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カスタムパーツの基礎知識【ステップキット】

カスタムはバイクの醍醐味のひとつ。もっと愛車を楽しくするために、パーツ交換の「効能」から学ぼう!

操作系パーツの中でもっとも重要な存在

「バイクは下半身で操る」とはよく使われる言葉だが、実践するために重要となるパーツがステップだ。コーナリング時に下半身でマシンをホールドしたり、前後左右に体重移動したり、あるいは車体に荷重をかけるためには、ステップを踏んで入力する作業が必要となる。つまり「フットレスト」と呼ばれることもあるステップは、単なる〝足置き場〞ではないのだ。

一般的なバイクの場合、右側ステップにはリアブレーキのコントロール、左側ステップにはシフトチェンジの機能も与えられており、減速や変速においてもステップは大切な機能パーツである。 

愛車にステップキットを導入するメリットは、バイクを自在に走らせるために必要となるステップワークやブレーキ操作やシフトチェンジが、純正よりもやりやすくなるところにある。近年のステップキットは、フットペグの位置を調整できる機能を搭載するのが一般的なので、自分の体格や好みに合うポジションを得られるというのも大きな魅力だ。 

メーカーは基本的に、フットペグが純正と比べてどのような位置になるのか、「○㎜アップ、○㎜バック」というように公表している。

ほんの少しのポジション変更でも、ライディングポジション全体のイメージが大きく変わることがある。数値を参考にしつつ、操作性にもこだわりながら、自分に合う製品を探したい。

基礎知識1:名称と構造

ステップキットは、それほど大きなパーツではないが、多数の部品により構成される。しかも、基本的には車体右側がリアブレーキ、左側がシフトチェンジと、それぞれが異なる操作も担うため、ブレーキペダルとシフトペダルのように左右で形状が異なるパーツもある。 

ただし、パーツ構成は純正と大きく違わないので、覚えなければならないパーツ名称はそれほど多くないはずだ。 

もっとも大きな違いは、アフターパーツのステップキットはポジション可変式がほとんどで、それに伴ってベースプレートと本体が別体式だったり、ベースプレートにポジションホールが設けられていたりする点である。

①ベースプレート

近年のステップキットはポジション可変式が一般的。その方法にはいろいろあるが、ベースプレートとキット本体を別体構造として、その装着ホール位置で調整するタイプも多い。

③フットペグ

ライダーが足を置く場所のこと。名称はさまざまで、ステップバーやフットレストと呼ばれることもある。

②ステッププレート

フットペグやヒールプレートをはじめとする、ステップキットのメインとなる構造物を装着するプレート。メーカーによっては、メインプレートなどと呼ばれることもある。

④ヒールプレート

ライダーがフットペグに足を置いたときにカカトの内側に当たる位置に装備。チェーンへの巻き込み防止などとしても機能する。

基礎知識2:取り付けのメリット

アフターパーツメーカーのステップキットを装着する利点は、自分の体格や走りに合うライディングポジションを獲得でき、ステップワークやペダル操作などが向上するところにある。 

純正のステップは、幅広い体格のライダーがさまざまなシーンでライディングすることにも配慮しながらポジションが決められている。そしてほとんどの車種が、その位置を変更できない。また、剛性が低めでステップワークの力が逃げたり、フットペグが滑りやすかったり、軸受け部に使われるのがベアリングではなくメタルブッシュだったりして、ペダルのスムーズさがあまりないなんて場合もある。

アフターパーツのステップキットは、これらの問題をほとんど改善できる。その結果、愛車をよりイメージどおりに操れるようになることも多いのだ。

近年のステップキットは、フットペグの位置が可変式になっていることがほとんど。さらに、ペダル先端位置なども調整できる製品が多い。ライダーの体格や好みにアジャストできるため、より正確なステップワークやペダル操作ができるようになることが多いのだ。
純正のフットペグは、振動伝達を抑制するラバーが装着された構造か、スーパースポーツでも鋳造製がほとんど。対してリプレイス品のフットペグは、切削加工で表面に細かく鋭い溝を縦横に刻むローレット加工が施されていることが多く、グリップに優れる。

基礎知識3:リプレイス品素材

純正は鋳造アルミ製であることも多いが、アフターパーツとして販売されているステップキットはほぼすべて、金属を削り出した部品を組み合わせたビレットパーツ(もちろん細部の樹脂素材などは除く)。その素材にはアルミ合金か、その一種でより強度に優れるジュラルミン素材が使われる。 

他のビレットパーツと同じくステップキットの部品は、動作をコンピュータでデジタル制御するCNC工作機械によって製造されるため、極めて高精度。その結果、部品を組み上げたときのガタつきは少なく、作動の正確性が増す。また、加工の自由度に優れるため、必要な剛性を確保しながら、肉抜きにより軽量化することも可能。 

そして、ビレットパーツならではの優れた質感により、愛車をドレスアップするアイテムとしても非常に効果的なのだ。

ビレット(billet)とは、半製品状態の金属塊のことを指し、金属塊を削り出して作られた部品をビレットパーツと呼ぶ。加熱しながら高圧を与えて分子密度を高めた鍛造アルミ合金や、その一種となるジュラルミンが多用される。
設計図を3Dデータ化したら、切削手順をプログラミングしてCNC工作機械に入力。ブランク材とも呼ばれる圧縮された金属塊をセットして作業を開始すれば、仕上げ前のパーツが完成する。
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ステップキットに使われる部品のほとんどはアルミ製なので、アルマイト(表面に陽極酸化被膜をつくる処理)でさまざまなカラーに仕上げられる。オプションで特色に対応するステップキットメーカーもある。

基礎知識4:純正ステップ

純正のステップは、上面のラバーや、底面のバンクセンサーにより、快適性や安全性を高めたフットペグを採用していることがほとんど。コストダウンも強く意識されるので、社外品のようにビレットパーツに精巧なローレット加工を施してグリップを高めたフットペグが使われることは、スーパースポーツでもほとんどない。 

オフロードやアドベンチャーモデルの中には、ラバーを取り外すことでグリップを向上させられるペグを採用する車種もあるが、オンロード系の場合はアフターパーツに換装して対応する以外に方法はないのだ。 

そのため、ステップキット以外にフットペグのみを純正と換装できる製品をラインナップするリプレイスメーカーもある。

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ツアラー系やネイキッドなどの純正フットペグは、ライダーの靴底と接する部分にラバーを装着してあり、これによって振動伝達を削減して乗り心地を向上させていることも多い。これでは、リニアなステップワークは難しい。

基礎知識5:昔はバックステップ、今はステップキット

かつて、ステップを変更するアフターパーツはバックステップと呼ばれていた。これは、70〜80年代に市販車をレーサーに改造するときに、低いハンドルバーと併せて前傾ポジションを確立するため、ステップ位置を後方に移設したことに由来。90年代にはネイキッドブームが到来したが、この時代もバックステップが主流だった。 

しかし、現在のスーパースポーツは、純正でもステップはかなり後方に配置され、ネイキッドも昔のような〝殿様乗り〞の車種ばかりではなくなった。そのため、ステップをアフターマーケットパーツに換装する目的は、以前のように〝バック〞させることが目的ではないことが増えた。そのため、バックステップとは呼ばなくなりつつある。

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