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電子制御サスペンション搭載でさらに進化したスーパーネイキッド『Z H2 SE』その実力

カワサキネイキッドのメインストリーム、Zシリーズの旗艦として誕生したZ H2 それから1年、この春バリエーションモデルとしてZ H2 SEが登場 Special Editionを名乗る理由は、電子制御サスペンションKECSの採用 思考するサスペンションは、過給器エンジンの獰猛な走りをどう変えるのか?

“知的な脚”を手に入れ、洗練されたモンスターネイキッド KAWASAKI Z H2 SE

スーパーチャージドエンジンを搭載したスーパーネイキッドZ H2に、電子制御サスペンションを装備するZ H2 SEがラインナップに追加された。果たしてどのような走りを見せるのか? 高田速人さんによる公道インプレッションをお届けする。ニンジャH2を走らせた経験はあるが、Z H2に乗るのは初めてとのことで、まずはスタンダードのZ H2から試乗を開始。 「ニンジャH2はピーキーでかなりジャジャ馬ですが、Z H2のパワーはよりフラットで低速トルクが強い印象があります。レスポンスも適度。もちろん凄く速いですよ、200㎰ですから。誰でも、とまでは言い過ぎですが、パワーが引き出しやすくなっていますね。 リッタースーパースポーツなら200㎰も珍しくなくなりましたが、それはピークパワーに限った話ですから、パワーバンドを意識する必要があります。Z H2のスーパーチャージャーは、低回転から過給がかり、全域でパワフル。低中回転域での力強さは圧倒的です。自然吸気エンジンのマシンが、苦労してパワーバンドを使って走る場面で、Z H2ならスロットル操作だけで、同じかそれ以上の速さで走れるでしょう」 [caption id="attachment_702862" align="alignnone" width="900"] 高田速人
鈴鹿8耐や世界耐久選手権等で活躍するレーシングライダー。ライディングパーティのインストラクターも務める。バイクのタイヤとメンテナンスのショップ8810R代表[/caption]

KAWASAKI Z H2 SE 並び立つ“上質”と“獰猛”

