中須賀克行 通算JSB100勝へのカウントダウン|結実した3年目のチャンピオン獲得【百”勝”錬磨】

JSB1000で通算100勝に迫る中須賀克行だが、もうひとつの偉大な記録が通算12回のチャンピオン獲得だ。JSB1000参戦は2005年からだが、ヤマハのトップチームYSP&PRESTOレーシングに移籍した2006年から数えると、2024年で19年目のシーズンを終えたことになる。チャンピオン獲得率が60%を超える誰もが認めるレジェンドライダーの、最初のチャンピオン獲得は2008年だった。
【中須賀克行|Katsuyuki Nakasuga】

PHOTO/YAMAHA TEXT/M.SAKUMA
取材協力/ヤマハ発動機
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スタートダッシュが勝利への方程式
’06年にヤマハのトップチームに加わった中須賀は、チームと、そしてアドバイザーの吉川和多留と二人三脚で歩みをはじめると、’07年のオートポリスで初優勝を決め、岡山国際で2勝目を記録。そして、吉川とチャンピオンを獲ると約束した3年目の’08年、いよいよ中須賀は全日本ロードレースの頂点に上り詰めた。
この年の好調の兆しは、開幕戦のもてぎにあった。フロントロウの3番手からロケットスタートを決めると、ホールショットを奪ってレースの主導権を握り、優勝したのだ。
当時、中須賀と吉川は、マシンの戦闘力と中須賀自身のパフォーマンスを徹底的に分析した。そして導き出したひとつの戦略が、スタートダッシュからトップに立ってレースをコントロールしていく、というものだった。この戦略が具現化したのが、もてぎだったのである。
2008年 初チャンピオン
年間2勝(第1戦もてぎ/第2戦筑波)
Nakasuga’s Comment
「レースウイークに入る前、マシンを速く走らせるイメージができずに眠れない日々が続きました。レース1での3位は納得でしたが、レース2ではレース中盤で集中力を欠いてしまって、それが転倒につながりました。転倒した瞬間は、チャンピオンは遠のいたと思いましたが、マシンを確認したら、右側ステップが折れていたけれど走らせられる状態で、何としてでもあと7周を走り切ると集中しました。転倒からレース復帰できたのは、応援してくれる多くの方々の後押しがあったからと実感しています」(第6戦岡山国際にて)


それは、続く筑波でも発揮された。予選結果はセカンドロウの4番手ながら、ここでも抜群のスタートを見せ、1コーナーまでの短い区間でトップに立つと、ホールショットを奪いレースをコントロールしていく。そして同年2勝目、クラス通算4勝目をマークした。
現在でも中須賀の卓越したクラッチミートは有名だが、それはこの時代に、勝つために身につけたものと言っていい。
しかし、この戦略が裏目に出たのが同年のSUGOだった。ウエットコンディションのなか、3列目7番手グリッドからホールショットを決め、オープニングラップをトップで戻るが、2周目のハイポイントコーナーで転倒しノーポイント。これでポイントリーダーからランキング3位へと陥落した。
しかし、続く鈴鹿のレース1、レース2の両レースで2位に入るとポイントリーダーへと復帰。最終戦を前にランキング2位の大崎誠之に18ポイント差をつけた。
最終戦の岡山国際は、レース1、レース2ともにウエットコンディション。そのレース1で中須賀は3位となり、初チャンピオンをグッと手繰り寄せた。しかしレース2では、痛恨の転倒。

マシン右側のステップが折れていたが、かまわず再スタートすると、残り7周を集中して走り切り6位でチェッカーを受けた。
ところがライバルもアクシデントに見舞われており、結果、中須賀の初Vが決定した。
’09年は最終戦の逆転で2年連続王者に輝く
翌’09年シーズンはチーム名がYSPレーシングチームへと変更され、ゼッケン1で臨んだ。しかし開幕戦筑波は、スタート直後の第1ヘアピンでの多重クラッシュに巻き込まれてノーポイントとなってしまった。
この年の初優勝は、第4戦SUGO。ドライコンディションで始まった決勝だが、途中から雨が降りはじめ、トップを走行していた中須賀は、何度かハイサイド気味に振られる我慢のレースだった。
しかし雨が降ると察知しており、いつ中止になってもいいようにトップを堅守する作戦で、この勝利への執念が実を結ぶ。雨のために途中でセーフティーカーが入り、その後にレース中止を示す赤旗が提示され、同時にレースは成立。中須賀がシーズン初勝利を手にした。
2009年 2年連続チャンピオン
年間2勝(第4戦SUGO/第7戦鈴鹿レース1)
Nakasuga’s Comment
「今年はマシンが新型になり、ポテンシャルが高いと実感できていましたが、それを引き出すこと、乗りこなすことに苦労してしまいました。昨年は2勝でチャンピオンになっているので、今年は何としてでも3勝以上でチャンピオンを目指していたので心残りですが、連覇できたのは本当にうれしいし、応援してくれるみなさんの喜ぶ姿が見られるのは最高です」(第7戦鈴鹿にて)


中須賀はこの年、最終戦を迎えるまで一度もポイントリーダーに立っていない。東コースで行われた最終戦鈴鹿のレース1で今季2勝目を記録するが、ランキングは酒井大作に次ぐ2位。しかし、その差を4ポイントにまで縮めており、レース2がチャンピオン決定戦となった。
そしてウエットコンディションとなったレース2で、酒井は伊藤真一と接触して転倒。この結果、2位でチェッカーを受けた中須賀が、大逆転で2年連続チャンピオンに輝いたのである。