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【Historic Bikes/KAWASAKI Ninja ZX-10R】走り出した瞬間馴染む感性だから、ライダーに自信がみなぎる

カワサキの本気を感じさせる2016年モデルのZX-10Rに試乗する機会を得たすでにオリジナルカラーを纏ったフルパワー仕様のMSLゼファーのデモ車でマイナーチェンジではなくヘビーチェンジと言われるそのパフォーマンスは国産スーパースポーツの新しいベンチマークになるに違いない

理想的ともいえる正常進化が印象的だった――この日の気温はわずか9度。極寒の中でハイグリップタイヤを履いた200psのバイクに挑むことは、恐怖心との戦いになることを覚悟していたが、ニューZX-10Rは僕を簡単に許容してくれたのだった。

このZX-10Rは、MSLゼファーのデモ車。全国のケイズ・スタイルショップで販売されるオリジナルカラーを纏い、日本ビート工業とコラボしたマフラーなどに手を加えた車両だ。

2016年モデルのZX-10Rは、スタイリングこそ前モデルを踏襲するものの、エンジン&シャシーはもちろん電子制御も前モデルとはまるで別物。欧州ではマイナーチェンジでなく、ヘビーチェンジと呼ばれるほどに進化を果たした。

ケイズ・スタイルではオリジナルカラーの10R を用意。写真のデモ車は、KRT パールスターダストホワイトのオリジナルカラー+ビート製スリップオンマフラーを装着し、259万7400円となる
ケイズ・スタイルではオリジナルカラーの10R を用意。写真のデモ車は、KRT パールスターダストホワイトのオリジナルカラー+ビート製スリップオンマフラーを装着し、259万7400円となる

ご存じのとおり、2015年はWSBを圧勝で制し、そこで培われたノウハウも投入されている。そして、東京モーターショーで話を聞いた、開発リーダー・松田義基さんの言葉も印象的だった。

「実力勝負」「乗ってみていただければ分かります」。力強いその言葉には自信が漲っていた。その時から心待ちにしていたニューZX-10Rに試乗する機会がようやく訪れたのだ。

跨った瞬間からしっとりとサスが沈む、走り出してもサスの動きが物凄く緻密で、数メートルで乗りやすいバイク、さらに良いバイクであることが伝わってきた。だからタイヤを温めるのも難しくなった。

パワーはフルパワーのままでもスロットルのツキに安心感があったため「F」のまま、コンディションを考え、トラコンは最大限に介入する「5」を選択した。

ボッシュ製のIMU(Inertial Measurement Unit)、慣性計測装置の採用で電子制御は大幅に進化。状況によって変わり続けるスリップ率を常に検知し、最大限の加速力を発揮。従来のモデルのように滑ったらトルクカット、といった印象はなく、トラコンの効きに不自然さを感じさせないほど自然に介入してくる。パワーモードはF(フルパワー)、M(F の80%)、L(F の60%)の3 種類、トラコンは5 段階+ OFF、他にもローンチコントロール、エンジンのECU とも連動したスポーツライディング用のブレーキマネージメントシステム、エンジンブレーキコントロール、クイックシフト(アップのみ)、オーリンズ製の電子制御ステアリングダンパーを採用する
ボッシュ製のIMU(Inertial Measurement Unit)、慣性計測装置の採用で電子制御は大幅に進化。状況によって変わり続けるスリップ率を常に検知し、最大限の加速力を発揮。従来のモデルのように滑ったらトルクカット、といった印象はなく、トラコンの効きに不自然さを感じさせないほど自然に介入してくる。パワーモードはF(フルパワー)、M(F の80%)、L(F の60%)の3種類、トラコンは5 段階+OFF、他にもローンチコントロール、エンジンのECU とも連動したスポーツライディング用のブレーキマネージメントシステム、エンジンブレーキコントロール、クイックシフト(アップのみ)、オーリンズ製の電子制御ステアリングダンパーを採用する

ハンドリングの馴染みやすさが際立ち、前輪の舵角の付き方がとても素直だ。15年モデルは前傾がキツく、フロントヘビーな印象が強かったが、ニュー10Rはフロントが軽く、素直。

