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SUZUKI ハヤブサ/13年振りのフルモデルチェンジ 三代目が飛翔!

スズキの新型フラッグシップ「Hayabusa」が登場。その詳細が明らかになった。デザインコンセプトは“The Refined Beast”。日本市場での価格は未発表ながら、導入時期がまもなくであることは間違いなさそうだ!

受け継がれた流線型

ハヤブサの初代モデル「GSX1300R HAYABUSA」がデビューしたのは1998年のことだ。2008年には排気量が1299㏄から1340㏄へ引き上げられ、二代目に進化。その時に車名が「HAYABUSA1300」へ、2013年には「HAYABUSA」へ変更され、主に欧米市場で高く評価されてきた。

また、馬力規制撤廃の流れを受けて2014年には日本仕様の「隼」が登場し、その人気を後押ししたのである。 ただし、厳しさを増す環境規制の影響は免れず、2018年以降は一部の国向けを除いて、生産規模を縮小。それゆえ、このモデルの行く末を心配する声もあったのだが、このほど全面的な改良が施され、三代目として披露されたのである。

まずはスタイリングから見ていこう。カウルサイドに〝隼〞の文字が入っていなくても、誰もがその進化版だと分かるに違いない。初代も二代目もライダーを包み込むようなフォルムを特徴とし、今回の新型でも顕在だ。

右から第一世代(1999年~ 2007年)、第二世代(2008年~ 2020年)、そして今回発表された第三世代(2021年~)のハヤブサ。20年以上に亘り、キープコンセプトが貫かれている様がよく分かる

キーコンセプトは揺るがない

印象的なのは、ラムエアのエアインテーク、サイドカウルのスリット、シートカウルなどに差し色やメッキが施されているところで、空気の流れを視覚的に表現。従来モデルよりもシャープさが増し、質感の向上にも貢献している。

マフラーのデザインもそれに倣い、エッジの効いたデザインによって軽やかな雰囲気になった。 コックピットもこれまでの延長線上にある。昨今のモデルは大型のTFTディスプレイひとつで完結することが多いが、ハヤブサは伝統的な5連メーターを採用。中央に電子デバイスやギアポジションが表示される小型のTFTディスプレイを備え、左右にアナログのスピードメーターとタコメーターを配置。その外側に水温計とガソリン計を置くという、いかにもバイク然とした意匠が守られている。

このように、随所にキープコンセプトが貫かれているのは、車体に関しても同様だ。メインフレームやスイングアームといった主要部分は二代目から踏襲され、メインフレームに限って言えば、初代から大きく変わっていない。明らかな変更点は、軽量化が進められたシートフレームくらいである。

ヘッドライトを筆頭に、灯火類にはすべてLEDを採用。ライト横にはSRAD(スズキラムエアダクト)が備わり、フレッシュエアを効率よく取り込む
快適な高速巡航を可能にするクルーズコントロールを標準装備
新デザインのフロントフェンダーは空力とブレーキまわりの冷却効果を両立
6軸IMUを装備し、コーナリングABSやアンチリフトコントロール、モーショントラックトラクションコントロールシステムなどと連動。車体のスタビリティが向上している
エッジの効いたマフラーによって、車体との一体感が増している。タイヤはブリヂストンのバトラックス・ハイパースポーツS22を採用
サスペンションは前後ともKYB製

低中速を強化したエンジン

現在公開されているスズキの公式動画では、新型の開発過程において、あらゆるエンジン形式が検討されたことが明らかにされている。排気量違いもあれば、過給機付きもあり、さらには気筒数変更の可能性もあったとのことなので、必然的にそれを懸架するフレームもさまざまな形状が模索されたはずだ。
にもかかわらず、こうして継承。それはつまり、オリジナルが持っていたコンセプトと先見性が確かだったことの証に他ならない。

ハヤブサは当初から10年先、20年先を見越した過剰なまでのクオリティを注入。結果的に23年で三代目というモデルサイクルの長さを実現し、しかも常に第一線に在り続ける稀有なモデルなのだ。

