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【Historic Bikes/KAWASAKI Ninja 150RR】白煙とオイルの香りに包まれる

※この記事はRIDERS CLUB 2016年 3月号に掲載された内容を再編集した内容です

フレキシブル、リニア、フラット……そのバイクの扱いやすさを表現する際、しばしば使われる表現である。とはいえ今どきのバイクに関して言えば、200㎰オーバーのエンジンを搭載しているモデルでさえ、神経質さはほぼ皆無。ごく一部を除いてはいずれもフレキシビリティーの塊と言っていいだろう。 

ところがわずか149㏄、29㎰に過ぎないこのバイクは違う。ひと度走り出せば、タコメーターの針を下げ過ぎないようにスロットルとクラッチワークに神経を使い、コーナー毎に、時にはコーナリング中でさえシフトをチェンジを要求。

'80年代から'90年代にかけて全盛を誇っていたミドルクラスの2ストロークマシン。軽く、コンパクトでハイパワーというライトウエイトスポーツの真髄に、もう1 度新車で触れられるとは思わなかった
’80年代から’90年代にかけて全盛を誇っていたミドルクラスの2ストロークマシン。軽く、コンパクトでハイパワーというライトウエイトスポーツの真髄に、もう1 度新車で触れられるとは思わなかった

どんな風にスロットルを開けても素直に追従してくれるバイクに慣れ過ぎた身ではなかなかスピードが維持できず、最初はそのピーキーさゆえに何度もパワーバンドを外してしまった。

そう、ピーキーやパワーバンドという言葉を使うこと自体が久しぶりだが、それを思い出させてくれたのがこのニンジャ150RRだ。わずかな台数ながらMSLゼファーがインドネシアで確保し、日本への導入に成功した、おそらく最後の2ストロークマシンである。 

それにしてもすべてが刺激的で、楽しい。チョークを引き、キックペダルを軽く踏み下ろすとクランクケースリードバルブの単気筒は「バロンッ」という乾いたサウンドとともに始動。

ブリッピングの度に周囲は白煙とオイルの香りに包まれる。2スト好きの心がくすぐられる瞬間だ

その直後はアイドリングを安定させるため、ブリッピングしながらの暖機を要すものの、40代半ば以上のライダーなら誰もがかつて経験した懐かしい時間に感じられるはずだ。

クラッチミートにはことさら気を使わず、スルッと走り出すことができるが、だからといっていきなり右手を大きくひねると回転がついてこない。

「パパパンッ」という爆発間隔の高まりを感じながらジワリと開け足していくと、ひと呼吸置いてからタコメーターの針が急上昇。7000回転を超えた領域からが真骨頂となる。

そこから12000回転の間では右手とエンジンが直結したかのような「パァァァーン」という快音を周囲に轟かせ、逆にちょっと操作をサボると「ンモォォォー」とレスポンスを失くす様は昔と変わらない2ストローク独特の世界であり、他には変え難い魅力だ。

そんなニンジャ150RRの仕上げが巧みなのは、ハンドリング自体は穏やかでニュートラルな旋回性が与えられている点にある。いたずらにシャープさを追求していないため、純粋にエンジンとのコミュニケーションを楽しむことに意識を集中させられるのだ。 

ライディングの満足感はパワーや装備、まして電子デバイスなどとは別のところにあることをこのバイクは教えてくれている。

KAWASAKI Ninja 150RR

スリムな車体は4 ストローク単気筒を搭載するNinja250SLとほぼ同格 
スリムな車体は4ストローク単気筒を搭載するNinja250SLとほぼ同格 
排気デバイスが装備され、実用的なトルクを発揮するエンジンは149㏄の水冷2ストローク単気筒。燃料供給はキャブレターだ(ミクニ製VM28) 
排気デバイスが装備され、実用的なトルクを発揮するエンジンは149㏄の水冷2ストローク単気筒。燃料供給はキャブレターだ(ミクニ製VM28) 
メーターは回転計を中央に置いた3眼式。200km/h のフルスケールを誇る
メーターは回転計を中央に置いた3眼式。200km/h のフルスケールを誇る
リヤサスペンションはシンプルなリンクレスタイプだがスポーティーな走りにも十分に対応。タイヤはIRCのNR82を装着
リヤサスペンションはシンプルなリンクレスタイプだがスポーティーな走りにも十分に対応。タイヤはIRCのNR82を装着
ブレーキはシングルのウエーブディスクと片押し式の2 ポットキャリパーを組合せる
ブレーキはシングルのウエーブディスクと片押し式の2 ポットキャリパーを組合せる

Ninja 150SS:より2ストらしさを求めるなら

一見、Ninja150RRのネイキッド版に思えるがフレームの違いでも分かる通り、ベースモデルは別モノ。エンジン特性も大きく異なり、パワーバンドに入った時の吹け上がりとレスポンスはよりシャープで、2 ストロークらしさはこちらの方が上回る。ハンドリングも軽快でフロントの舵角が明確。キビキビとメリハリのある走りを求めたいライダーにオススメしたい。

角断面のチューブラーフレームを持つスポーツネイキッド。車重は軽量なNinja150RRよりもさらに12㎏も軽く、18インチが採用されたリヤホールの効果も手伝って、シャープな旋回性を発揮する
角断面のチューブラーフレームを持つスポーツネイキッド。車重は軽量なNinja150RRよりもさらに12kgも軽く、18インチが採用されたリヤホールの効果も手伝って、シャープな旋回性を発揮する
エンジンのベースは150RRと同じながらこちらのキャブレターはケーヒン製PWL26。パワーバンドがより分かりやすくなっている
ディスクは一般的な円型。装着タイヤはIRCのNR25
エンジン水冷2ストローク単気筒
バルブ形式クランクケースリードバルブ
総排気量149㏄
ボア×ストローク59.0×54.4mm
圧縮比6.9対1
最高出力29㎰/11000rpm(27.9ps/10500rpm)
最大トルク2.0㎏f-m/9000rpm(2.0kgf-m/9500rpm)
変速機6速
クラッチ湿式多板
フレームダブルクレードル
タイヤF90/90-17(2.75-17)
R110/80-17(3.0-18)
ブレーキFシングルディスク
Rシングルディスク
ホイールベース1305(1335)mm
全長×全高×全幅1930×720×1095(1955×710×1035)mm
燃料タンク容量10.8L(8.2L)
価格53万9899円(45万3899円)<当時価格>
※( )内はNinja150SS

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