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中野真矢が本気インプレッション! TRIUMPH STREET TRIPLE RS

TRIUMPH STREET TRIPLE RS 右手でエンジンを自在に操る歓び シャープに気持ちよく高回転域まで吹け上がるのに低回転域からはフレキシブルにトルクを発揮するこの3気筒エンジンはまさに4気筒と2気筒のいいとこ取り それがハンドリングにもいい影響を与えている Moto2由来の「扱える」エンジンを搭載するミドルロードスターに元MotoGPライダー中野真矢さんが乗ってみた! [caption id="attachment_654682" align="alignnone" width="900"] 中野真矢
本誌で「トーキンググリッド」と「乗りたいバイクに乗ってみた!」を連載する元MotoGPライダー。全日本ロードレース審査委員長としての顔も持つ。ストリートトリプルRSも気になるバイクだったとのこと[/caption]

Moto2エンジンのDNAを抱くミドルロードスター

正直なところ、トライアンフにレースのイメージはあまりなかった。ボンネビルのような正統派クラシックを造る由緒正しいイギリスのブランド、という印象を持っていた。 デイトナ675がスーパースポーツ世界選手権で活躍し始めたあたりから、レースイメージが高まったように思う。そして19年、モト2のエンジンがストリートトリプルRSベースの765㏄並列3気筒エンジンになったのだが、僕はちょっと心配していた。非常に扱いやすいエンジンだけに、若手ライダーの練習や勉強になりにくくいのではないか、と思っていたのだ。 いざ始まってみると、それは完全に杞憂だった。エンジンのパワー&トルクアップに伴い、多くのライダーが「しっかり止まり、しっかり開ける走りが求められるようなった」とコメントしていたが、それはそのままモトGPの走り。モト2→モト GPへのステップアップはスムーズに行っているようだ。 ……といった余計な心配をして しまうぐらい、ストリートトリプルRSのエンジンは素直でスムーズだ。「モト2で使われているレーシング エンジンのベース」と聞くと荒々し いキャラクターかと思われるかもしれないが、真逆の印象である。 回転の上昇は非常に滑らかで軽快だ。クランクまわりやフライホイールが軽いエンジンといった印象で、ヒュンヒュンと気持ちよく回ってくれる。 それでいて、低回転域から非常に豊かなトルクを発生する。その出方も穏やかで、スロットルワークに対する反応は自然かつリニアだ。この二面性――4気筒と2気筒のいいとこ取り――は、まさに3気筒の大きなメリットと言えるだろう。 特にミドルクラスゆえの「行き過ぎないパワー」は、ビギナーからベテランまで幅広いスキルのライダーに「右手でエンジンを操る歓び」を味わわせてくれる。  そしてこの排気量はモト2でもうまく作用している。現在モト2マシンにはトラクションコントロールが採用されていないが、ギリギリ扱える範囲に収まっているのがこの765㏄並列3気筒なのだと思う。 [caption id="attachment_654683" align="alignnone" width="900"] ストリートトリプルRSのエンジンは、トライアンフMoto2エンジンチームが開発に携わった。先代から排気カム、クランクシャフト、バランサーなどを見直し、ユーロ5に適合しながら中回転域のトルクを9%増加。回転慣性の7%減少でスロットルレスポンスも向上させた[/caption]

