青木宣篤流 アドバンスドライテク【MotoGPライダーになってみた!PART 4|ブレーキングで足を出す】
MotoGP2022シーズン。マレーシア公式テストでは1秒以内に18人が名を連ねた。彼らはいったい、どんな世界にいるのか。そしてどのようにマシンを操っているのか──。究極のサーキット走行を青木宣篤が詳報する。本稿ではブレーキング時の足出しについて解説する。
青木宣篤
「なってみた」どころか、言わずと知れたリアル元MotoGPライダー。現在も折に触れてスズキのMotoGPマシン、GSX-RRをテストで走らせている
効果は確実にあるが説明するのは難しい
足出し元祖のバレンティーノ・ロッシでさえ「データ上の差はないけど、なんとなく安心」と言っていたほどで、分からないことが多い。
自分の経験から言うと、リアから荷重を抜いて後輪を滑らせて向き変えに活用する、という効果がもっとも大きいと感じる。
ファビオ・クアルタラロはあまり足を出さないが、彼はホルヘ・ロレンソと同様、足を出さなくても荷重コントロールができるタイプ。ということは逆説的に、足出しは荷重コントロールの一環、と言えそうだ。
かなり説明が難しいフィーリングの世界だが、足を出す・出さないで違いがあることは間違いない。
滑らせないなら意味がない
簡単に「やってみる」ことができるテクニック。サーキットでのスポーツ走行レベルでも、人によっては何らかの効果を感じるかもしれない。
ただ、私がやってみた限りでは、あくまでも後輪をスライドさせることとセットという印象。それ以前の撮影用レベルの走りでは、あまり意味がないように思った。
プロフェッサー 辻井さんによる解説
Professor
辻井栄一郎
元ヤマハのエンジニア。大学客員教授経験もあり、ニックネームは「プロフェッサー」
重心に及ぼす影響は大きい
まさに「諸説ある」足出しですが、人の片足の重さは約10kgと言われ、重心にかなりの影響を及ぼすことは確かです。
バラスト(重し)をあちこちに動かすようなものなので、いろいろなことが起きてもおかしくありません。だからこそ諸説が生まれるのだと思います。MotoGPテクニックの中でも、かなり不思議な存在です。
ポイントとなるのは、重量物である足をどの位置に出すか、でしょう。足を真横または後方に出すと、体が起きて重心は後ろに行きます。減速Gに耐える効果が上がると思います。
一方、足を前方に出すと、青木さんの言うようにリアから荷重が抜けます。ハンドル操作もしやすくなるかもしません。