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中野真矢がインプレッション!! 新型3気筒『TRIUMPH TRIDENT 660』

ヨーロピアンデザインと扱いやすさを重視した3気筒エンジンをまとう パフォーマンスもプライスも手が届きやすい「マイ・ファースト・トライアンフ」。どこにも手抜きはなくエントリーモデルの域を越えた仕上がりのよさ トライデント660を走らせる中野真矢さんは、終始楽しげだった [caption id="attachment_689623" align="alignnone" width="900"] SPECIFICATIONS
●エンジン:水冷4ストローク、並列3 気筒DOHC4 バルブ●総排気量:660cc●ボア×ストローク:74.0×51.1mm●圧縮比:11.95:1●最高出力:81ps/10250rpm●最大トルク:64Nm/6250rpm●変速機:6段リターン●クラッチ:湿式多板、スリップアシスト●フレーム:チ ューブラースチール製ペリメーター●キャスター/トレール:24.6°/107.3mm●サスペンション:F=ショーワ製 φ41mm倒立型セパレートファンクション、R=ショーワ製 モノショック(プリロード調整機能付)●ブレーキ:F=φ310mmダブルディスク+ニッシン製 2ピストンスライディングキャリパー、R=φ255mmシングルディスク+ニッシン製 シングルピストンスライディングキャリパー●タイヤサイズ:F=ミシュラン製ロード5 120/70R17、R=ミシュラン製ロード5 180/55R17●全長×全幅×全高:2020×795×1089mm●ホイールベース:1401mm●シート高:805mm●車両重量:189kg●燃料タンク容量:14ℓ●価格:97万9000円[/caption]

見る角度によって変わる表情が魅力 TRIUMPH TRIDENT 660

落ち着いたシルバーに、鮮烈なレッドの差し色。この配色センスがたまらない。イタリア人デザイナー、ロドルフォ・ラスコーリの手によるミニマルで洗練された車体フォルムとのマッチングは絶妙で、モダンさとバイクらしいスポーツ性が1台に凝縮されている。 またがってみると、しっくりくるポジションだ。ややシートは高めで軽く前傾するが、ほどよいスポーツ感が軽快な走りを予感させてくれる。 セルボタンを押す。660㏄3気筒エンジンは、ドウンッと意外にも野太い排気音とともに目覚めた。思いがけない迫力に気分が高揚する。軽くブリッピングすると、わずかなメカニカルノイズを響かせながら俊敏に回転が上昇する。楽しませてくれそうなエンジンだ。 私はもともとトライアンフの3気筒エンジンが好きだ。実は乗る前は食わず嫌いで「イギリス車ってどうなんだろう」と、半ば懐疑的でさえあった。ところがいざデイトナで初体験すると、その作り込みのよさに驚かされた。特に私が気にするアクセルの開け始めのツキが非常によくしつけられていたのだ。 ストリートトリプルRSもサーキットで素晴らしいパフォーマンスを発揮し、トライアンフはバイクをよく知っている人が造っていることが伝わってきてうれしくなった。

