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元MotoGPライダー中野真矢インプレッション|KAWASAKI Z900RS/CAFE

初代Z1から脈々と受け継がれてきた、カワサキ直4エンジンの鼓動。現代においても、そのフィーリングは他社とは一線を画す。さらに、Z1へのオマージュが存分に表れているこのスタイリング。カワサキの“ヘリテイジ”に対する敬意を、感じずにはいられない。

Zに受け継がれるカワサキらしさとは何か?

世のバイク好きを大いに惹きつけているZ900RS /カフェ。熱く語るファンが多く、話を聞いているだけでも楽しくなる。 

残念ながらなかなか乗る機会がなく、今回が「初Z」だ。フルカウル付きマシンでレースばかりしていたので、正直なところ「ニッポンの正統的ネイキッド」について僕などは何も知らないも同然だが、逆に先入観なく向き合うことができたと思う。 

走り出す前に車両を見渡すと、とにかくカッコいい。重厚な中にもモダンテイストが採り入れられており、決して古めかしい印象はない。

’22年モデルでは、Z1の“玉虫ブルー”を彷彿させるグラフィックを採用。横から見るとナローな印象のティアドロップタンクの流麗なラインは、Z1へのオマージュだ。

Z1と同様、直4と900ccクラスの排気量を採用。その存在を強調するためにバフ仕上げされたエキパイは、熱変色に強い中空二重管構造とし、美しい外観を維持する。

またがってクラッチをつなぎ、スタートした瞬間に、バランスのよさが伝わってきた。この感覚をお伝えするのは非常に難しいが、直進安定性、前後荷重、ポジションなどを総合的に感じているのだと思う。

少しでも違和感があるといきなり気になってしまうが、何も考えずに発進できたのはZ900RSの素性のよさを示している。見た目だけで購入する人も多いと聞くが、17年の登場以来、現在に至るまで高い人気が続いているのは、走りのよさも備わっているからだろう。でなければ猛スピードで情報が伝達するこのご時勢、高評価を維持できない。 

いざコースインしてからも、ストレスというものを感じなかった。エンジンフィーリング、ハンドリング、ポジションのすべてが自然で、クセがなく、バランスが取れている。上半身の力が抜けていくのが分かる。これは間違いなくいいバイクだ。 

周回を重ねるうちに、ちょっと本気になって攻め始めている自分に気付いた。ついにはリアタイヤが流れ出し、懸命に自分を抑えた。 

大柄さとは裏腹に、走るととてもコンパクトに感じるのだ。これは「走りが楽しいバイク」の典型。扱いやすい特性と、重心の集中などがそう思わせてくれる。 

ブレーキング時の重量感は否めないが、もともとサーキットを攻め立てるバイクではないし、自制すればいいだけ。それにしても運動性能の本気の作り込みには驚かされた。 

これはいかにも近年のカワサキらしい方向性だ。ニンジャZX-10Rに試乗した時も、同じ「根っこ」を感じた。ライダーフレンドリーであること、エンジンまわりの剛性感、そしてエンジンで走っていることを分かりやすくライダーに伝えてくる手応え……。カワサキの中で確固とした取り決めがあるかのように、ネイキッドのZ900RSも同じ流れを汲んでいる。多くのファンに愛される理由が分かった気がした。 

カフェはビキニカウルのデザインが絶妙。レトロ感と今っぽさがうまくバランスしている。ポジションの変化によって、見た目だけではなく走りも異なる。 

カフェの方がよりスポーティ。腰が高いので、Z900RSは1周目からヒザを擦れたが、カフェは数周かかった。それだけ運動性能の限界値が高い、ということ。きっちりとキャラクターまで変えてくる妥協のなさも、カワサキらしい。

よりスポーティな味付けがなされているCAFEの方が、限界点も高いと中野さんは言う。

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