そういう志はエンジンにも見て取れる。事実、クランクケースやシリンダー、シリンダーヘッドといった主要な部位は、やはり二代目から大きく変わっていない。反面、内部は、ありとあらゆるパーツが見直されているのが特徴だ。

エンジンを上部から見ていくと、カムシャフトのプロファイルを見直し、低中速重視のタイミングに変更。鍛造ピストンとコンロッドは、それぞれ軽量化が図られ、クランクシャフトはオイル供給量の増大に備えられている。

他にも、クラッチには新型のアシストスリッパークラッチが採用され、トランスミッションのベアリング変更によってシフトフィーリングの向上を狙うなど、きめ細かくアップデート。シリーズ初採用の電子制御スロットルが、集められたパワーをコントロールする。

その結果、どれほどの最高出力を得たのかと言えば、190㎰/9700rpm、最大トルクは150Nm/7000rpmである。 ちょっと肩透かしをくらった気分だろうか?

なぜなら、二代目のそれは197㎰/9500rpm、155Nm/7200rpmだったからだ。200㎰オーバーが珍しくない今、それらを一掃するスペックをひっさげて登場するのかと思いきや、パワーもトルクもわずかながら低下。どう解釈していいのか、とまどうかもしれない。

端的に言えば、ピークパワーを追求する時代ではなくなったということだ。300㎞/hオーバーがひとつのステータスになっていたのはひと昔前のことである。現在はどれほどパワーがあっても300㎞/hを超えないようにリミッターが作動。まして、ハヤブサはサーキットでラップタイムを競い合うようなポジションになく、深追いする意味は薄い。

ならば低中速域を強化し、よりフレキシブルな特性に仕立てた方がメリットは多く、耐久性や快適性も向上する。スズキはそう判断し、花より実を取る改良を施したのである。フレームやエンジンの基本設計を引き継いだのと同様、地に足の着いたスズキの実直さが伺える。

エンジンの主要外部パーツ(クランクケースやシリンダーなど)、アルミ鋳造のツインスパーフレーム、そしてスイングアームは従来モデルからそのまま踏襲されている。今回、新たに設計されたのはサブフレーム(シートレール)だ。構成がよりシンプルになったことで、700gの軽量化を実現している

最先端の電子デバイス

とはいえ、190㎰である。これを剥き出しで放つのは現実的ではなく、もちろん数々の電子デバイスがライダーのスキルをフォローしてくれる。

基本になるのは「SDMS-α」(スズキドライブモードセレクター・アルファ)と呼ばれるライディングモードで、エンジンの出力特性、パワー、トラクションコントロール、アンチリフトコントロール、エンジンブレーキコントロールなどを統括。

A(アクティブ)/B(ベーシック)/C(コンフォート)の3パターンの中から選択すると各種制御の介入度が自動的に切り換わる他、ライダーが任意に設定できるU(ユーザー)モードも3パターン設定できるようになっている。

この他にも、コーナリングABS、ローンチコントロール、クイックシフター(シフトアップとダウンに対応)、クルーズコントロールなどを標準装備。ユニークなのは、バイクでは世界初採用となるアクティブスピードリミッターで、これはライダーが設定した速度を超えないよう、自らリミッターを掛けられるというものだ。

目先の数値に捉われることなく、これまで築き上げてきた素性の良さを引き上げる正攻法で熟成を図ったモデル。それが新型ハヤブサである。既述の公式動画の中で、エンジニアのひとりはこう語っている。「性能も品質も耐久性も本当に作り上げたので長く乗ってください。10万㎞、20万㎞、なんなら50万㎞」

この言葉に新型ハヤブサに賭ける思いと、スズキというメーカーの良心が詰まっている。

中央にフルカラーTFTディスプレイを置き、左から燃料計、タコメーター、スピードメター、水温計を配置するコックピット。5連メーターもスタイリング同様、キープコンセプトだ


 

どのカラーバリエーションにも差し色が効果的に配され、スタイルが引き締められている。シングルシートはオプション

グラススパークブラック×キャンディバーントゥゴールド
メタリックマットソードシルバー×キャンディデリングレッド
パールブリリアントホワイト×メタリックマットステラブルー

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