【カワサキ メグロS1/W230 & KLX230 S/シェルパ】1つのルーツ、2つの個性

カワサキから待望の空冷単気筒232ccモデルが発表された。しかも、4台同時に。いま人気の高いネオクラシックと、登場が願われてきたデュアルパーパス。注目度が高いのは当然だが、この4台にはニューモデルというだけでないバリューがある。バイクに対する、メーカーの真摯な取り組み方が感じ取れるのだ。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA,S.KAWAMURA
取材協力/カワサキモータースジャパン 70120-400819
https://www.kawasaki-motors.com/
妥協のない作り込みから伝わる本気度の高さ
このたび、カワサキから4台のニューモデルが発表された。同社の軽二輪クラスのネオクラシックとしては、久々のラインナップとなるメグロS1とW230。競技を意識せず手軽に楽しめるデュアルパーパスのKLX230シェルパとKLX230/Sだ。
メグロとWの違いだが、機能面での差異はない。塗装やグラフィックほかの意匠が異なり、メグロらしいプレミア感を演出。シェルパもベースとなったKLXと機能面はほぼ共通だが、エクステリアの変更に加えてスタックハンドルやハンドルガードを標準装備するなど、荒地に分け入るバイクのイメージが与えられた。
この4モデルは、エンジンの基本設計を共有している。軽二輪クラスはエントリーユーザーの最初の1台であったり、シティコミューターとして日常のアシに使い倒されることも少なくないカテゴリー。無理なく購入できる価格であることも、車両のコンセプトの重要な要素だ。コスト面から、パワーユニットを既存の他機種から流用することは、当たり前の手法として行われてきた。
だが、この4モデルに関しては、ありがちな兄弟車というには、いろいろと手がかけられている。

まずシリンダーヘッド。ベースモデルとなったKLX230系の232ccの空冷単気筒エンジンは、排気ポートが車体の左側に設けられている。だが、メグロとWの排気ポートは右側。つまりシリンダーヘッドは新設計されていることになる。
そしてクランクケース。それぞれにマッチする走りのキャラクターを作り出すため、メグロ/WとKLX系では圧縮比が異なる。少しエンジンの知識があれば、ピストンか燃焼室の形状を変えたのではと想像するかもしれないが、なんとクランクケースのハイトを変えるという、コストのかかる手法が取られているのだ。
エンジンの構成部品で、シリンダーヘッドやクランクケースという大物パーツは、鋳造でおおまかな形を作り、加工を施して完成する。この鋳造に必要な金型の製造には、莫大なコストがかかる。それでもカワサキはメグロ/WとKLX系のエンジンを大きく造り変えてきた。モデルごとに最適なエンジンを造る。妥協を許さない、カワサキのポリシーを感じる。

ちなみにミッションは、ドリブンスプロケットで変更可能な二次減速比を除いて共通。ピストンやクランクシャフトなども共通品であるとのこと。変える必要は何もないとの判断と考えられる。よりコストのかかる部品を新造するカワサキだ。信用できる。
この4台からは、エントリーモデルを軽視するような空気は感じられない。小さくてもバカになどできない本格派。手元に置きたくなる、魅力的なニューモデルたちだ。