では、次はZ H2 SEだ。「走り出してすぐ、サスペンションの違いが感じられました。スタンダードに比べると、しっとりと落ち着いた動きで、高性能なショックユニットに付け替えたような感覚です。セミアクティブサスペンションはバリアブルに減衰力が変化するので、出来が悪いと動きに違和感を感じます。このバイクは、電子制御サスペンションだと言われなければ、気づかないかもしれません。とても自然なフィーリングです」 では、電子制御サスペンションのメリットはどこにあるのか? 「スタンダードのサスペンションは、ある程度ストロークしてから減衰力が立ち上がってきます。重量がそこそこあり、凄まじいパワーのバイクですから、高荷重時の動きに配慮すれば致し方ない部分。ダンパーユニットの限界です。 SEはストローク量が少ない領域から減衰がかかっています。それでいて過減衰ではなく、必要な分だけ減衰がかかる。ハイスピードやハードブレーキングといった高荷重時は、適切な減衰力が発生します。これこそ、電子制御サスペンションの利点です。 下りコーナーで、分かりやすく差が出ます。SEはフロントフォークの沈み込み量が適度。姿勢変化はありますが、挙動は安定しています。ブレーキをリリースする時の、スタンダードではフォークが伸びて、連動したリアが落ち着かなくなるような場面でも、SEは安定したまま。路面追従性が高いので、タイヤのグリップを維持できる。リアサスが安定状態を保っているので、後ろから押されるような不安感もない。単純に乗り心地が良いですね。スタンダードで突き上げを感じるギャップも、SEはしなやかにいなしてくれる。インフォメーションは適度に保ち、ショックだけ吸収してくれます」 KECSは、電子的にサスペンションセッティングの変更が可能。デフォルトでソフト・ミディアム・ハードの3モードが用意されているので、モードの違いを試してもらった。 「ミディアムと比べるとソフトはすごく柔らかい。サスが動き過ぎるくらい動くのですが、減衰のかかったしっとりとした動きです。街中向きのセットですね。ハードはかなり固めで、ワインディングでは車体が跳ねて走りづらいかもしれません。サーキットでハイグリップタイヤを履かせ、空気圧や温度管理を行った時に使いたいです」 電子制御サスペンションKECSとは? [caption id="attachment_702866" align="alignnone" width="900"] カワサキのセミアクティブ電子制御サスペンションKECSは、ショーワが開発したスカイフックEERAテクノロジーを採用。“スカイフック”とは、仮にバイクを空から吊るし、サスペンションを路面に合わせて動かせば姿勢変化は起きないとするアクティブサスペンションの基本思想。上はそのイメージ図。サスペンションの伸縮は外力に依存し、減衰力のみ能動的に変化させるため、セミアクティブサスペンションと呼ばれている。[/caption] [caption id="attachment_702871" align="alignnone" width="900"] フロントフォークとリアショックに内蔵されているストロークセンサーが、ストローク量とストロークスピードを常時計測。IMUの車体加減速情報、前後輪回転数、フロントブレーキの加圧情報等、様々な車体情報と共にKECS ECUへと送られ、最適な前後サスペンションの減衰力を判断。0.001秒単位で減衰力調整を行う[/caption] Z H2 SEは、ブレンボ製の高性能なブレーキシステムも備える。「剛性が高いキャリパーの効果もありますが、マスターシリンダーの違いが大きい。スタンダードも制動力自体は十分高いけれど、コントロール性に差があります。レバー入力に対し、制動力の立ち上がり方がリニア。パッドがローターと触れるか触れないかという微妙な領域でも、緻密なコントロールが可能です。かけ始めのタッチも気持ち良いですね。 ブレーキングにはサスペンションの動きも関係してきますから、ここにも電子制御サスのメリットがある。例えば、強力なブレーキと柔らか過ぎるサスペンションの組み合わせは、ブレーキングでの安定性が悪い。SEなら安定性を維持できるので、思い切りブレーキングできます」 高田さんは、Z H2 SEを、こう評価して締めくくった。 「SEはバリエーションモデルとして登場してきたわけですが、電子制御サスペンションだけでなく追加要素に『後付け』した感じが皆無です。企画段階から、SEの存在が計画されていたのではないでしょうか。基本形がSEで、価格を下げたシンプルなモデルとしてスタンダードが企画されたのではないかと勘ぐってしまいます。それぐらいSEの完成度は高いと感じました。SEとスタンダードの価格差は約30万円弱ですよね。納得できる価格設定です、むしろバーゲンプライスではないでしょうか? 自分がZ H2を買うとしたら、迷わずSEを選びますね」 [caption id="attachment_702869" align="alignnone" width="900"] スタンダードのZ H2は、電子制御サスペンションのサポートがない分、スーパーチャージドエンジンのテイストをプリミティブに味わうことができる。189万2000円のプライスは、H2ファミリーの中では最もリーズナブル。手に入れやすさも魅力だ[/caption] [caption id="attachment_702868" align="alignnone" width="900"] 万能性が魅力のネイキッド。サスペンションの特性を気軽に、ドラスティクに変化させられるZ H2 SE。乗り心地重視のセットなら快適性は良好。ツーリングバイクとしても、高い資質を秘めている[/caption]

