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【KAWASAKI】スペシャルインタビュー!マーケットに新たな価値を生む『勝利の方程式』

誰もが諦めてしまった忘れ去られたマーケットに新しい価値観を持ち込む。これがカワサキの勝利の方程式 昨年末から続くカワサキの快進撃が止まらない 大型バイクの販売台数で国内シェアトップを獲得し、Z900RS、ニンジャ400Rと、発売するモデルがすべて大当たり。また、新たなる販売ネットワークも徐々に出店ペースが上がってきた。すべての歯車がかみ合っているようなカワサキのいまを聞いた。(インタビューはライダースクラブ2018年11月号に掲載したものです)

今回は最新のカワサキSSモデルNinja ZX-10RRに迫った連載の最終回。WSBで3連覇を遂げている「市販車最強」マシンの魅力を、最新技術、開発陣、ライダーであるジョナサン・レイのコメントなどを掲載してきた。

今回はいよいよ最終回としてカワサキの今後の戦略と展開に迫る。カワサキプラザの展開とラインナップ分け、大型バイクでトップシェアとなる展開を聞いてみた。

カワサキモータースジャパン 代表取締役社長 寺西 猛(てらにしたけし)さん大学卒業後、伊藤忠商事に入社して四輪の輸出業務に従事した後、伊藤忠商事が経営するカワサキモーターフランスに赴任。その後、川崎重工が欧州の卸会社を直営化する際に川崎重工に転社。以後、イタリア、アメリカのカワサキ販売会社の社長を務め2014年に帰国して現職

401㏄以上、つまり大型バイクの国内販売シェアで現在、カワサキはトップに立っている。 しかも、2017年12月にシェアトップ( 25.5%)を記録すると、17年度の累計シェアも1位、2018年度も7月時点までトップの座をキープしているのである。

この事実は、新しい販売チャンネルであるカワサキプラザの構想を2016年11月に発表し、続いてプラザ政策のリードオフマン的モデルのZ900RSを2017年10月に発表、12月に発売という戦略が見事に功を奏していることの証明である。

ただ、カワサキがこのクラスのトップシェアを取ると目標を掲げたのは2020年までにであり、カワサキプラザが120店になった時を想定してのことだった。つまり、想定時期より大幅に前倒ししてトップシェアを獲得したわけだ。

価格に見合ったサービスを提供していく

統一された内外観、ゆったりした新車展示スペース、アクセサリー&アパレルコーナーも広々としている。写真右は、プラザのコンセプトを明確にするために作られた3Dのミニュチュアで、家一軒が建つほどのコストがかかっている

「ちょっとトップを取るのが早すぎてしまったもので、困っています。トップになったらそれを維持しなくてはいけませんからね。新製品の開発って数年前からプログラムが決まっちゃっているので、急に追加することはできません。新製品の投入計画は、当初の目標だった2020年まで固まっている中で、トップシェアだけ先に取れてしまった。

ですから、あとは他社さんとの競争でどこまで頑張れるかです。新車効果で売れる台数は一定量ありますけど、持続的成長を続けるには継続モデルをどうやって購入していただくか。そこのビジネスモデルを確立しようとしています」

モノ(商品)だけでは維持継続が難しいとなると、やはり販売店の力がキーポイントになってくるはずだ。

「私は20年以上、ヨーロッパとアメリカで、販売の最前線で仕事をしてきまして、いろいろな販売店さんを見てきました。そして、2014年に日本に戻ってきて、日本の販売店さんを見たところ、昔とまったく変わっていないことに気づいたんです。 バイクをちゃんとディスプレイしているお店ももちろんありますが、店内にバイクをギュウギュウ詰めにしているスタイルのお店が相変わらず多かったんです。

でもバイクはいろいろな面で確実に進化していて、品質も装備もよくなり、それに比例して価格も大型バイクであれば100万円を超える時代になっています。なのに、お店はいまだに昔のままでは、そういう高額商品を売るのにふさわしいのだろうか? と疑問を持ちました。そこで、カワサキプラザのネットワークを作ろうと思ったのです」

バイクウエアの概念も変えていく

既存のバイクブランドの商品だけでなく、一般アパレルブランドも多数起用して、上質で機能性も高く、なによりオシャレなレザージャケットなどを用意

前述のように、カワサキは2016年11月に新しい専売店ネットワークとして「カワサキプラザ」を全国に展開することを発表した。「高級感」「躍動感」「信頼感」の三軸を基本として、店舗の内外装デザイン、バイクの展示方法、ウエア&アクセサリーの選定、そして接遇に至るまで、お客様に最高の体験をしてもらえる空間づくりを目指している。

現時点(2018年9月末)で、カワサキプラザは全国に25店。今年度末には60店舗に増え、2020年には120店舗を目指している。また、2020年以降、カワサキのフルラインナップはプラザのみの扱いとなり、従来の正規販売店は400㏄モデルまでの取扱いとなる。

「47都道府県には、必ず1店はプラザがあるようにしたいと思っています。かつ大都市圏の東京、名古屋、大阪、仙台、福岡は複数店舗が望ましいです。プラザと従来通りの正規販売店の取扱車種が変わる2020年の正式スタートまで、まだ時間がありますから、プラザのない地域がないように、具体的な着地点を考えていきたいと思います。

