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【KTM 1390 SUPER DUKE R EVO】レーシングマシンに迫る鋭利なパフォーマンス

620 DUKEのデビューから今年で30年。登場以降さまざまな排気量クラスに兄弟モデルを誕生させ、異端的モデルから正統派のネイキッドスポーツに進化してきたDUKEシリーズ。そのDNAを受け継いだ最新モデルを、スペイン・アルメリアでテスト。

PHOTO/KTM TEXT/D.SUZUKI
取材協力/KTMジャパン TEL03-3527-8885 
https://www.ktm.com
【鈴木大五郎】
’74 年生まれのモータージャーナリスト。アメリカのAMAやダートトラックで修行した後、全日本や鈴鹿8耐で活躍。ライディングパーティの先導、バイクメーカー公認インストラクターを務める他、自身のスクールも運営
【鈴木大五郎】
’74 年生まれのモータージャーナリスト。アメリカのAMAやダートトラックで修行した後、全日本や鈴鹿8耐で活躍。ライディングパーティの先導、バイクメーカー公認インストラクターを務める他、自身のスクールも運営
【サーキットとワインディングでニューモデルの走りを堪能】DUKEシリーズの生誕30周年を記念した国際試乗会はスペインで開催された。DUKE 390/990とSUPER DUKE 1390 Rシリーズを一気にテストする走りまくりな2日間だった。390でのジャーナリスト対抗ジムカーナタイムアタックなど、試乗会でも「Ready to race」は健在。
【サーキットとワインディングでニューモデルの走りを堪能】DUKEシリーズの生誕30周年を記念した国際試乗会はスペインで開催された。DUKE 390/990とSUPER DUKE 1390 Rシリーズを一気にテストする走りまくりな2日間だった。390でのジャーナリスト対抗ジムカーナタイムアタックなど、試乗会でも「Ready to race」は健在。

爆発的なパワーの中に優しさを伴った野獣

’05年に登場した990スーパーデュークは、スチールフレームにV型2気筒エンジンを搭載したスポーツネイキッドモデルだった。LC8(リキッドクールド=水冷の8バルブという意味)という、もともとはパリ・ダカールラリー向けに製作されたエンジンを搭載するためか、どこかオフロードモデルのような香りも漂わせていた。

一方で、オンロードでの走りはまだまだ熟成途中といった印象だったが、非常にマニアックで尖ったキャラクターが、一部のファンを魅了していた。

’14年にスーパーデュークは1290となり、ビーストというニックネームが与えられた。排気量アップはそのままトルクの増大を意味し、まさにビースト感漂うパワフルさを身につけていた。しかし、なにより変わったのはそのトータルパフォーマンスの高さで、汎用性も身に付けていたのが印象的であった。

MotoGPに参戦しているにも関わらず、フルフェアリングを纏ったリッタークラスのスポーツモデルが存在しないのは、ある意味もったいないとの声は当時も少なからず聞こえてきていたが、「MotoGPレプリカを作ったところで、それを公道で楽しむことなんて出来ないだろ?」という、至極真っ当な返答を開発陣から聞かされたりもした。

しかし、その要求をも取り入れたのでは? と思わせたのが’20年に行われたフルモデルチェンジだ。刷新されたフレームは、なんと従来比300%の剛性アップ。それがサーキット走行をより重視した結果であることは想像に難くなかった。

なんといってもこのブランドは「レディ・トゥ・レース」がスローガンだ。スーパーデュークは国際サーキットであっても、ライバルメーカーのスーパースポーツを追撃できるようなスペックを備え始めたのだった。

そして今回、’24年モデルで1390にネーミングが変更された。オレンジと黒のボディカラーと、キスカデザインによる個性的なスタイリングがすっかりお馴染みとなってしまったため、単純にエンジンの排気量が増えただけのように思われるかもしれないが、実は60%ものパーツが刷新されているという。中でも外装類は特徴的なヘッドライトだけでなく、タンク形状やシートカウルも変更。さらにウイングレットも追加され、一段とエアロダイナミクスが強化されている。

