DUCATI PANIGALEパニガーレ V4 S 華麗なる変身①
常に新しいことにチャレンジするドゥカティ流のアプローチ DUCATI PANIGALE V4 S
2018年はドゥカティにとって歴史的な年になる。パニガーレV4に試乗してそれを強く感じた。スーパーバイクシリーズのフラッグシップは、伝統のLツインではなくV4エンジンを搭載。それはドゥカティにしかできない完成度で、V4になってもドゥカティらしさは健在だったのだ。独創的な車体構成や目の覚めるようなパフォーマンスの数々……ヴァレンシアサーキットで開催された試乗会の模様をお届けしよう!

その衝撃は〝驚き?という言葉を何度使っても表現できないほど大きかった。パニガーレV4は国産車とは別の次元に飛び込んでおり、何にも似ていない新しさと想像を超越するポテンシャルは、これまでLツインで展開してきたドゥカティの歴史が大きく変わることを示している。その新しい挑戦は、すでに成功したといっていいだろう。これがパニガーレV4に試乗した率直な感想だ。
71年に750GTでLツインエンジンを採用して以来、市販車にLツインを搭載。それを大切に育んできたドゥカティは、世界GPが2ストロークのWGPから4ストロークのモトGPに移行する03年のモトGP参戦時、L4エンジンを搭載したモトGPマシン「デスモセディチGP」をデビューさせた。日本メーカーに真っ向勝負を仕掛け、いまや日本メーカーと互角で戦うモトGPシーンはお馴染みの光景だ。

ちなみに07年に登場したモトGPレプリカであるデスモセディチRRは、今回のパニガーレV4と同じエンジン形式を採用。しかし、スペックにはL4と明記されており、今回からスペックは車名の通りV4になった。あえてV4と表記したのはエンジン搭載角が起きたこともあるが、ここからドゥカティの新しい時代がスタートすることを誇示する。ちなみにVバンクの挟み角はもちろん90度だし、爆発間隔もモトGPマシンであるデスモセディチと同じだ。
昨年のミラノショーで発表されそこでもっとも美しいバイクにも選ばれたパニガーレV4は、WSBのレギュレーションである〝4気筒は1000㏄?という排気量の縛りを解き、1103㏄にして高スペックと実用性を両立。他メーカーが200?の壁を必死で越えてきたのに対し、排気量を増やすことで214?を達成した。確かにスーパースポーツを趣味で乗るライダーにとって1000㏄という縛りはあまり意味を持たない……。

デスモドローミックを採用するMotoGP直系のV4エンジン DUCATI PANIGALE V4 S
ドゥカティのV4プロジェクトは、まずはモトGPとストリートモデルで成功を収め、その間に1000㏄のRスペックを開発。そして19年から満を持してWSBに挑んでいくという構想だろう。
パニガーレV4にモトGPで培われた技術が投入されているのは想像に難くない。15年にドゥカティのワークスチームであるドゥカティコルセにゼネラルマネージャーとしてジジ・ダリーニャが参画したのはファンならご存知だと思うが、実はここからモトGPマシンのエンジンも逆回転クランクを採用している。
その後、ドゥカティコルセは急成長を遂げ、昨年のタイトル争いは最終戦まで続いたわけだが、この15年の時点で市販車であるパニガーレV4のプロジェクトもスタート。逆回転クランクを持つV4エンジンはドゥカティコルセと技術を共有しながら開発が進められた。
また、ドゥカティはモトGPマシンの中で唯一バルブ機構にニューマチックバルブを使用していないメーカーだ。市販車同様にバルブ周りは伝統のデスモドローミックを採用している。他メーカーは圧縮空気を使うニューマチックバルブを使用しないと高回転でバルブ開閉の動きを追従させられないのだが、ドゥカティはデスモドローミックを進化させながら直線での速さを見事に披露。ちなみにエアの管理やコスト面からニューマチックバルブが市販車に投入されることはないだろう。


フロントフレームは重量わずか4kg!?
パニガーレV4はシャシーデザインも独創的だ。フロントフレームと呼ばれる4㎏しかないメインフレームは伝統のピボットレスで、V4エンジンにマウント。スイングアームピボット、そしてリヤサスやリンクまでもがエンジンにボルトでマウントされているのである。エンジンはアルミツインスパーフレームに搭載して……他メーカーにありがちなそんな常識はドゥカティには通用しない。そもそもフレームの剛性バランスにあまりこだわらないのは初代パニガーレからの思想で、ディメンションを追求することでハンドリングを仕上げていく手法だ。
さらにスタイリングの要となるデザインも面白い。実車を見ると写真よりも凝ったディテールが目に飛び込んでくる。パニガーレV4のSモデルは造形の細かさが際立ち、それは鍛え抜かれたアスリートのようだ。
ダブルカウルにしてスリムな車体に仕上げているサイドカウルや、エアダクトを大きくとっているように見えるフロントカウル、さらに軽快感を演出するリヤセクションなど、デザインへのこだわりは素晴らしい。大人の所有欲を満たすために、ドゥカティは昔からグラフィック前提でなく、バイクの〝面?を大切にしたデザインにこだわっている。
速さを追求しつつも美しさやカッコよさにも妥協せず、すべてを磨きあげてオリジナリティを追求しているのが伝わってくる。バイク好きの誰もが見入ってしまう新しいディテールを見ていると、多気筒エンジンを独自のアプローチですでに自分達のモノにしている、と思わせる。

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