エンジン特性が優れているからこそのニュートラルなハンドリング

ここまでエンジンの話に終始したが、ハンドリングについて語ろうとしても結局のところエンジン特性の優秀さに行き着く。 ハンドリングそのものはニュートラルで何も違和感はなく、旋回性も高い。ただ、この旋回性の高さはフレーム、サスペンションに加えて、 エンジンの過渡特性が優れているか らこそのものだ。 僕は非常に気にするところなのだが、アクセルの開け始めのツキ方、そしてトラクションのかかり方がとてもニュートラルで、開けるにあたって不安がまったくない。微妙にスロットルコントロールすることで、後輪からグイグイと曲がっていける。 このあたりの感覚は、今のライダーには伝わらないかもしれないが、セットア ップがバッチリ決まったキャブレター車のようだ。インジェクションに付き物の唐突感がなく、人間の感性にしっくりと寄り添う。ストリートトリプルRSはもちろんインジェクションを搭載しているのだが、そのネガをまったく感じさせないのは見事だ。相当に作り込まれていると思う。 ウイリーもコントロールしやすかった。これもエンジンの過渡特性が優れているからこそ。前輪が上がりすぎることもなく、ドンと落ちてしまうこともなく、狙った角度を維持できた。とことんフレキシブルなエンジンだ。 テストはサーキットで行われたが公動を想定してゆっくりしたペースで走ってみた。好印象は攻めている時と変わらない。ほどほどのペースで流していても爽快なエンジンだ。ポジションは一般的なネイキッドのそれなので、街乗りからツーリングまで幅広い使い方に対応するだろう。 ルックスはストリートトリプルらしくアグレッシブ。異形2灯ヘッドライトが睨みを効かせ、かなりアクが強い。スポーツネイキッドは各社多数のラインナップを取り揃えているから、これぐらい個性的でなければ埋没してしまう、ということなのだろう。エンジンまわりのメカメカしいデザインと相まって、ストリートファイター人気のヨーロッパではいかにも人気を呼びそうだ。 だが、これはかなり個人的な印象だが、好みが分かれる個性強めのデザインは日本では少々もったいないかな、と思う部分もある。保守的な日本のネイキッドファンには、ちょっとどきつい顔立ちに見えるかもしれないからだ。 実際の乗り味は、繰り返し言っているように滑らかでマイルド。なのに顔つきはアグレッシブ。このギャップが魅力なのかもしれない。 そういえば、「モト2マシンのベ ースエンジン」というカリカリのレーシングイメージと、街乗りからツーリングもこなせるフレキシブルさにもギャップがある。ストリートトリプルRS、いろいろな意味で面白いバイクだ。

TRIUMPH STREET TRIPLE RS DETAILS ーThe Performance of Middle Sportsー

[caption id="attachment_654689" align="alignnone" width="900"] フロント周りはショーワ製φ41mm倒立ビッグピストンフォークにブレンボM50ラジアルモノブロックキャリパーの組み合わせ[/caption] [caption id="attachment_654690" align="alignnone" width="900"] リアブレーキキャリパーもブレンボ製でシングルピストンを装着[/caption] [caption id="attachment_654687" align="alignnone" width="900"] TFTフルカラーディスプレイを採用し、パターンとカラーはそれぞれ4種類表示。メーターパネルはライダーの身長に合わせて最適な角度に調整可能[/caption] [caption id="attachment_654688" align="alignnone" width="900"] ハンドルバーはテーパー状で、クランプにブランドロゴが入る。ミラーはバーエンドタイプを装着[/caption] [caption id="attachment_654691" align="alignnone" width="900"] リアサスペンションはオーリンズ製フルアジャスタブルSTX40ピギーバックリザーバータイプ[/caption] [caption id="attachment_654692" align="alignnone" width="900"] ショートサイレンサーも 新形状。エンド部にはカーボンファイバーを採用し、トライアンフのエンブレムを装 着する[/caption] [caption id="attachment_654693" align="alignnone" width="900"] シフトアップ&ダウンに対応するシフトアシストを標準装着[/caption] [caption id="attachment_654694" align="alignnone" width="900"] シート 高は840mm。シートカウルも新デザインとなり、タンデムシートとカバーは交換式[/caption] 新型TRIDENTが最終ロードテストを慣行! 2020年10月30日に発表 [caption id="attachment_654697" align="alignnone" width="900"] 以前、3気筒エンジンを搭載するミドルロードスター、新型トライデントのデザインプロトタイプを紹介したが、そのトライデントの最終テスト段階の写真が公開された。カモフラージュとして全身がトライアンフのエンブレムでおおわれているが、各部の造形 はすでに量産型ともいえる完成度。そ れもそのはず、今号発売直後に早くも正式発表されるのだ。発表会は日本時間10月30日(金)21時、YouTube 公式チャンネルにてライブ配信される。[/caption]]]>

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