跨ってみるとシートは高く、なかなかに腰高である。兄弟モデルに比べるとハンドル位置もやや低く、スパルタンな雰囲気が漂う。サーキット走行用に足まわりを固めていることも要因になっているだろう。

やや重いクラッチを握り(市街地では少し使いにくいと感じるだろう)マシンをスタートさせる。エンジンの出力特性はフレンドリーで、そのフィーリングも優しいとさえ感じた。

しかし、アクセルを少し多めに捻ると怒涛のトルクによる加速が始まる。ビーストを彷彿させるトルクフルなエンジン特性は稀有なもので、これだけでも価値があると感じられる。しかもトルク型という開け始めの印象に反し、しっかり高回転域に向けてぶん回っていくのがこのマシンの凄みでもある。 

その証拠に、それほど長くはないアルメリアのバックストレートでも、メーター読みで260km/hオーバー。パワーパーツを装着したマシンだと270km/hを軽々と超える。ちなみにエンジンも車体もまだまだ余力はありそうだったが、さすがに風圧が強烈で、正直これ以上のスピード域での走行はギブアップしたくなるほどであった。

開発テストの際、超高速域で車体にほんの少しフレを感じることがあったため、その対応としてヘッドパイプまわりの剛性を高めた、とのこと。「そんな領域で走るライダーなんてほとんどいないだろ!」とツッコミを入れたくなったが、そういうところが「レディ・トゥ・レース」なんだと妙に納得してしまった。

一方で剛性がアップされていても、車体まわりが硬いといった印象はなく、むしろフィードバック性が高く、とっつき易さがあった。1290になって以降、暴君的ビーストではなく、気の良いナイスガイなビースト像がイメージされる。個人的にこのフィーリングは、一貫してシリーズに受け継がれているように思う。

1390スーパーデュークはグレードが2種類あるが、日本に導入されるのは電子制御サスペンションを装備するEVOのみで、その中身もアップデートが施されている。

セミアクティブのお任せ仕様は、路面状況が分からない一般道で使うには最適だろう。一方、サーキットを周回する場合には、セットアップを固定したほうが良いというライダーも少なくない。

EVOの電子制御スペンションはそのどちらもカバーする機能を有しており、機械式のRモデル(日本未導入)と同等のラップタイムを刻めるという。電子制御のメリットは、調整時に手を汚すことなく、慣れれば時間もかからないこと。さまざまな状況に完璧にフィットさせることが出来る、まさにスーパー過ぎるデュークなのだ。

1390 SUPER DUKE R EVO:サーキット走行に対応する第3世代の電子制御サスペンション

WP製セミアクティブサスペンションは第3世代に進化。リアにはストロークセンサーを備え、プリロードも自動的に調整する
WP製セミアクティブサスペンションは第3世代に進化。リアにはストロークセンサーを備え、プリロードも自動的に調整する
1301ccから1350ccに排気量をアップした最新のLC8エンジン。パワーは10ps向上して190ps、トルクも145Nmと過去最大になった
1301ccから1350ccに排気量をアップした最新のLC8エンジン。パワーは10ps向上して190ps、トルクも145Nmと過去最大になった
シート高は834mmとやや高め。腰高感は強いが、スポーツライディングをするには適した設定だ
シート高は834mmとやや高め。腰高感は強いが、スポーツライディングをするには適した設定だ
エンジン形式水冷4ストローク75°V型2 気筒DOHC4 バルブ
総排気量1350cc
ボア×ストローク110×71mm
最高出力190ps/10000rpm
最大トルク145Nm/8000rpm
変速機6速
クラッチPASCスリッパークラッチ
フレームクロモリ鋼管製スペースフレーム
キャスター24.7°
サスペンションFWP製APEX倒立フォーク電子制御式セミアクティブ/125mmストローク
RWP 製APEX 電子制御式セミアクティブ/140mmストローク
ブレーキFブレンボ製4ピストンラジアルマウントキャリパー+φ320mmダブルディスク
Rブレンボ製2ピストンキャリパー+φ240mmシングルディスク
タイヤサイズF120/70R17
R200/55R17
シート高834mm
車両重量(燃料を除く)200kg
燃料タンク容量17.5L
価格269万9000円

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