扱いやすさと味わいがバランスした3気筒エンジン

今回試乗するトライデント660は、100万円を切る価格といい、もっとカジュアルなカテゴリーに属する。その3気筒エンジンがどんな表情を見せてくれるのか、期待しながら走り出した瞬間から、意外なほどのパワー感に驚かされた。81psというスペック以上の加速フィールに包まれたのだ。 今まで私が試乗してきたトライアンフの3気筒エンジンは、どちらかといえば4気筒寄り――高回転型だったように思う。だがトライデント660は2気筒寄り――低回転域から太いトルクを発生し、車体を力強く加速させる。エンジンをかけた時の野太い排気音そのままの印象だ。 シフトアップしていくたびに、体が後ろにおいていかれるような加速感が続く。かと言って、手に余るようなことはない。そこはていねいにしつけられた81ps、恐怖心を感じることなくアクセルを開けられる。 もっともパワー感があるのは、5000〜7000rpmあたりだ。アクセルワークをうまく使うと車体姿勢もコントロールしやすく、キビキビとした走りが楽しい。 アグレッシブ、というとやや大げさになるが、そう表現したくなるイキのよさがトライデント660にはある。もう少しカジュアルで、日本車でいうならヤマハMT-07のような乗り味かと思っていたが、いい意味で裏切られた。トライアンフ3気筒シリーズの末弟として、しっかりとスポーツ性に重きを置いている。   [caption id="attachment_689620" align="alignnone" width="900"] LCDディスプレイとTFTカラースクリーンを組み合わせたメーター。黒地に白文字で視認性が高い[/caption] いったんトライデント660を降りて、心を落ち着かせよう。改めてじっくりと眺めてみると、いかにも今どきのスポーツネイキッドらしいオーセンティックさながら、そこかしこに個性が散りばめられているのが分かる。「外車を買った」という満足感が得られるポイントだろう。 特に面白いのはタンクの造形だ。見る角度によって、スリムなレトロ感と、少しボリュームのあるスポーティーさが交互に顔を出す。いろいろな表情を浮かべるので、眺めていて飽きることがない。 さて、再び走りだそう。今度はハンドリングに注目してみる。 停車している時は若干車体の重さを感じるが、走り出すと軽快そのものだ。クイック、というよりは扱いやすさに重点を置いている。前後サスペンションが路面状況を豊富に伝えてくれるので、安心感も高い。 高価格帯のバイクではないので、率直に言ってしまえば最上級のサスペンションを装着しているわけではない。だが、安っぽさはどこにも感じられない。初期から作動性は良好で、状況が分かりやすい。 足まわりはもっとも価格差が出やすい箇所なので少々心配していたが、まったくの杞憂だった。 ハンドリングそのものは、いたってニュートラル。ダンピングがしっかりと効いているから好みの姿勢に落ち着かせやすく、安心してコーナーに進入していける。良好な前後バンスに好印象を持った。 [caption id="attachment_689622" align="alignnone" width="900"] リアサスはショーワ製のプリロード調整機能付きモノショック。路面追従性が高く走りを安定させる[/caption] トライデント660には2種類のライディングモードが用意されている。しばらくロードモードで走ってからレインモードに切り換えてみると、イキのよさが抑えられた。ただし、パワーダウンを感じるほどではない。尖っていた角が滑らかに丸められたような印象で、全体的なパワーが間引きされてしまったような寂しさはなかった。 私などは街中ならレインモードを常用してもいいのかな、と思う。ひときわ扱いやすいので、気遣いをまったくせずに済み、ラクにライディングを楽しめるのがありがたい。 ワイディングロードやサーキットなど、スポーツ性を楽しみたい場面だけロードモードに切り換えるような使い方が、自分にはフィットしそうだ。 [caption id="attachment_689621" align="alignnone" width="900"] 倒立フロントフォークもショーワ製でφ41mm。ブレーキディスクはφ310mm大径タイプをおごる[/caption] 乗り込むほどに、660㏄3気筒エンジンの味わい深い魅力が分かってくる。四輪で例えるなら空冷のポルシェのような有機的なガサガサ感があって、時間が経つほど体に馴染んでくる。回転上昇の気持ちよさとはまた別の心地よさが、常用域で楽しめるのだ。これはスキルを問わず多くのライダーが享受できる、トライデント660の美点だろう。 ストリートトリプルSのエンジンをベースにしながら、約70点近いパーツを新設計してほぼ別モノのオリジナルエンジンとなっているトライデント660。デビューした時点でこの扱いやすさと味わいを身に付けているとは、トライアンフの本気度が窺える。 エントリーモデル、という位置づけだが、エキスパートも満足させる仕上がりのよさ。「手が届くトライアンフ」の登場を歓迎したい。

TRIUMPH TRIDENT 660 Shinya’s Favorite

[caption id="attachment_689618" align="alignnone" width="900"] トラデント660の3気筒エンジンは2気筒寄りのキャラクター。常用域でイキのよい加速を見せてくれる[/caption] [caption id="attachment_689617" align="alignnone" width="900"] オーセンティックな丸目ヘッドライトが醸し出す「バイクらしさ」には好感が持てる[/caption] [caption id="attachment_689619" align="alignnone" width="900"] 見る角度によって豊かに表情を変えるタンク。ミニマルなフォルムながらクラシカルであり、モダンかつスポーティーなあたりはさすが[/caption]]]>

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