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MotoGP日本グランプリで見たトップオブトップ【ジャック・ミラー】

本当に、トピックスの多い日本GPだった。MotoGP日本GPが開催されるのは、じつに3年ぶり。今年は、タイムスケジュール、そして天候がライダーを大きく翻弄した週末だった。

タイムスケジュールは6月末の時点で、通常のそれから少し変更されることが発表されていた。これは、アラゴンGPからの連戦による機材到着遅延の可能性が考慮されたものだ。通常、金曜日の午前中に行われるセッションはなし。MotoGPクラスの場合、午後に75分間に時間を拡大したフリー走行1が行われ、土曜日午前中にフリー走行2、午後にフリー走行3と予選(Q1、Q2)が行われるタイムスケジュールとなった。この時点では、ライダーたちに大きな影響はなかっただろう。設定された3回のフリー走行の中で、レースに向けた準備を重ねていく。それが通常だ。 

だが、ここに天候という混乱の要素が加わる。日本GP週末の天候は、金曜日、土曜日、日曜日で全く異なっていた。フリー走行1が行われた金曜日は空にどんよりとした雲が広がり、路面温度が上がりづらい状況。土曜日は朝から本降りの雨となる。Moto2クラスの予選中には雷をともなう激しい雨になり、セッションが中断となるほどだった。この影響で、MotoGPクラスのフリー走行3はキャンセルとなる。決勝日は天候が回復し、快晴。路面温度はレースウイーク中で最も上昇した。ドライコンディションだったフリー走行1が路面温度28度だったのに対し、日差しがコース上に降り注いだ決勝レースでは38度にまで達した。 

日本GPが前回行われたのは、2019年。当然ながら、MotoGPマシンはその間に進化した。空力デバイスの形状が変わり、現在では全メーカーがライドハイトデバイスを備えている。週末を通して変わる天候、フリー走行3のキャンセル、そして3年ぶりの日本GPという要因が複雑に絡み合う。路面温度が上昇しコンディションが変わったことで、特にリアタイヤの選択はライダーの頭を悩ませ、チョイスが分かれた。

完ぺきなレースでの勝利に感涙のミラー

こうして迎えた決勝レースで、序盤から飛び出したのはMotoGPクラス参戦8年目のミラーだ。ミラーは7番手からスタートし、3周目にトップに立つと、他の追随を許さずに独走で優勝したのだった。「思ったよりもうまくいった、というのが正直なところだけど、僕はこの週末、ずっと強さを感じていたんだ。予選後はウエットでもっといい走りができると思っていたのに7番手だったからちょっとがっかりだったけどね。やっかいだなとは思ったけど、そこからいけるだろうとは思っていた」 

リアのタイヤ選択については、金曜日にミディアムタイヤでレースディスタンスを走り、決勝日朝のウオームアップ・セッションでハードタイヤを履いて確認していた。「朝のウオームアップ・セッションでは、ハードタイヤでコンスタントなタイムで走れていた。ハードタイヤはレースで使うだろうとも思っていた」と語っており、少ないセッションの中での見極めがうまくいったようだ。 

ミラーは、元々ウエットコンディションなどの複雑なレースに強い。とはいえ、完全なドライコンディションとなったレースを制した優勝は格別なものだったのだろう。

「感動的だった。(クールダウンラップでは)赤ん坊のように泣いたよ」 

コンスタントに表彰台を獲得してきたミラーだが、これが今季初優勝。感動もひとしおだったに違いない。

ジャック・ミラーに聞いた【一問一答】

【Jack Miller’(ジャック・ミラー】1995年1月18日生まれ。2015年にMoto3クラスからMotoGPクラスにステップアップ。昨年よりドゥカティのファクトリーチームから参戦している。3年ぶりに開催の日本GPで優勝を飾った

Q1:シーズン中に取り組んでいるトレーニングは?

