【國井勇輝|イデミツ・ホンダ・チームアジア】”4年前とは考え方が変わった”【2025 MotoGP & Moto2 ライダーインタビュー】
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PHOTO/KUSHITANI, 2025 TRACKHOUSE MOTOGP TEAM,
MotoGP.com, Honda Team Asia 2024, Honda
TEXT/E.ITO
取材協力/クシタニ TEL053-441-2516 https://www.kushitani.co.jp/
全日本ロードでの戦いがもたらした成長
2021年、國井勇輝は世界選手権のシートを失った。目指していたのは、世界最高峰のMotoGPチャンピオン。しかし、世界で戦う場を失い、どうしたらいいのかわからなくなった。
「ある意味、挫折をした。本当に苦しかったし、悔しかったです」
バイクをやめようか、という考えも頭をよぎる。迷っていたときに声をかけたのが、SDGチームハルク・プロの本田重樹会長だった。
「もう一度、自分と世界を目指してやらないか」
國井の中で、世界選手権に悔いが残っていた。あきらめられなかった。
「もう一度、一緒にやらせてください」
翌年から国内の全日本ロードレース選手権に参戦した國井は、2024年、全日本ST1000とアジアロードレース選手権ASB1000でチャンピオンを獲得。今季、二つのタイトルを手に、再び世界選手権への挑戦を果たす。
國井は4年前よりも、レースに対する取り組み方、考え方が変わった、と言う。
「当時はただ『速く走りたい。なんで速く走れないんだろう』、そういうアバウトな考え方で乗っていたんです。
でも、レースをしていくうちに、『もっと速く走るためには、どうすればいいのかな』と考え始めたんですね。そして、『取り組み方をもっと変えないとだめだな』と気が付いたんです。
誰かに何か言われたり、大きなきっかけがあったわけではないんですが、レースをしながらいろいろな人の話を聞いて、いろいろな考え方があるんだなと思ったんですね。そういう環境でレースをしているうちに、『もっと考えないとだめなのかな』と思うようになりました。
『自分のベストを、どうやったら出せるんだろう』『何が違うんだろう』と、どんどん考えるようになったんです。
以前は行き当たりばったりでしたが、ちゃんと逆算することを考え始めました。それが、当時と今の、最も大きな違いじゃないかなと思いますね」
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國井にインタビューしたのは、2021年の夏以来だ。そのとき、Moto3で戦っていた國井は、苦しんでいる最中だった。それから4年。この日向かい合った國井は、そのときとは全く違う表情をしていた。自信が、漂っていた。その印象を抱かせたのは、3年半という年月だけではないはずだ。
表情に自信が浮かんでいますね、と伝えると、國井は照れたように「そう……ですかね?」と笑顔を浮かべた。その愛嬌のある笑みは変わらない。
「頑張ってきた努力が結果に表れると、すごく自信につながりました。こういう気持ちで、世界選手権で戦えるのは僕としても楽しみです」
再びつかんだ世界のシート。裏を返せば、もう後はない。今季に向けて、國井はこう語る。
「2024年、あきらめなければ最後に絶対にチャンスがあると思っていたので、このチャンスを逃さないよう、あきらめないで悔いがないようにレースをしたいです」
それから、「あと、楽しんでやりたいです」と付け加える。それもまた、4年前にはなかったものなのだろう。
新生・國井勇輝の二度目の世界への挑戦が幕を開ける。