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【カワサキ Ninja 1000SX】純正ならではのハイレベルなセッティング【中野真矢×平嶋夏海 インプレ】

スポーツ性に優れ、快適さにおいても高い評価を受けているNinja 1000SX。そのサスペンションを中野真矢さんと平嶋夏海さんがセッティング。サーキットを走り込み、サスペンションに手を加えることで、万能性が好評なモデルは、“攻めのマシン”へと変貌をみせるのか?

PHOTO/H.ORIHARA, S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン 
0120-400819 https://www.kawasaki-motors.com/ja-jp/
平嶋夏海
タレント、女優、グラビアアイドル他幅広く活動。バイク好きが高じて、バイク女子のアイコン的存在としてさまざまなメディアで活躍。YouTubeチャンネル「はしれ!なっちゃんねる」では、バイク動画を配信中
中野真矢
全日本GP250クラスチャンピオンを経て、WGP250、WGP500、MotoGP、SBKで活躍。豊富なレース経験を活かして、本誌メインテスターを務める他、幅広く活躍中。バイクライフスタイルブランド’56design代表

スポーツツアラーのアシを走りに振って煮詰めてみる

中野:今回、サスペンションを〝ととのえて〞みるバイクは人気のスポーツツーリングモデル、ニンジャ1000SXです。純正オプションでパニアケースが用意されていたり、公式サイトでもタンデム走行の写真が多く使われていたりと、ツーリングでのパフォーマンスを強く意識させるモデルですね。

平嶋:以前、サーキットで試乗した時、スゴく乗りやすいなと感じました。ツアラーと言いつつ、スポーツライディング性も重視したモデルですよね。リッタークラスですし、当然手に負えないくらい速いんですけど、扱いやすいという。

中野:やっぱりカワサキとしては、ニンジャのネーミングを与える以上、走りの面でも手を抜けないってことなんだろうね。メカニズムも豪華で、サスペンションのアジャスト機能も豊富。リアショックのプリロード調整なんか、油圧式のアジャスターが標準装備されてるほど。せっかくなので、ライダー個々のライディングスタイルに合わせてセッティングし直したら、さらに走りが楽しくなるのでは? という試みなワケなんだけど……。

平嶋:ある意味、ちょっと困っちゃいましたよね。スタンダードのセッティングが良過ぎて。

どこまでも攻め込めそうで底が見えないスタンダードのサスセッティングーー平嶋夏海
どこまでも攻め込めそうで底が見えないスタンダードのサスセッティングーー平嶋夏海

中野:そうなんだよね……。スタンダードセッティングで、ひとしきり走ってみて、正直なところ〝手を加える必要があるのかな?〞って、思ったね。

平嶋:そうなんですよ。私的には、マイナスが見つかりません。ストレートはビシッと直進してくれるし、ワイドコーナーでもタイトコーナーでも良く曲がります。ブレーキも安定しているし、私のレベルでは限界まで使い切れているわけでもないですし、純正状態でもなんの不満も感じませんね。

中野:うん。攻めるのもクルージングさせるのも、素晴らしく高い次元でまとまっているね。スポーツライディングでの限界も高いし、自分を抑えるのが大変なくらい。でも、もっと良くなるかも? という可能性はある。まずは、それぞれネガティブに感じた部分を捻り出してみた。僕は〝もっと攻めたい〞という時、具体的にはコーナーでもっと奥まで突っ込んでブレーキを強くかけたいって時に、姿勢変化が少し大きいかな? と感じたんだ。そういうシチュエーションでは、フロントフォークが少し動き過ぎる。

平嶋:まあ、中野さんレベルの話ですから、普通のライダーがそう感じるかは疑問が残りますけど(笑)。

中野:いやいや、僕だって捻り出したネガティブポイントだよ。平嶋さんは、どう?

