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【 BMW M 1000 XR 】従順でもあり、獰猛でもある二面性を秘めた”M”

M 1000 RR、M 1000 Rに続く3番目となるMモデル、M 1000 XRが登場。S 1000 XRをベースとするクロスオーバーモデルは豪華なパーツを多用し、201psという恐ろしいほどのハイスペックを誇りながら、驚くほど扱いやすく快適性の高い、夢のようなマシンに仕上がっていた。

PHOTO/BMW TEXT/D.SUZUKI
取材協力/ビー・エム・ダブリュー 
0120-269-437 
htpps:///www.bmw-motorrad.jp/
【鈴木大五郎】
’74年生まれのモータージャーナリスト。AMAでダートトラック修行をした後、鈴鹿8耐などで活躍。自身のライディングスクールも運営する

スーパースポーツのS1000RRをベースに、ロングストロークの足まわりや防風性の高いフェアリングを装着し、アップライトなポジションとしたスポーツツアラーがS1000XRだ。クロスオーバーとも言われ、欧州試乗で高い人気を獲得している。 

クロスオーバーの特徴は、快適性の高い車体構成にスーパースポーツ譲りのハイパワーエンジンを搭載。前後17インチホイールを装着している点が、オフロード走行も想定されるアドベンチャーとの違いだ。 

そんなXRに、BMWのプレミアムシリーズであるMモデルが登場。スペイン・マラガ近郊でテストライドが行われた。 

乗車して驚いたのがシートの高さだ。カーボンパーツが多用され軽量になっているとはいえ、重心が高いので引き起こしにはやや重量を感じた。 

外装はボリュームがあり、カーボン特有の質感やウイングレットがさらに迫力を高めている。 

エンジンを始動すると乾いたエキゾーストノートが、アクラポヴィッチ製サイレンサーから放たれる。いかにもパワフルそうなサウンドに緊張がマックスに近づくなか、走り出したXRは想像を遥かに超える従順さをみせてくれた。

シフトカムを装備するS1000RRをベースとしたエンジンはS1000XRとは別物。4~ 6速のミッションを変更するなど最適化を施す
シフトカムを装備するS1000RRをベースとしたエンジンはS1000XRとは別物。4~6速のミッションを変更するなど最適化を施す

エンジンの出力特性、とくに開け始めがしっかりと調教され、マシンとの一体感が高まっているのがよくわかる。スムーズかつシルキーなエンジンフィールも印象的だが、それを後押ししているのは、しなやかな足まわりの動きであろう。 

Mモデルのネイキッド、M1000RRも足まわりがしなやかだったのを思い出すが、M1000XRはストロークが長くなったことにより、その印象がさらに強まっている。200㎰オーバーという恐ろしいエンジン出力のことなど忘れて、そのまま気軽にツーリングに行けそうなほどのコンフォートさなのだ。 

エンジンはSモデルでも170㎰の高出力を誇る。実際のところ、それで不満がないどころか、ちょっとやそっとでは全開にできないほどのパワフルさを持っている。しかしMモデルは、それに2重の輪をかけて、速さにも磨きがかけられている。

アップライトなライディングポジションということもあって「これはちょっとヤバいかも……」と、尻尾を巻いて逃げ出したくなるほどの強烈な加速を、簡単に味わうことができるのだ。 

一方で超高速域であっても揺らぐことのない快適空間を備えているのが、このマシンの凄さでもある。これには空力を考慮した外装類だけで無く、サスペンションを含めた多彩な電子制御が大きく貢献している。

この車体とエンジンを最大限に活用できるのは、やはり電子制御によるサポートがあってこそだ。多くのツーリングモデルが同様の機能を備えているが、M1000XRはワンランク上を行っている。このマシンで味わえるのは極上の快適性に加え、スーパースポーツ譲りの超絶に刺激的なライディングだ。 

近年、欧州を中心にアドベンチャーモデルが人気を得ている理由は、快適性とともに迫力あるボディにある。対してクロスオーバーモデルは比較的コンパクトになるのが一般的だが、このM1000XRなら、横にR1300GSSが並んでも引けを取らないボリュームと凄みを備えている。そういう意味でも、このマシンを所有する悦びはかなり大きいはず。 

M1000XRはライダーのさまざまな要求に応え、所有感も満たすミラクルなマシンなのだ。

BMW M 1000 XR

BMW M 1000 XR
標準はアルミ鍛造ホイールだが、Mコンペティション仕様はカーボン製。両モデルともにMブレーキを装備
標準はアルミ鍛造ホイールだが、Mコンペティション仕様はカーボン製。両モデルともにMブレーキを装備
ウイングレットは220km/hで12kgのダウンフォースを発生。高速域ではあきらかに安定性が向上する
ウイングレットは220km/hで12kgのダウンフォースを発生。高速域ではあきらかに安定性が向上する
Mコンペティション仕様には剛性の高いアルミ削り出しのMライダーフットレストシステムを標準装備
Mコンペティション仕様には剛性の高いアルミ削り出しのMライダーフットレストシステムを標準装備
よりスポーティで高いホールド性とともに、優れた快適性を誇るセパレート式Mスポーツシートを採用
よりスポーティで高いホールド性とともに、優れた快適性を誇るセパレート式Mスポーツシートを採用
Mのロゴが輝かしい削り出しのMレバーを採用。クラッチレバーも同デザインとなり共に可倒式だ
Mのロゴが輝かしい削り出しのMレバーを採用。クラッチレバーも同デザインとなり共に可倒式だ
アクラポビッチ製スポーツサイレンサーを標準装備。レーシーなサウンドとともに軽量化にも貢献する
アクラポビッチ製スポーツサイレンサーを標準装備。レーシーなサウンドとともに軽量化にも貢献する
電子制御式サスペンションはザックス製で、ストローク量は138mm。ライディングモードに連動したアクティブ仕様のほか、任意で細かいセットアップも可能
電子制御式サスペンションはザックス製で、ストローク量は138mm。ライディングモードに連動したアクティブ仕様のほか、任意で細かいセットアップも可能
6.5インチTFTメーターとジョグダイヤルのセットは多くのモトラッドモデルと共通。起動時のMロゴ登場演出がその気にさせる
エンジン水冷4ストロークDOHC4 バルブ直列4 気筒
総排気量999cc
ボア×ストローク80×49.7mm
圧縮比13.3:1
最高出力201ps/12750rpm
最大トルク113Nm/11000rpm
変速機6速
クラッチ湿式多板クラッチ(アンチホッピング)、自己倍力機能付き
フレームアルミニウム鋳造ブリッジタイプフレーム
キャスター25.1°
サスペンションFφ45mmフルアジャスタブル電子制御式倒立フォーク(ダイナミックESA)
Rフルアジャスタブル電子制御式モノショック
ブレーキFφ320mmダブルディスク+4ポットキャリパー
Rφ220mmシングルディスク+2ポットキャリパー
タイヤサイズF120/70ZR17
R200/55ZR17
全長×全幅×全高2170×850×1382mm
ホイールベース1548mm
シート高850mm
車両重量211kg(乾燥)
燃料タンク容量20L
価格327万9000円~

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