【正解のライン取り:Part0】 スポーツライディングが楽しくなる!
サーキットライディングで、多くのライダーが頭を悩ますのが“ライン取り”。「先導ライダーがいるときだけはうまく走れるんだけど……」とか、「そもそもどんなラインで走るのが理想なのかわからない」なんて人もいるはずだ。そして、レベルが上がると今度は「思い通りのラインで走れない」という課題に……。そんな“ライン取り”に関するさまざまな疑問を解消し、“正解”に近づく方法を、元MotoGPライダーの中野真矢さんがひとつずつ丁寧に伝授!!
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筑波サーキット・コース1000を例に理想のライン取りをご紹介
正しい操作ができてこそライン取りが活きる!
「サーキットのライン取り」と聞くと、レーサーが速く走るために考えるもの……と思われるファンライド層のライダーも多いのですが、じつはそれだけではありません! 確かに、〝正解〞のラインを走ることでサーキットを速く走れるようになります。逆にライン取りが悪ければスムーズに走ることも難しくなります。
でも〝正解のライン取り〞が持つ、より大きなメリットは、それにより安心感を得ながら安全にサーキットでスポーツライディングを満喫できるようになるという点。だからラップタイムを競わないファンライド層にも、ライン取りはとても重要なのです。
本誌が主催するサーキット走行会のライディングパーティ(通称ライパ)では、追い越し禁止の慣熟走行の時間があります。そこで先導をしていて、バックミラーを覗いたときに「そこじゃないんですよぉ……」というラインを走っている参加者の方をよく見かけます。
慣熟走行はペースが遅く、はっきり言ってどんなラインを通っても曲がれてしまうのですが、そのままフリー走行でも同じラインで走れば、そもそもペースを上げることができないか、ペースを上げたときにいつまでもバイクがダラダラと寝ているなど、リスクが高い走りになってしまいます。
そのような走りのライダーが減るように、我々先導ライダー陣は、慣熟走行でもベストなラインを走ることを心がけています。ぜひ、なるべく先導ライダーのラインをトレースして、遅いスピードであってもラインを学んでほしいと思っています。
ちなみに、コーナーにおける理想のライン取りは、前後のコースレイアウトがどうなっているかなどで変わりますが、基本は誰もが一度は耳にしたことがあるはずの「アウト・イン・アウト」。つまり、コーナーのアウト側から進入して、クリッピングポイントでインに寄り、そこからアウト側へと立ち上がるラインです。これによりコース幅をいっぱいに使え、各地点での操作に余裕が生まれるなどの利点があります。
さて、サーキット走行の経験値がもう少し上がって、ライン取りの重要性を理解し、頭の中にある程度の理想的なラインが描けるようになってくると、今度は「思い通りのラインで走れない!」という課題にぶつかることもあるはずです。
このときに考えてほしいのは、ライン取りそのものではなく、「狙ったラインを通れない本質的な理由」。というのも、いくら頭の中で〝正解のライン取り〞が描かれていたとしても、正しいマシンコントロールができていなければ、それをトレースすることは難しくなるからです。
例えば、「進入でしっかり減速できていない」とか、「コーナーの中間でスロットルを開けるのが早すぎる」とか、もっと根本的に「コーナリング中のライディングフォームが悪くてマシンの旋回力を引き出せていない」とか「目線が近すぎる」などの要因が挙げられるでしょう。
つまり逆に考えると、〝正しいマシン操作〞ができなければ、いくら〝正解のライン取り〞を考えても、それを体現するのは難しいということ。ライディングテクニックはすべて繋がっているし、ライン取りにはスピードと操縦のバランスも大切です。
ライン取りを考察するのと一緒に、いま一度ライディングフォームやコーナリングテクニックも見直していきましょう! 先ほど触れたように、レーシングライダーは速く走るためにライン取りを追求します。しかしファンライドでも、いいラインを走れるようになることで、安心してスポーツライディングできるだけでなく、愛車のポテンシャルをもっと引き出せるようになります。
そしてそれは、楽しさに直結。〝正解のライン取り〞は、サーキット走行をより満喫する必須要素であり、理想のラインをトレースできているか否かは、自分が正しくマシンを操れているかどうかの試金石でもあるのです。
我々プロライダーでも、ときには「これで正しいのか?」と悩むことがあるのがライン取り。その奥深い世界を、一緒に楽しんでいきましょう!
(中野真矢)