平嶋:う〜ん……。私も〝捻り出した〞ネガティブポイントですけど、少しロードインフォメーションが希薄かなあ? と。流して走っている時は、むしろメリットなんですよ。走りも文句なく安定しているし、余計な情報が伝わってこない分、疲れません。ただ、攻める時って、路面がどういう状況だとか、どれだけグリップしているかとか、ハッキリ感じられた方が、安心じゃないですか? そこが不満といえば不満です。

ジムカーナに競技として取り組んでいる平嶋さんは、マシンの整備も多くの部分を自らの手で行っている。「メカに詳しいといえるレベルではありませんけど、ジムカーナの練習や大会では、基本的に自分でマシンの整備を行っています。もちろんサスペンション調整も自分でします」

中野:ロードインフォメーションの少なさは、僕も少し気になった。そうしたコメントを二人で出し合って、まずはセオリー通りにプリロードを強めて走ってみた。自分が気になった限界域でのフロントの動きすぎと、平嶋さんの言うロードインフォメーションの希薄さも、解消できるのではないか? と思ってね。

平嶋:ストリート向けのバイクでサーキットを走る時は、プリロードを強めると良い結果が出ることが多いですもんね。

中野:そう。実は僕も〝サスを固めればなんとかなる〞的な、発想があったりする。平嶋:中野さんでもですか?(笑)。

中野:いやいや、バカにしたもんじゃないんだよ。結構、経験則に基づいたものだったりするんだから。ニンジャ1000SXのプリロード調整範囲は、フロントが15段階、リアが48段階とかなり幅が広い。スタンダードセッティングはフロントが最弱から5段階強めたところ、リアが最弱から8段階強めたところだね。

「現役時代の僕は、症状やマシンの挙動を正確に伝えることだけを考えていて、サスペンションをどうアジャストするかはメカニックに任せていたので、サスに詳しいわけではないんですよ」と語る中野さんだが、数々のワークスマシンを仕上げ、勝利へと導いたセッティング能力は本物

平嶋:フロントもリアも、全体の調整幅の中でも、けっこうソフト目な設定なんですね。

中野:そうなんだよね。せっかくなので大きく変えてみようと、フロントは最弱から10段階強めて、リアは思い切って最弱から16段階強めてみた。

平嶋:倍です! 大胆!

中野:大きく振った方が、方向性が見えやすいからね。まあ、数字は単純に倍にしたんだけど、スタンダードセッティングがソフト目だし、大丈夫だろうという見込みもあったからね。

平嶋:このセット、私は嫌いじゃなかったですね。小さいコーナーで、よりコンパクトに回ってくれましたし、バンキングが速いんです。スッとマシンが寝てくれる。あと、ブレーキングも好印象でした。スタンダードではハードブレーキングの荷重を腕で受け止めている感じだったんですが、サスペンションが支えてくれるようでラクでした。

中野:ロードインフォメーションは増えた?

平嶋:はいっ! タイヤから〝これくらいならグリップしてますよ〞と伝わってくるようになりました。スタンダードは安定感が強くてソフトな分、どこまで攻めていけるか掴めない感じがありました。プリロードを強めたら、〝グリップしてるよー〞と、タイヤが伝えてくれる感じです。

中野:けっこう好印象だね。僕は正直なところ、今一つで……。フロントが入りにくくなった分、高さを感じて旋回力が弱まってしまった。

特にワイドなコーナーで向きが変わりにくくて……。ハードなブレーキングでは、リアがスネーキングを起こすようになったしね。

平嶋:中野さんの走り方に、動的なディメンションが合わなくなっちゃったんですね。

中野:そういうことだね。で、僕のリクエストで次はフロントのプリロードをスタンダード状態に戻し、ダンパーは伸側・圧側共に最強まで強め、リアのプリロードは少し弱めて、最弱から12段階強めてみた。これで、車体姿勢が決まったかな? コーナーでマシンが曲がるようになったから。仮にだけどレースをやるなら、このセッティングを選ぶね。

平嶋:確かに、コーナリングは良かったですね。コーナーをよりコンパクトに回れるようになりました。ただ、コーナー進入時のブレーキ時間が長くなった気がします。腕で支える感じはないんですけどね。

中野:ブレーキを強くかけられなくなったってことだね。平嶋さんと僕ではライディングスタイルも走行ペースも違うから、メリットに感じるところ、デメリットに感じるところが、それぞれ違って出たんだ。さっきも言ったように、レースをやるなら僕はこのセットを選ぶけど、総合的に考えた場合はデメリットもあるしね。