会社の中では、プラザというのは大きく見た場合のカワサキ・モータース・ジャパンなんだと言っています。出資は経営者の方が行っていますが、店舗の外観と内観、展示方法、什器など、すべて統一規格でやっていますから、お客様の目から見るとプラザってカワサキの直営店に見えるんだと思います。ですから、我々もしっかりプラザをサポートしていかないといけないし、お店の方にもちゃんとブランド管理や接客のトレーニングなども受けていただきたいと思っています」

Fun、 Style、 Easyがカワサキのキーワードになる

乗って楽しく、カッコよくて、扱いやすく、しかもリーズナブルな価格であることがカワサキの勝利の方程式と寺西社長は言う。

永遠の名車・Z1も、最新のZ900RSもその3つを兼ね備えている 魅力的なモデルと、それを販売するにふさわしい店舗。その両輪が機能しなければ、トップシェアをキープし続けることは困難だろう。カワサキにとってZ900RSは、トップ戦略の先兵であったと同時に、この先を占う大切なモデルだったはずである。

「正直、RSは当たるとは思っていましたけど、見込みの1.5倍くらいのヒットになってくれました。初年度は2500台くらいを見込んでいたんですが、足りなくなってすぐに追加生産。いま、3500台くらいいっているのかな。だから、見込みの1.5倍以上です」

2018~ Z900RS

デビューから1年足らずで3500台という数字は、昨今の大型バイク市場ではまさしく大ヒット。その勢いは日本だけではなく、世界にも広がっている。

「全世界では、確か9000台くらいです。ヨーロッパと日本がほぼ同じくらいの台数なんです」

では、この大成功を寺西社長はどう分析しているのだろうか。

「私は、FUN、STYLE、E ASYの3つのキーワードを兼ね備えているのが勝利の方程式だと考えています。この3つの要素が備わっていて、そのうえで市場にエポックメイキング的なインパクトを与える商品は成功するんだと思っています。 これを自分で体験したのがER‐6Nというネイキッドモデルで、それまで大型バイクの入門モデルは古い500㏄モデルしかありませんでした。

そこに、リーズナブルな価格なのに、デザインは非常に斬新な650㏄モデルを投入したらこれが大ヒットになったんです。EASYには、乗りやすいという意味のほかに、買いやすいということも含んでいるんですよね」

ER‐6N

Z1も、寺西社長曰く「割安感があったと思う」。性能とスタイルに加えて、若い人が手に入れることが可能な価格設定も大ヒットの要因だったというのである。

1972 Z1

「もうひとつ、最近の例で言うとニンジャ250。250クラスは、いろいろな規制のせいでガタガタになり、価格が上がって、マーケットはしぼんでという悪循環で、各社ともなかなかニューモデルを投入できない状態になっていたところに、2008年にニンジャを出しました。

カウル付のスポーツモデルで、2気筒でよく走るし、極めつけは49万9000円という価格。まさにFUN、STYLE、EASYの3つのキーワードを備えていて、全世界で5万台くらい売れました。 結局、勝利の方程式とは、FUN、STYLE、EASYの3つの要素を持っていて、かつ市場にインパクトを与えることで、Z1とGPZ900R ニンジャもそうだったんです。

そこからいろいろなことが始まっていて、Z1からはゼファーが生まれました。 実は、ゼファーがデビューした頃(1980年代後半)、カワサキは経営が苦しい時期で、ニューモデルを出したいけど十分な開発費用が捻出できなかったんです。でも、少ない開発費にもかかわらず、ああいう大ヒットモデルが生まれました。 ゼファーも3要素が備わっているのに加え、価格も安かったことが大ヒット&ロングセラーモデルになった理由だと思います」

ゼファー750

Z900RSも、その勝利の方程式に当てはまるのだろうか?

「FUNは間違いないですよね。乗ると圧倒的に面白い。STYLEも、リヤサスが1本じゃおかしい、ホイールもスポークじゃなくちゃダメだとか言われる方もいますが、モノサスでよかったんだと思います。そこまで古臭くしちゃうと、Z、ゼファーの二番煎じ、三番煎じになっちゃいますから。

最後のEASYに関して、価格はちょっと高いと思われる方もいるかなぁと思います。でも、対象となるお客様の年齢層は50歳前後、経済的にも豊かな方々がターゲット顧客となりますから、その方々にとっては適正だったと思います」

カワサキの中では、Zシリーズというのは「最高」の象徴だという。Z1から始まった最高の系譜はZ900RSが受け継いでいる。そうなると、もうひとつのカワサキのこだわりである「最速」はどうなっているのかが気になる。

「ニンジャというブランドは、やはり常に最速のスポーツバイクという使命を帯びているんです。Zはリアルワールドというか、日常の時間で最高に楽しいモデルであるのに対し、ニンジャは純粋に速さ。今回発表したZX‐ 10Rはサーキットでの最速という使命を帯びていますし、H2は今年もボンネビルチャレンジに出場しました(参加したP‐PB1000クラスの世界最速記録となる時速209・442マイル(337・064㎞/ hを樹立)」

Z900RSに続き、2017年12月に発売開始したニンジャ400も好調なセールスを続けているし、カフェも追加されたRSも一部地域ではバックオーダーになっているほどの人気ぶり。この後に続くのは、来春発売予定とアナウンスされている新型ニンジャ ZX‐10Rシリーズで、H2の国内モデルも準備中とのこと。

カワサキの快進撃はまだまだ止まらなさそうである。 

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