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【HONDA CBR650R E-Clutch】電子制御クラッチが実現した、スポーツ性と快適性の両立

二輪車のクラッチを自動制御するHonda E-Clutchを搭載した、最初の市販車となるCBR650RとCB650Rが日本でも発売開始となった。ツーリングや市街地移動を快適にするための機構か……と思っていたら、スポーツライディングとの親和性にも優れていて、とにかく驚かされた!!

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA
取材協力/本田技研工業 
70120-086819 https://www.honda.co.jp/motor/
【田宮 徹】
今年で50歳を迎えたが、まだまだスポーツライディングが大好きなフリーランスライター。全日本モトクロス選手権の全戦取材は23年継続中で、オンだけでなくオフロードも大好物

サーキットでも楽しめる新感覚の自動クラッチ操作

はっきり言ってこの技術は革新的だ。「運転操作が煩雑だからこそ、バイクは楽しい」という意見は尊重するし、自分にもその気質は多少あるが、それでもホンダEクラッチを体験すれば、秀逸な自動制御に感動せざるを得ない。

そして乗り込むほどに、このシステムにはクラッチ操作が不要なことによる利便性向上や疲労軽減だけでなく、“スポーツライディングしたときの楽しさ”が詰まっていると実感。否定する言葉は何も思い浮かばなかった。

’24年型のCBR650RとCB650Rに初めて設定されたEクラッチは、二輪車のクラッチ制御を自動化する新技術。マニュアル操作の変速機とクラッチを採用する既存エンジンの構造を大幅に変更することなく、クラッチ部のアクチュエーターやこれを電子制御するコントロールユニット、各種センサー、そしてクイックシフターを追加することにより搭載できる。

Eクラッチのアクチュエーターはモーターを2個使用することで、必要なトルクを確保しつつ小型化も実現。コントロールユニットからモーターに送られる電流値でクラッチを自動制御する。システム全体で約2kgと軽い
Eクラッチのアクチュエーターはモーターを2個使用することで、必要なトルクを確保しつつ小型化も実現。コントロールユニットからモーターに送られる電流値でクラッチを自動制御する。システム全体で約2kgと軽い
Eクラッチ仕様は、マニュアルクラッチ仕様と比べてエンジンサイドカバー部の張り出しが増えるが、ライダーのフットスペースに与える影響は最小限に抑えられており、車体に跨った状態で存在を気にすることはなかった
Eクラッチ仕様は、マニュアルクラッチ仕様と比べてエンジンサイドカバー部の張り出しが増えるが、ライダーのフットスペースに与える影響は最小限に抑えられており、車体に跨った状態で存在を気にすることはなかった

ギアがニュートラルの状態でメインスイッチをオンにすれば、自動的にシステムが有効になる。この状態でエンジンを掛けてレバーを握ればマニュアルクラッチ操作になるが、レバーを握らずシフトペダルを踏み込めば1速に入り発進スタンバイとなる。あとはスロットルを開けるだけで、半クラッチ制御によりスルスルと前に進む。

スロットル開度が小さいときと、全開かそれに近い状態で発進したときでは、半クラッチを持続する回転数が異なる。全開時は3500rpmを維持しながら半クラッチが続き、完全につながったところでエンジン回転数が上昇。ミドルクラスの4気筒エンジンなので、この回転数だと驚くほど鋭い発進加速にはならないが、逆にかったるいと感じるほど遅くもなく、公道で乗るのにちょうどいい加速感が得られる。

いろんなスロットルワークを試してみたが、発進時の半クラッチ制御は本当に絶妙で、変にエンジン回転数が上下することも、半クラッチに段階を感じることもない。私を含めたほぼすべてのライダーよりも、間違いなく上手なクラッチワークだ。

スロットルをやや開けてリアブレーキで速度調整すればUターンも簡単。クラッチレバーを握ると自動でマニュアルモードになり、レバーで半クラ操作ができる
スロットルをやや開けてリアブレーキで速度調整すればUターンも簡単。クラッチレバーを握ると自動でマニュアルモードになり、レバーで半クラ操作ができる

ちなみに、Eクラッチの制御は6速発進ができるほど秀逸ではあるのだが、ムダにクラッチ板の摩耗を招くため、決してオススメはしない。これは走行中も同じで、高めのギアで低速走行するとメーターのギアポジション部に警告が表示されるので、素直に従っておきたい。