ブレーキを緩めながら直立付近からわずかに車体が傾いていく過程はもちろん、徐々にペースを上げ、鋭く寝かせるようなシーンでも“乗りやすさ”“素直さ”というキャラクターは一向に変わらないから驚く。

ステアリングダンパーはオーリンズ製電子制御
ステアリングダンパーはオーリンズ製電子制御

確実に向きが変わるため、その後の旋回、立ち上がりが楽で、コーナリングを組み立てやすい。

極寒でハイグリップタイヤという悪条件だが恐怖感はなく、慎重にタイヤを温めることは重要だが、その過程さえもが10Rと共に楽しめてしまうような感覚なのだ。15年モデルからは考えられないほどクセがなく、フレンドリーだ。

タイヤのグリップに頼るというよりは車体とサスペンションをしっかりと機能させてタイヤをグリップさせているような感覚。現状では市販車で10Rだけが採用するSHOWA製バランスフリーフォークのキャパシティーは抜群に高く、ペースを上げてもまるでレーシングフォークのようにしなやかだ。

今回はデモ車のため、サスのカラーなどが市販品とは一部異なる。市販車として10R が唯一採用するSHOWA 製バランスフリーフロントフォーク。キャリパーはブレンボ
今回はデモ車のため、サスのカラーなどが市販品とは一部異なる。市販車として10R が唯一採用するSHOWA 製バランスフリーフロントフォーク。キャリパーはブレンボ

とにかく車体から伝わってくる情報が多く、かつその情報が正確なため、バイクとライダーの一体感は感動的とも言えるほど高まっていく。直接比較していないから何ともいえないが、シャシー&サスペンションというパッケージでは市販車の中でも群を抜いているとさえ思う。

さらに電子制御も猛烈に進化。トラコンは「5」でも加速する、きちんと使える機構で、身体とタイヤが温まっていくほどに「4」→「3」と弱めていくと、しっかりと加速力が強まっていくことを実感。

3方向の加速度と、ロールとピッチを検出するボッシュ製IMUが制御を大幅に進化させている。リヤタイヤのスライド量はもちろん、前輪のリフト量などを瞬時に検出し、強大なパワーを最大限の加速力に繋げている。

エンジンはレスポンスに優れ、スロットルワークで簡単に姿勢コントロールができる。旋回中のラインの自由度、そしてスロットルの開けやすさは飛躍的に高まっている。

リヤサスもカラーが異なる
リヤサスもカラーが異なる

これには15年モデルよりも15.8mmも伸びたスイングアームや新しいシャシーも貢献しているだろう。オートシフターの設定も抜群で、大パワーを途切れることなく路面へと伝え、加速中も安心感が高い。

高回転まで回して行くと、等間隔爆発の4気筒ならではのいかにも国産スーパースポーツという味わいに気持ちが高揚し、嬉しくなる。

WSBという世界最高峰の市販車レースではすでに実証済みだが、市販車でも“国産車の逆襲”という勢いを感じずにいられない。“乗りやすいバイクは速い”昔から言われていることだが、まさにそれを実証したような完成度だった。

これがWSBでの強さの片鱗なのかもしれない……気のせいかもしれないけれど、そんなカワサキのレース魂を感じられるのは、やはりファンには嬉しいことだ。

身体をホールドしやすいシート
身体をホールドしやすいシート

しかし……ニュー10Rの実力はこんなもんじゃない。今回の試乗は筑波1000だったため、全開で走らせると2速・160km/hぐらいまでしか届かないのだ。

もう少し暖かくなったら早々にリベンジさせていただき、その真価を確かめてみたい。ニュー10Rは、ライダーの気持ちをそんな風に昂らせてくれるバイクなのだ。

オリジナルカラーを纏えば自分だけの1 台が手に入る。MSL ゼファーで3 月13 日までの試乗商談会期間中にオーダーすると200ps化のECU チューンが無料となる! 今回のデモ車にはビート製のスリップオンマフラーを装着。もちろん車検対応品だ
オリジナルカラーを纏えば自分だけの1台が手に入る。MSL ゼファーで3 月13 日までの試乗商談会期間中にオーダーすると200ps化のECU チューンが無料となる! 今回のデモ車にはビート製のスリップオンマフラーを装着。もちろん車検対応品だ

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