シーズン中のトレーニングは、主にサイクリングとランニングだね。それからジムでのトレーニングも少し。あとはモトクロスバイクに乗ったり、スーパーバイクでトレーニングしたりする。僕はパニガーレV4Sを持っているんだけど、よくトレーニングに使っているよ。MotoGPバイクとはフィーリングが全く違うけど、スピードはあるし、時速300kmで走るMotoGPバイクに近いトレーニングができるんだ。

Q2:メンタルヘルストレーニングに取り組んでいますか?

取り組むことはできるだろうけど、僕は精神的にとても落ち着いていると思うんだ。だから、特にそこはなんとかしようというところじゃない。僕としては自然なことなんじゃないかと思う。問題があればオープンに話すし、取り組むべき部分についてもオープンに話す。だから、特にメンタル面のトレーニングというのはしていないんだ。

Q3:自分のレースキャリアにとって重要な人物とは?

キャリアを通じてとてもたくさんの人が僕を助けてくれたから、特定の誰かを挙げるのは難しいけど、父と母かな。僕がMotoGPに参戦するのを助けてくれた。すごく大事な人だよ。そしてもちろん、アキ(・アジョ)もそうだ。彼がそばにいてくれたのは、メンタル面だけじゃなくて、プロのレーサーとしての僕のキャリアにおけるマネジメントや指導という面でもいいことだった。アキはずっとそこにいて、素晴らしいメンターでいてくれたんだ。

Q4:レースキャリアの中で会心のレースはどれ?

いちばん印象に残っているレースは、(Moto3からMotoGPに昇格して2年目で、初めてMotoGPで)優勝を飾った2016年のアッセンかな。たぶんチャンピオンシップの誰にとっても大きな驚きだったと思うから。2021年のヘレスで、ドライコンディションで果たした優勝も、また特別な瞬間だったよ。すごく意味を持つ優勝だった。このために僕は人生をかけてきたんだから。素晴らしい瞬間だった。

Q5:これまでに経験した究極のゾーンは?

たぶん、(ドライコンディションで優勝を飾った)2021年のへレスかな。なぜなのかわからないんだ。理由がりたいよ。でも、そのレースウイークでは、ほとんどがうまくいっているように感じて、とても順調にウイークが進んでいた。そしてレースでは、全てを遮断できたんだ。僕はただ、自分のラップタイムと走りに集中していた。バイクは素晴らしく走っていた。そのとき僕はただそこにいて、何も考えていなかったんだ。

Q6:ターニング・ポイントはいつですか?

(Moto3フル参戦2年目の)2013年は、僕にとって大きなターニング・ポイントになったと思う。そのときのバイクはオーバーテイクができるものではなかったけど、思うように乗れたし、Moto3の上位のライダーと争うこともできた。その次は、2015年、2016年だ。MotoGPを理解し、MotoGPライダーとして、そしてアスリートとして自分を向上させるために、どのように自分の人生を変える必要があるかを考えたシーズンだった。

Q7:MotoGP、Moto3を戦うためにどんな食生活を送っていますか?

特に僕は体が大きい方だから、常に食事(の量)には気をつけているんだ。だから、いつも体重計に乗って体重を見ている。食習慣という意味では、僕はある程度、好きなものを食べている。でもレースウイークでは、ランチは毎日同じで、チキンとパスタ。食べやすいし、胃の調子が悪くなることもないからね。

Q8:シーズン中、オフの日はどのように過ごしていますか?

家に帰れたら、友人たちと農場で過ごす。農作業をしたり、バイクを組み立たり、モトクロスのトラックを作ったり、モトクロスバイクを整備したり。特に夏場はけっこう釣りをするよ。釣りをしたりモトクロスバイクを走らせて、一日中、自由に過ごすんだ。それからいろんなレースを見に行ったりすることが多いね。釣りは趣味なんだけど、バイクとは真逆だよね。友人たちと過ごして、魚がかかるのを待つ時間も楽しんでいるんだよ。

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