平嶋:走りの〝気持ちよさ〞ってコトを考えると、スタンダードのセッティングが良かった気がします。

中野:僕も同感。なので、最後にスタンダードセッティングに戻して、もう一度走ったら……。

平嶋:スゴく良かったです!(笑)無理なくラクに走れます。

中野:良かったね、コレは文句ないよ(笑)。セッティングを変えるとしたら、リアのプリロードを少し強めるくらいかな? それで十分。

平嶋:でも、面白いですね! セッティング変更で、走りのキャラクターが変わるのが私にもハッキリと体感できました。

中野:面白かったね。これほど変わるとは意外だった。しかし、攻める時は〝サスを固めればなんとかなる〞的概念が打ち砕かれたなあ。スタンダードセッティングのレベルの高さを思い知らされました(笑)。

今回のセッティングチャート

まず、中野さん平嶋さんの二人がスタンダードセッティングで走行。両者ともスタンダードセッティングを高評価したが、サーキットでのスポーツライディングということで、セオリー通りにプリロードを強めたCASE:1のセッティングを試した。

平嶋さんはロードインフォメーションの増加を評価したが、中野さんの走りには合わずCASE:2のセッティングへ変更。

スポーツライディングのみにフォーカスすれば好印象とのことだが、総合的にみた場合はスタンダードセッティングに軍配が上がるというのが二人の共通意見となった。

中野さんは体格や走行ペースによって、リアのプリロードを少し強めるのは有効だろうとコメント。調整しやすい部分なので、ぜひ試してみたい

KAWASAKI Ninja 1000SX

排気量1043cc、最高出力141psの強心臓を、強靭なアルミフレームに搭載。スポーツツーリングを謳うモデルだが、カワサキ・スポーツバイクの代名詞“Ninja”シリーズの名に恥じない、走行性能を備えている。充実した電子制御もポイントで、トラクションコントロールやパワー特性の選択が可能なライディングモード、電子制御式ABS。シフトアップ&ダウン対応のクイックシフターや電子制御式クルーズコントロールまで標準装備
排気量1043cc、最高出力141psの強心臓を、強靭なアルミフレームに搭載。スポーツツーリングを謳うモデルだが、カワサキ・スポーツバイクの代名詞“Ninja”シリーズの名に恥じない、走行性能を備えている。充実した電子制御もポイントで、トラクションコントロールやパワー特性の選択が可能なライディングモード、電子制御式ABS。シフトアップ&ダウン対応のクイックシフターや電子制御式クルーズコントロールまで標準装備
  • 水冷4ストローク直列4気筒4バルブ 
  • 総排気量1043cc 
  • 最高出力141ps/10000rpm
  • 最大トルク11.3kgf・m/8000rpm
  • シート高820mm
  • 車両重量236kg
  • 燃料タンク容量19ℓ
  • 価格159万5000円
フロントフォークのプリロードと伸側ダンパーのアジャスターは、左右のフォークトップキャップに設けられる。調整範囲は無段階で、プリロードは15回転。伸側ダンパーは3と1/2回転。調整時には各アジャスターを回転させる工具が必要
フロントフォークのプリロードと伸側ダンパーのアジャスターは、左右のフォークトップキャップに設けられる。調整範囲は無段階で、プリロードは15回転。伸側ダンパーは3と1/2回転。調整時には各アジャスターを回転させる工具が必要
フロントフォークの圧側ダンパーアジャスターは、右側のフロントフォークにのみ装備。調整範囲は無段階で3回転の調節ができる
フロントフォークの圧側ダンパーアジャスターは、右側のフロントフォークにのみ装備。調整範囲は無段階で3回転の調節ができる
リアショックのプリロード調整は油圧式アジャスターを標準装備。工具不要でプリロード調整が可能。調整範囲は40クリックと広い
リアショックのプリロード調整は油圧式アジャスターを標準装備。工具不要でプリロード調整が可能。調整範囲は40クリックと広い
リアショックのダンパーは伸側のみ調整機構を装備。調整範囲は無段階で2と1/2回転。調整時にはマイナスドライバーが必要
リアショックのダンパーは伸側のみ調整機構を装備。調整範囲は無段階で2と1/2回転。調整時にはマイナスドライバーが必要

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