【Historic Bikes/KTM 1290 SUPER DUKE GT】GTの名にふさわしい快適性能
※この記事はRIDERS CLUB 2016年 6月号に掲載された内容を再編集した内容です。
ネイキッドマシン最速と噂されるビースト・スーパーデュークRをベースに充実のツーリング機能を装備したGTが登場した、それはアグレッシブさとジェントルさが共存した、欲張りなマシンとなっていた。
KTMの車両を見渡してみると、いわゆるツアラーと称されるようなマシンがラインナップにないことに気付く。
それはやはり、レディトゥレースをポリシーとするブランドだからなのかもしれない。
しかし、以前は990SMTというモデルがそのポジションにいたし、1290を筆頭としたアドベンチャーシリーズも、大まかなくくりでいえばツアラーといえるだろう。しかし、生粋のロードツアラーといったらどうだろうか……そんな中でGTが登場した。
GTは、KTMらしいスポーティーさと、真面目に作り込まれたツアラー性能を高次元でバランスさせることに成功しているマシンだ。
「ビースト」のニックネームで知られる1290スーパー・デュークRをベースとするGTは、そのキャラクターを受け継ぎつつも、新たな顔を見せる。
特に3段階で選べるライディングモードをスポーツに設定すれば、アグレッシブでスポーツマインド溢れるキャラクターが際立つ。そのままサーキットに持ち込んでも不満はないどころか、非常に速い。
一方で、ストリートやレインモードを選択すれば、エンジンフィールはぐっとジェントルになり、ビーストの名に感じるような攻撃的な衝動が収まり、逆に旅心が湧き上がってくる。
まさに、多様なシーンに対応できる柔軟さが魅力だ。
セミアクティブサスペンションも注目に値する。路面状況やライダーの気持ちに応じて3段階に切り替えられ、リアルタイムでダンピングが調整される。
例えば、コンフォートを選択すればダンピングは弱められ、ギャップの吸収性が高まる。それでいてブレーキング時にはアンチダイブが強めに働き、大きな姿勢変化を抑える。
一方で、スポーツを選択すればサスペンションにコシが出て、ハードな走りにも対応可能。それでいてしっかりとストロークし、積極的に姿勢変化を利用して旋回性を高めることができる。
欲張りなマシンはどこか中途半端になりがちな傾向もあるが、GTはその例外だ。どちらの性能も手抜きはなく、1台で2台分の楽しみを提供するマシンとして完成している。