「HUSQVARNA Svartpilen701(ハスクバーナ・スヴァルトピレン701)」~シングルスポーツの時代、再び~【R/C インプレッション archives】
軽さがもたらす魅惑のハンドリング
経営危機の憂き目に遭うも失わなかった存在感
スウェーデンに設立され、二輪の生産を始めてから116年。前身となった銃器メーカーを含めると330年もの歴史を誇るブランドがハスクバーナである。モトクロスやエンデューロの世界では名声を築きながらも80年代に入ってからは何度か経営危機を迎え、その度にカジバ、BMW、KTMといった企業の傘下に入り、国を転々としながらもブランドを維持してきたのである。 ハスクバーナが極めて珍しいのは、そうした憂き目に遭いながらも存在感を決して失わなかったことだ。KTMの支援を受けるようになってからはむしろ輝きを増し、特にここ数年は続々とニューモデルを発表。従来得意としてきたオフロードモデルのみならず、ストリート向けのロードスポーツにも積極的で、いずれもが高い完成度を誇る。 ヴィットピレン401、ヴィットピレン701、スヴァルトピレン401の3機種がそれだが、そこに加わった最新モデルがスヴァルトピレン701である。 簡単にキャラクター分けすると、ヴィットピレンはセパレートハンドルを備えるロードスポーツだ。401と701はエンジンの大小を表し、401は375cc、701は692ccの水冷単気筒を搭載する。 一方のスヴァルトピレンはバータイプのアップハンドルに換装されている点が大きな違いで、オフロード走行も想定。ただし、401がスクランブラースタイルなのに対し、701はフラットトラッカーがそのモチーフになっている。 ゼッケンプレートを模したヘッドライトカバーやサイドカウルにそのイメージを見つけることができるが、ネオクラシックバイクにも、近未来のモダンなバイクにも見え、なににもカテゴリーされない不思議なたたずまいが魅力的だ。これぞ、ライトウェイトスポーツシングル!
基本骨格とエンジンは、ヴィットピレン701と共有し、さらに言えばKTMの690デュークがそのオリジナルながら、それぞれの印象はまったく異なる。デザインはKTMの一部門であるキスカデザインの手によるもので、シックさとアヴァンギャルドさが混在。カスタムマシンのような武骨な雰囲気も併せ持つ。シート高はヴィットピレン701よりも5mm高い835mmだが、アップライトなハンドルと、空車1Gでのストローク量がしっかり確保されているおかげで足着き性はむしろ向上している。
小気味よい爆発音と連動するトラクションはシングルならでは
水冷SOHCの単気筒ユニットに内包されているのは、ボアが105mmのビッグピストンだ。排気量は700cc近いため、身体を震わせるような荒々しいトルクを想像するかもしれないが、その心配はあっさりと裏切られる。 使う回転域にかかわらず、そこにあるのは振動ではなく鼓動、バイブレーションではなくビートと呼ぶべきもので、コロコロと軽やかに回るフィーリングが9000rpm強までよどみなく続く。 もちろん、ただスムーズに回ることを楽しみたいならツインでもマルチでも構わないだろうが、ヴィットピレン701のエンジンが奏でる「タタタンッ」という小気味いい爆発音と、それに連動して伝わる明確なトラクションはシングルならではのもの。スロットルの動きにすべてを託し、エンジンの出力と車体姿勢を自在に操りながらコーナーを駆け抜けていく手の内感にスポーツマインドが満たされていく。 ここまではヴィットピレン701と共通の快楽ながら、少し異なるのがハンドリングだ。 前後に17インチホイールを装着し、オンロードに特化したハイグリップタイヤを装着するヴィットピレン701に対し、スヴァルトピレン701はフロントを18インチに大径化。タイヤにはダート走行を意識したピレリのブロックタイヤ、MT60RSが選択されている。
HUSQVARNA Svartpilen701(ハスクバーナ・スヴァルトピレン701) ディテール











Specifications:HUSQVARNA Svartpilen701(ハスクバーナ・スヴァルトピレン701)
エンジン | 水冷4ストローク単気筒 |
バルブ形式 | SOHC4バルブ |
総排気量 | 692.7cc |
ボア×ストローク | 105×80mm |
圧縮比 | 12.8対1 |
最高出力 | 75hp/8500rpm |
最大トルク | 7.3/6750rpm |
変速機 | 6速 |
クラッチ | 湿式多板APTCスリッパークラッチ |
フレーム | クロモリスチール製トレリス |
重量 | 158.5kg |
キャスター/トレール | 25°/119mm |
サスペンション | F=WP製φ43mm倒立フォーク |
R=WP製リンク式モノショック | |
ブレーキ | F=ブレンボ製4ピストン ラジアルマウントキャリパー/φ320mmディスク |
R=ブレンボ製1ピストン フローティングキャリパー/φ240mmディスク | |
タイヤ | F=110/80-R18 |
R=160/60-R17 | |
軸間距離 | 1436mm |
シート高 | 835mm |
ガソリン容量 | 12L |
価格 | 135万5000円 |