えの違いがグリップ感です。これを体感すると、ハンドルの操作量でどの程度グリップ感が得られるか分かります。どのシーンでもグリップ感を得るにはライダーの適切な操作が必要なのです。
A=Nakano:「怖い!」と感じたらそれは意外と正しいんです
確かにフロントのグリップは感じにくいです。ブレーキをジワッとかければ体感しやすいですが、コーナリング中は希薄。これは二輪車の宿命で、私たちプロも非常に気を遣います。でも実際のところ、MotoGPマシンはコーナリング中にタイヤが変形するくらいグリップしています。基本的には分かりにくいものですが、「滑りそうで怖い」と感じたら、実はその感覚は案外正確。今の自分の技術では限界に近いと考えましょう。
Q3:ヘアピンをクルッと気持ちよく曲がりたい!
A=Aoki:まずは怖くない速度まで十分に減速しましょう!
ヘアピンは大きく減速することかあら怖心が強く働くポイントです。だから十分にブレーキできないまま、小ささなコーナーに対してオーバースピードで入りがち。これが気持ちよく曲がれない原因です。タイトなRに合うよう、しっかり速度を落としましょう。また、速度が低い分、どうしてもフラッと倒れてしまうように感じます。あの感覚は慣れるしかありませんね……。
A=Nakano:速度を落として曲がるライン取りを意識
上でも紹介しているV字型のライン。これがヘアピンでも有効。従来よりも少しイン側から入り、V字の頂点ではしっかり速度を落としてすべての操作を終わらせれば、曲がることに集中できます。
Q4:オーバースピードで進入した時の対処法は?
A=Aoki:無理に曲がろうとせずブレーキ優先のラインで!
諦めましょう。というのは冗談(笑)。でも本当はオーバースピードにならないことが肝要です。私もレース以外ではオーバースピードで進入しません。ただ、レースでは少しでもタイムを縮めたいし、激しいバトルもあるので、オーバースピードはあり得ます。どうにかなりそうな範囲ならリアブレーキで調整します。どうにもならなさそうな場合は、フロントブレーキを強めにかけて全力で減速を優先し、大回りします。もともと狙っていたラインを走り続けようとすると、無理が生じて転倒するからです。
A=Nakano:サーキットは広いので大回りで減速に全集中!
ライパでファンライドを楽しむライダーを想定してお答えします。「危ないかも」と感じたら通常よりも大回りのラインで車体を立て、タイヤのグリップと相談しながらギリギリまでブレーキを長くかけて速度を落とします。さらに減速したいならシフトダウンも併用します。無理に通常のラインに戻ろうとしたり、ガツンとブレーキをかけるのは禁物! サーキットはコース幅が広いので、端まで使えば安全に減速できるものなんです。
Q5:下りコーナーでも安定して曲がるコツ
A=Aoki:怖くない速度まで減速するのが基本です
下りコーナーは本来フロントに荷重が乗りやすいので、安定感が高いはず。それでも怖いなら、おそらくスピード自体に恐怖心が働いているのでしょう。下りは想像以上に勝手にスピードが出るからです。しっかりとブレーキングし、怖くないスピードで曲がるようにしましょう。
A=Nakano:平地よりも後方に荷重するフォームに
下りはどうしてもフロントに負担が掛かるので、掛かり過ぎないよう早めのブレーキで調整したり、シートの後ろ側に座るなどしたら良いと思います。とにかく、コーナーに入るまでの準備が大事ですね。