オイルとガソリンの添加剤効果とは?【もう一度、オイルについて考えてみる:Think with A.S.H.】
注入するだけで性能アップ! という謳い文句のエンジンオイル添加剤。そんな都合の良い話があるのか? オイルのプロに、その効果や注意点を聞いてみた。
PHOTO/Y.ARAKI, K.MASUKAWA, K.ASAKURA TEXT/K.ASAKURA 取材協力/ジェイシーディプロダクツ http://www.jcd-products.com/
夢のケミカルなのか? 添加剤のナゾに迫る
エンジンオイルと同様に、多くの製品が存在しているのが添加剤。まず、ここでいう添加剤とは、今まで紹介してきたエンジンオイルの成分として配合されているものではなく、エンジンオイルやガソリンに後から加えるケミカルのことだ。
そうしたケミカルは「潤滑性を向上してエンジン保護性能を向上させる」「パワーアップを実現」「燃焼室内を洗浄する」といった、素晴らしい効能が謳われている。まるでチューニングパーツだ。ハードパーツに比べれば価格も手頃で、つい試してみたくアイテムなのだが、そんなに簡単に性能アップが図れるものなのだろうか?
「しっかりと作られている添加剤であれば、性能向上は可能です」
そう語るのは、高性能オイル&ケミカルブランド「A.S.H.」を展開するジェイシーディプロダクツ代表の岸野 修さん。事実、A.S.H.でもオイルとガソリンの添加剤をラインナップし、好評を博している。添加剤は効果が認められるものなのだ。そこで今回は、添加剤について学んでいこうと思う。
「まず、エンジンオイルの添加剤ですが、大別すると、代表的なものに〝固体潤滑剤〞の効果を利用したものと、〝摩擦低減剤〞の効果を利用したものがあります。アプローチは異なりますが、どちらも潤滑性向上が見込めます」
A.S.H.の製品では「NANOTECHD DFP-7」が固体潤滑剤で、「FM-ZERO」は摩擦低減剤にあたる。「A.S.H.の2種類のオイル添加剤は併用も可能です。混ぜて使ってもデメリットはありません」
なるほど、良いことづくめのようなのだが、ならば最初からエンジンオイルに配合してあっても良いのではないだろうか?
「これまでに申し上げてきた通り、A.S.H.のエンジンオイルは、どのグレードでもエンジンの保護性能には自信があります。グレードの違いは、どの程度のパフォーマンスを求めるかという点にあります。オイル添加剤を作ったのは、ユーザーさんからの要望によるものなのです。もっと、性能を上げたいというコアなユーザーさんですね。実は、FM-ZEROの成分は、A.S.H.のエンジンオイルに配合している添加剤、フリクションモディファイヤーと同系列のものです。変な製品を使ってトラブルを起こさないよう、確実に効果があり安全な添加剤を、我々が提供しようと考えました」
ここで〝トラブル〞という言葉が出たことが気になる。添加剤の選び方で、バイクに不具合が発生することがあるのだろうか?
「使用すると瞬間的に油圧が上がるものがあります。これは、ポリマーを使い対症療法的に粘度を上げているので、油温が上がれば効果を失います。また、テフロンを使用したものは、オイルに上手く混ざらずにスラッジの元になることがあります。テフロン自体は摩擦係数が低く、素晴らしい性能を持つ素材なのですが使い方が非常に難しい。添加剤の使用が、即トラブルにつながることは考えにくいですが、長期的にはオイルを汚したり、そもそも効果がなかったりします」
では、粗悪な添加剤の見分け方はあるのだろうか?
「溶剤に灯油を使っているものは、お勧めできません。これは臭いをかげば判ります。また、使用前に攪拌が必要なものは、使用後に成分がエンジン内に沈澱することが多いので避けた方がいいでしょう」
添加剤は選び方次第で、エンジンの状態を良くも悪くもするということだ。上手く活用し、バイクを労り楽しく走りたいものだ。
オイル添加剤で多用される固体潤滑のメカニズム
金属の表面はツルツルであるように見えるものだが、ミクロの世界の認識では凸凹している。概ね15μm(ミクロンもしくはマイクロメートル)程度の大きさの穴が、連続して表面を埋めていると考えていい。1μmは1000分の1mmだから、当然人間の目で確認できるものではない。固体潤滑の考え方は、その穴を微粒子で埋めて金属面を平滑にして、摩擦係数を下げるというものだ。
だが、ことは簡単ではない。単純に微粒子をエンジンオイルに混ぜても穴にハマってはくれないので、金属表面への吸着性を持たせる必要がある。また、粒子が大きい場合も、穴から弾かれてしまう。吸着しない粒子はスラッジの元となり、エンジンオイルを汚す原因となる場合もある。