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【KAWASAKI】204psを路面に伝える!世界でイチバン強いSS市販車Ninja ZX-10RR②

今回は最新のカワサキSSモデルNinja ZX-10RRに迫る。WSBで4連覇を遂げている「市販車最強」マシンの魅力を4回にわたりお届けしている。本稿では、’18年9月に行われた、’19年モデルの新型発表での試乗の模様から、その開発陣たちの熱き想いを紹介していく。

204ps をいかに路面に伝えるか そのために過渡特性を追求する ここ数年、毎年のようにWSBで勝つための進化を繰り返しているNinja ZX-10RR。今シーズン、Ninja ZX-10RRはWSBでは厳しい回転制限を受けつつも、圧倒的な強さを発揮している ’19年型のNinja ZX-10RRは、さらなる強さを誇示するためエンジン内部を大幅に変更、 そしてそれは、一般のライダーも恩恵を受けられるバランス追求の極みといえる進化だった。

KAWASAKI|カワサキ|Ninja|ニンジャ|ZX-10RR|ZX-10R

新型NinjaZX-10RRのひとつの使命は、市販状態で少しでもレブリミットを上げることだった。結果、レブリミットは、昨年比で600回転も高い、1万4400rpmに引き上げることに成功した。現行のWSBレーサーよ りもレブリミットが高いのだ。そのためのフィンガーフォロワーシステ ムであり、プロファイルをアグレッシブにしたカムシャフトなのである。

チタン製コンロッドは実はトラク ションのために採用。単純にクランクのイナーシャを軽くするだけでは 後輪がスピニングしてしまうため、 コンロッドにも手を加えている。こうすることで、グリップできる範囲の回転を引き上げることができるのだという。

スロットルを開けた瞬間 にスピニングせずにグリップする回 転数の許容範囲が増えたことで、 新型 Ninja ZX-10RRはどこから開けても スピニングやウイリーしようとせず に加速していくのである。

写真上:フロントフォークはショー ワ製のバランス・フリー・フロン トフォーク。キャリパーはブレン ボ製のモノブロック。ディスクロ ーターもブレンボ製でφ330mm と大径。写真上:ホイールは昨年からマ ルケジーニ製のアルミ鍛造。
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写真上:ステアリングダンパーは電子制御式のオーリンズ製。204ps のエンジンを安定した加速に繋げる。写真下:リヤサスはショーワ製のバランス・ フリー・リヤ・クッション。前後 サスペンションは減衰が効いてい てもよく動く設定で、とくに荷重 が高まった際の奥の動きが秀逸。 車体のピッチングは大きくないが、 ピッチングモーションはしっかりと感じられる味付けを施す。アジ ャスト範囲も広く、ハイグリップ タイヤもきちんと許容してくれる

リヤのトラクションとグリップが 良くなると、おのずとフロントのグリップも得られ、サスペンションの アジャスト範囲でもっとハンドリン グを良くできるようになったという。

もちろんジャイロも減るためハンドリングも軽くなる。今回の試乗用 にセットアップされた車体は、リヤタイヤはレース用でOEMよりも外 径が大きいし、サスペンションもサ ーキット用にセットされていたため、僕が乗ったことのあるNinjaZX-10Rの中でもっとも前下がりな姿勢だったはずだ。

それでも安心感が高かったのは 常にリヤのトラクションがあるのと、減速時に前輪に必要以上の荷重が乗 らなかったからだ。チタンコンロッドがハンドリングを良くする……なかなか想像がつかないが、それはNinja ZX-10RRの進化で、最初に体感 できる効果だった。

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10Rシリーズの中で、もっとも勝つための装備が与えられたRRの称号はやはり特別だ。エンジンのサイドにも専用のエンブレムが入るシフターは アップ&ダウンに対応
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もはやスーパースポーツの常識になったアップ&ダウン対応の シフター。旋回中も使える精度 で、トラクションを途切れさせずに最大効率で曲がれる

常にリヤのトラクションが豊富で、リヤ荷重が強いというだけで安心感 が違う。スロットルを開けた際の挙 動が穏やかなため正直パワー感はないのだが、だからこそ安心してスロットルを大きく開けていける。
スロットルを開けた際の電子制御 も緻密だ。後輪を空転させず、車体をウイリーさせずにどこまでも加速 する。ストレートでは1万4000回転を超えたところでシフトアップ。 オートシフターを使うため、スロッ トルは全開のままシフトペダルを上 げる。電子制御式のステアリングダ ンパーも貢献。車体の挙動はとても 安定している。

エンジンは204psだからよく伸びるが、意外にもレスポンスは鋭く感じないので、気が付くととんでもない速度に到達しているようなイメージ。Ninja ZX-10RRにはどこにも唐突なところや過敏なところがない。エンジンや制御も突き詰めていくことでこれほどバイクの印象が変わるのか……、目には見えない電子制御だが、その制御の緻密さはクラス随一。これこそWSB直系のテクノロジーで、WSB3連覇の貫録を感じさせる。

昨年までのNinja ZX-10RRも電子制御の完成度は高かったが、それを何倍も緻密にしている。制御がライダーの走りに大きく関与しているのは事実だが、そこに嫌味な感じは皆無で、もはや制御なしでは走れない、と思わせる完璧なサポートだ。

試乗車のサスペンションはOEMより硬めの設定とのことだがそれでもよく動いていることを実感でき、これも馴染みやすさに貢献している。

NinjaZX-10Rに携わり続ける プロ集団が勝つためにその素性を磨き込む

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開発陣からこれからもWSBで勝ち続ける意気込みを感じた今回の試乗会。下は’09年のハヤテレーシング。MotoGP時代に培った技術で、市販車に投入すべきものはまだまだたくさんある!


今回の試乗会には10Rシリーズの開発メンバーも多数参加していた。そこで強く感じたのは、カワサキはモトGP時代の資産をフル活用している、ということだ。プロジェクトリーダーの東誠治さんは新卒で入社して早々にモトGPメンバーに抜擢され、その後はNinja ZX‐10RRを任されている。

テスト部隊も含め、多くのメンバーがZX‐RRやハヤテレーシングの開発を手掛けてきた。確かにあの時代の当事者達は苦しかったはずだ。組織としては他の国産メーカーと比べると少ない人数かもしれないが、だからこそ何倍も考え、物を生み出す。そして苦しい時代を分かち合ったからこそ特別な一体感が生まれ、組織としての強さに結びついている。

僕はプロライダーではない。しかし、その進化は走り出してすぐに分かった。速さや凄さはここまで分かりやすくなってきたのだ。新型Ninja ZX-10Rはとても素直で、少し前のZX-10Rはまるで暴れ馬を乗りこなしているような感覚だったが、電子制御や車体バランスがどんどんハイパフォーマンスを身近にしてくれている。

これ以上、どう進化するのか――新しいスーパースポーツに乗る度にそう思うが、メーカーは威信をかけて我々の想像を遥かに超えたところで勝負してきてくれる。だから面白い。新型Ninja ZX-10RRでカワサキの本気、レイ選手のスイートスポットに入っている車体バランスを知ることのできる500人は、本当に幸運だ。

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