KAWASAKI Z H2 SE Specialの名に恥じないハイクオリティパーツを使用

Z H2 SEは、最大の特徴であるセミアクティブ電子制御サスペンションKECSと、ブレンボ製のフロントブレーキシステムを除き、ほとんどの部分をZ H2と共有する。 スーパーチャージドエンジンの最高出力は、同系エンジンを搭載するニンジャH2 SXと共通だがトルク特性が異なり、H2シリーズの中で最も強力な低中回転域のトルクを誇る。想定される速度域を低く設定し、日常域で大パワーを楽しめるようにと考えられた特性が与えられている。高張力鋼スチールパイプで組み上げられた、Z H2専用設計のトレリスフレームも同様の思想で設計されており、市街地やワインディングで楽しめるハンドリングを重視。 トラクションコントロールやABS、パワーモードを統合する、インテグレーテッドライディングモードもユーザビリティ向上に貢献。KECSが搭載されたことで、快適性とライディングの自由度はさらに引き上げられた。Z H2 SEは、強大なパワーを自在に引き出し、走りを楽しむために進化したマシンなのだ。 [caption id="attachment_702877" align="alignnone" width="900"] SPECIFICATIONS
エンジン:水冷4ストローク並列4 気筒DOHC4 バルブ
総排気量:998cc
ボア×ストローク:76.0×55.0mm
圧縮比:11.2:1
最高出力:200ps/11000rpm
最大トルク:14.0kgf・m/8500rpm
変速機:6段リターン
フレーム:トレリス
キャスター /トレール:24.9°/104mm
サスペンション:F=SHOWA製φ43mm倒立フォーク、R=SHOWA製リンク式モノショック
Fブレーキ:φ320mmダブルディスク+ブレンボ製Stylema、モノブロック4ピストンキャリパー
Fブレーキ:φ260mmシングルディスク+ニッシン製1ピストンキャリパー
Fタイヤサイズ:ピレリ製 DIABLO ROSSO III、120/70ZR17M/C 58W 
Rタイヤサイズ:R=ピレリ製 DIABLO ROSSO III、190/55ZR17M/C 75W
全長×全幅×全高:2085×815×1130mm
ホイールベース:1455mm
シート高:830mm
車両重量:241kg
燃料タンク容量:19ℓ
価格:217万8000円、Z H2:189万2000円[/caption] [caption id="attachment_702872" align="alignnone" width="900"] 200psの高出力エンジンを搭載することを考えれば、フレームは華奢な印象を受けるが、高速走行時の安定性も十分に確保されている。ネイキッドモデルに求められる汎用性を、しっかり考慮して作り込まれている[/caption] [caption id="attachment_702873" align="alignnone" width="900"] Z H2/SEは、Zシリーズに共通する「SUGOMI」に加え「Minimalist」をデザインコンセプトに掲げている。造形は個性を主張しながら、機能部品は装飾を廃して機能美をアピール[/caption] [caption id="attachment_702876" align="alignnone" width="900"] マフラーは膨張室を廃しながら大容量を確保。低中速トルクの増大にも貢献[/caption] [caption id="attachment_702875" align="alignnone" width="900"] エアインテークは内部にエアクリーナーを装備[/caption] [caption id="attachment_702861" align="alignnone" width="900"] バランス型スーパーチャージドエンジンは、ネイキッドバイクに相応しい特性に設定[/caption] [caption id="attachment_702874" align="alignnone" width="900"] 赤くペイントされ存在感を主張するスーパーチャージャーユニット。エンジンも造形の構成要素となるネイキッドならではの遊び心[/caption] [caption id="attachment_702878" align="alignnone" width="900"] SEはハイグレードなブレーキシステムを採用。ブレンボ製「Stylema」モノブロックキャリパーは、ブレーキフルード経路の容積を減少させ、よりダイレクトな応答性を実現。セミラジアルのマスターシリンダーと、ローターもブレンボ製だ[/caption] [caption id="attachment_702881" align="alignnone" width="900"] KQS(カワサキクイックシフター)を標準装備。2500rpm以上のエンジン回転数であれば。クラッチ操作不要でシフトアップ&ダウンが可能だ[/caption] [caption id="attachment_702880" align="alignnone" width="900"] Z H2 SEとZ H2は、外見上の差異はほとんどなくエンブレムも共通。電子制御サスペンションであることが判別しやすいのは、フロントフォークのトップキャップ。右の写真がスタンダード、左のSEにはKECSのロゴマークとハーネスの取り出し部分を持つ[/caption] 先進のインフォテイメントRIDEOLOGY THE APPに対応 [caption id="attachment_702882" align="alignnone" width="900"] Z H2/SEは、大画面フルカラーTFT液晶を採用したインストゥルメントパネル内にBluetoothチップを内蔵し、スマートフォンとの接続機能を搭載。専用アプリ「RIDEOLOGY THE APP」をインストールすることで、様々な機能が利用可能。スマートフォンの通信情報を車両ディスプレイに表示できたり、走行記録やメンテナンス情報をスマートフォンで閲覧できるなど、相互に情報活用を実現。ライディングモードなど電子制御デバイスの設定を、スマートフォンで行うことも可能なのだ。[/caption] [caption id="attachment_702863" align="alignnone" width="900"] ディスプレイタイプのインストゥルメントパネルは、表示される情報が多彩。また、電子制御デバイスの設定項目は豊富だが、その設定は車両単体ではハンドルスイッチとパネルのボタンで行うため慣れが必要。スマートフォンと接続すれば、ユーザーインターフェースの利便性は劇的に向上する[/caption]]]>

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