自らの個性を高め続ける情熱のイタリアンブランド【FANTIC/ENERGICA/ITALJET】
イタリアのバイクブランドには、挑戦と競争、再編の中で築かれてきた紆余曲折の歴史がある。少しでもこれを知ることで、それぞれのブランドに対する魅力はさらに深まるはず。ここでは、スポーツモデルを手がけるメーカーを中心に、その歴史や現在の活動を紹介する。
TEXT/T.TAMIYA
【FANTIC:Since 1968】ファンライドモデルから本格オフローダーまで展開
米国向けにミニバイクやオフ車を生産する会社として、1968年にイタリア北部のバルザゴで創業。1975年にはモトクロスのワークスチームを立ち上げ、1980年代には欧州のエンデューロ選手権やトライアルの世界選手権でもタイトルを獲得した。2014年に多数の企業家から成るイタリア系合資会社の出資を受けて経営が安定し、ラインナップを拡大。2017年のEICMAでキャバレロを発表し、2020年にはヤマハのエンジン製造子会社だったモトーリ・ミナレリを買収。現在はレース活動にも積極的に取り組む。
【ENERGICA:Since 2010】大型電動スポーツバイクに先鞭を付けたブランド
イタリアのモーターバレーと呼ばれるエミリア・ロマーニャ州のモデナを本拠地に、国際的製造技術企業のCRPグループによりプロジェクトが立ち上げられた。電動レーサーの開発を経て、2013年のEICMAで最初の公道用電動スポーツバイクとなるエゴを発表。
その後はネイキッドのエヴァシリーズも展開し、現在はネオクラシック系やアドベンチャー系もある。2022年春に、米国を拠点とする電気自動車系企業のイデアノミクスの資本を得て、2023年からモトアメリカでエンジン付きバイクと同じレースに参戦している。
【ITALJET:Since 1959】美術館にも展示されるスポーツスクーター
イタルメゼータ社として、レオポルド・タルタリーニが1959年にボローニャで創業。小型スポーツやモペットを製造し、1967年から車名がイタルジェットとなった。1970年代にオフロード系、1980年代からスクーターの分野に進出。1995年型の初代ドラッグスターなどで話題を呼んだが、2003年倒産。2005年に創業者の実子マッシニモが再建し、新生ドラッグスターシリーズを展開する。歴史的にデザイン性も高く評価され、例えばニューヨーク近代美術館にはモペッドのパック・ア・ウェイが所蔵される。