DUCATI PANIGALEパニガーレ V4 S 華麗なる変身②
近年のドゥカティについて語るうえで、避けて通ることのできないモデルといえば、やはり18年のパニガーレV4のデビューだろう。伝統のLツインをさらに進化させつつ、ドゥカティらしさをそのままに兼ね備えた、まさに革新的なモデルだった。今回は、ライダースクラブから当時の衝撃をワールドローンチの試乗会を通してお届けする。※2回目/全3回掲載予定
DUCATI PANIGALE V4 S 華麗なる変身②
2018年はドゥカティにとって歴史的な年になる。パニガーレV4に試乗してそれを強く感じた。スーパーバイクシリーズのフラッグシップは、伝統のLツインではなくV4エンジンを搭載。それはドゥカティにしかできない完成度で、V4になってもドゥカティらしさは健在だったのだ。独創的な車体構成や目の覚めるようなパフォーマンスの数々……。ヴァレンシアサーキットで開催された試乗会の模様をお届けしよう!エンジンをフレームの一部と考え部品点数を極力減らす DUCATI PANIGALE V4 S
スペインのヴァレンシアサーキットで開催されたワールドローンチに参加させていただき、そのプレミアムな世界を堪能してきた。冒頭に記したように今回の試乗会では衝撃の波が次々と押し寄せ、完全に圧倒されてしまった。それは僕だけでなく、その場にいた世界中のテスターが驚きを隠せない様子だった。 実はこの日の朝はサーキット全面が霧に覆われており、とても寒かった。ピットからほぼ全周を見渡せるはずのコースがまるで見えない。そんな中ウオームアップが開始されるが、先導ライダーが危険と判断して1周でピットイン……それにもかかわらず、パニガーレV4のフィーリングはとても良かった。 低中速域のスロットル開け始めの穏やかさとしなやかなハンドリングは、かつてのドゥカティにはない味付けで馴染みやすい。神経質な一面や硬さは徹底して排除され、エンジンはスムーズでハンドドリングはとても軽いのだ。そして電子制御サスペンションはゆっくり走っている時もとてもよく動いていた。 ポジションはLツインエンジンよりもハイトと幅のあるV4エンジンにより、腰高になっている。Lツインパニガーレよりも少し大柄で、シート幅もあるため、身長165㎝の僕には足着き性も少し厳しい。跨ったままスタンドをしまうのはギリギリできるが、スタンドをしまってから跨るのが賢明だ。発進停止以外でクラッチレバーの操作は不要!
ライディングモードはストリート、スポーツ、サーキットの3種類。これまでと同様、モードによってトラクションコントロールやABSの介入度が変化する。そしてアップ&ダウン対応のクイックシフトも装備。発進&停止時以外でクラッチレバーに触れる必要はない。 天候が回復し、ウオームアップが再開。スポーツモードで走り出す。レブリミットは14500rpm(6速はなんと15000rpm!)に設定される超高回転型のエンジンにもかかわらず、どのギヤでも5000?8000rpmくらいの中速域が扱いやすく、しかもスロットル開け始めの過渡特性が見事につくり込まれている。そこにV4ならではの不等間隔爆発のパルス感が加わり、それが心地よさとしてプラスされる。スロットルと後輪が直結したようなトラクションのつくりやすさは特筆で、その感覚はある意味Lツインにも似た鼓動だ。しかし、Lツインにあるギクシャク感はなく全体的に角を落とした優しいフィーリングを持っている。 [caption id="attachment_497929" align="alignnone" width="900"] エンジンにフレームはもちろんリヤサスペンションやスイングアームピボットをボルトオンするシャシー構成。Lツイン時代よりもさらにシンプルな構成だが、整備する際はパズルのように組み合わせないといけないため大変そう。フレームの上部に見えるのはリチウムイオンバッテリー。ストリップを見ると分かるが、もはや燃料タンク部分はエアボックスが大半を占めており、燃料タンクはシート下となる。これもマスの集中に貢献するディテールだ[/caption] そして10000rpmを超えたあたりで表情は一変。そこからは4気筒特有の怒涛の加速が始まる。それは、これまでのスーパースポーツからは感じたことのないほどの加速だ。10000rpmから13000rpmの吹け上がりは一瞬。そこからさらに1500rpmも回るのか!それは1103㏄の大排気量を忘れさせるレスポンスだ。まだスポーツモードなのに……目が付いて行かない。 2本目はスタッフが「レースモードだからね」と言ってバイクを渡してくれたがスポーツモードで走行。心して挑まないとちょっとヤバい……そう思わせる加速だった。 基本的にエンジンはあまり回さずに中速重視でつないでいく。高めのギヤでパーシャルは使わず、スロットルは全閉か全開。そんな走りを心がける。最初は曲がりすぎるほど軽いと思ったハンドリングだが、慣れていくと気持ちがいいほど理想的なラインを描くことができる。そしてほぼすべてのシチュエーションで効いているはずの電子制御も過剰なアピールをせず、ライダーをサポートし続けてくれる。 慣れてきたところで直線は全開にしてみる。するとそれほどウィリーをしようとせず、少しだけフロントを揺らしながら、タコメーターの針は急上昇していく。オートシフターを使ってスロットルは全開のまま13000rpmを目処にシフトペダルを上げていく。 さらに数周を重ね、レースモードに切り替えてみた。エンジンのレスポンスが向上するだけでなく、ABSがフロントのみになり、トラクションコントロールの介入度は5から3になりサスペンションの減衰力なども変更される。