発進してからは、上下クイックシフター搭載車と同じようにクラッチ操作なしでシフトアップ&ダウンができるのだが、まずシフトアップがとにかくスムーズなのがEクラッチの特徴。この650シリーズは電子制御スロットルを採用していないが、シフトアップ時は短時間の点火カットに加えてごくわずかな半クラッチを挟んでおり、これが回転差によるシフトショックを消している。手動クラッチ車のクイックシフターだと挙動が乱れやすい、1↓2速や2↓3速でもかなりスムーズなので、深くバンクした状態でもためらうことなくシフトアップできてしまう。

一方でシフトダウン時は、電子制御スロットルではないため自動的にエンジン回転数を合わせるオートブリッピング機能も備わっておらず、Eクラッチによる半クラッチだけで回転差によるショックを逃がしている。それでも、公道を普通に走っている状態なら変速ショックは十分に許容範囲で、ほぼ気にならない。

ただしサーキットレベルの走りで高回転域まで使用し、ハードにブレーキングしながら3→2速や2→1速にシフトダウンしたときには、“キュッ”とリアタイヤが一瞬鳴き、このときに車体が傾いていれば挙動も乱れる。そのため最初は、スポーツライディングには使えないかとも感じたが、すぐに思い出した。Eクラッチは、あくまでも「クラッチ操作を自動化してくれる技術」であるということを。

CBR650R E-Clutch
【CBR650R E-Clutch

つまりシフトダウンのショックを消す方法は簡単。クイックシフターのないバイクでこれまでやってきたのと同じように、シフトペダルを踏むのと同時にライダーがスロットルをあおり、回転数を合わせてあげればいい。あおるタイミングは、一般的なマニュアル操作のバイクと完全に同じ。これでダウン時の変速ショックもほぼなくなり、サーキットでもさらに操縦しやすくなる。

ちなみに、一部の最新クイックシフターも対応できるようになったが、Eクラッチもスロットル全閉でのシフトアップや、全開でのシフトダウンが可能。そして、これらの状況を含めたあらゆるシーンで、スパッとシフト操作が決まる。これがとにかく快感で、“ムダにシフトチェンジしたくなる”ほどだった。

もちろん、クラッチの自動制御化により運転が“楽”になるという要素もあるが、加えてEクラッチには、スポーツライディングが“楽しく”なるという利点もあった。もちろんそれでも、「バイクはアナログなほうが……」と主張するライダーもいるだろうが、そんな論争なんてどうでもよくなるくらいEクラッチの制御は素晴らしく、信頼性に優れて快適で、スポーツライディングを満喫できるフィーリングだった。

今後、Eクラッチは他の車種にも採用されるだろうが、これが電子制御スロットルと組み合わされたらさらに変速ショックもなくなり、もしかしたらフルバンク状態でのシフトダウンなども可能になるかもしれない。そう考えると、クラッチの自動制御化はバイク操作の醍醐味をスポイルするわけではなく、むしろスポーツ性を向上させる役割も担っているとさえ思えるのだ。

【CB650R E-Clutch】基本部品を共有するネイキッドも同時に発売された。CBR650Rとはエンジンカバーやフロントフォーク、ホイールのカラーが異なる。ホンダとしてはグローバルでの展開を含め、こちらを主力と考えているようだ
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’24年型ではヘッドライトなどのデザインが変更され、ウインカーもLED化
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’24年型CBR650Rはヘッドライトやカウルのデザインを一新
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吸気チャンバーと一体化されたシュラウドも形状が見直された
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スマホ連携機能を標準装備したカラーメーターとともに、新型4ウェイハンドルスイッチも採用
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’24年型で新デザインとなったリアまわりは、CB650RとCBR650Rで共通
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テールランプも新作。リアウインカーは急制動警告機能付き
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エンジン水冷4ストローク直列4 気筒DOHC4 バルブ
総排気量648cc
ボア×ストローク67.0×46.0mm
圧縮比11.6
最高出力95ps/12000rpm
最大トルク6.4kgf・m/9500rpm
変速機6段
クラッチ湿式多板アシスト&スリッパー付
フレームダイアモンド
キャスター /トレール25 ゜30′/101mm
サスペンションFSHOWA製φ41mm倒立フォークSFF-BP
Rモノショック
ブレーキFφ310mmダブルディスク+ニッシン製4ピストンラジアルマウントキャリパー
Rφ240mmシングルディク+ニッシン製1ピストンキャリパー
タイヤサイズF120/70ZR17
R180/55ZR17
全長×全幅×全高2120×750(780)×1145(1075)mm
ホイールベース1450mm
シート高810mm
車両重量209【211】(205【207】)kg
燃料タンク容量15L
価格110 万【115万5000 ~】(103 万4000【108万9000】)円
※( )内はCB650R、【 】内はEクラッチ装着車

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