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中野真矢さんが語る、オフロード練習の有用性【OFF RIDING PARTY】

新たなイベントOFF RIDING PARTY。なぜ、ライダースクラブがオフロードイベントを催すのか? その理由を理解してもらうために、オフロードでの練習がオンロード走行でいかに効果的かを、元MotoGPライダーの中野真矢さんが解説する。

オンロードに繋がるオフロード練習の重要性

2022年、ライダースクラブは新しいイベントをスタートさせた。ここで紹介するオフライディングパーティがそれだ。ライディングパーティの名を冠してはいるが、走るのはオフロード。走行会ではなく、初心者向けのスクールをメインとした内容となっている。 

ライダースクラブがオフロードイベントを催すことに、違和感がある方は多いだろう。確かに本誌は、オンロードでのスポーツライディングを愛するライダーに向けての誌面づくりを心がけている。取り上げる車両は、スーパースポーツが中心。ライテク記事にも力を入れてきたつもりである。 

では何故、今ここでオフロードイベントなのか? 

モトGPライダーをはじめ、オフロードトレーニングを取り入れているレーシングライダーは多い。それは、オンロードバイクでの技術向上に効果があるからだ。 

その理由については、次項で中野真矢さんに語ってもらっているので、そちらに目を通していただきたい。 

ともかくオフロードでの経験は、オンロードでの走りを向上させるという確信がある。より多くのライダーがオフロード走行を体験し、より豊かな、より上質なライディングエクスペリエンスを感じて欲しいのだ。オフライディングパーティはそのためのイベントだ。 

今後も継続して開催していくので、ぜひ一度ご参加いただきたい。必ず得るものがあるはずだ。

オフライパとは?

オフライパは「オンロードライダーのためのオフロードイベント」。オフに馴染みがないライダーも参加しやすいように、まずはビギナーを対象としてコンテンツを設定した。オフロードという環境とオフロードバイクに慣れることに始まり、オンロードでは試すのが難しいブレーキロックの練習や、先導付きでのモトクロスコース体験走行といったメニューが盛り込まれている。

オフライパ|オフロードライディングパーティ|RIDINGPARTY|中野真矢
HONDA CRF125F HONDA CRF125F
オフロード走行にはオフロードバイクが必要だ。でもオフロードバイクを所有していなくてもオフライパへの参加を可能とするため、2名で1台のシェアにはなるが、レンタルバイクとしてCRF125Fを用意。レンタル料は参加料金に含まれている。
HONDA CRF125F HONDA CRF125F
オフライパのインストラクターは、モトクロスのトップライダーが務める。だがカリキュラムは、オフロードビギナーを対象として構築されており、フォームやオフロードバイクを走らせるための基本動作といった、初歩から学ぶことができる。
オフライパ|オフロードライディングパーティ|RIDINGPARTY|中野真矢|モトクロスヴィレッジ|モトクロス
トップライダーと身近に交流できるのは、オフライパのポイント。コンセプトはライパと同様だ。今回は、インストラクターの一人、平田優さんがデモ走行を披露。間近で見る全日本モトクロス国際A級ライダーの走りに、参加者は喝采を送っていた。

オフロードはタイヤがグリップしない状態が重要(中野真矢)

近頃、オフロードにハマり気味という中野真矢さん。今回走らせたCRF125Fも最近手に入れた。中野さんがオフを走るのは、楽しいだけが理由ではない。オンロードで活かせるテクニックを学べるからだ。

現役時代から、オフロード走行をトレーニングに取り入れてはいたんです。チームの方針とかではなく、まったくの自主トレ。あまり積極的にではありませんでしたね。乗っていたのもトレール車とかでしたし、本格的にモトクロスに取り組んでいたわけではありません。モタードが流行り始めた頃でしたし、そっちの方がまだ走らせる機会が多かったと思います。 

どちらにせよ、シーズンオフに少し走る程度。オフロード走行を通じてテクニックを磨くというよりは、レーシングマシンに乗れない期間、バイクを走らせる感覚を忘れないようにという感じでした。 

実は、その頃はオフロード走行が楽しいと思えなかったんです。自分はオンロードで育って、オンロードのバイクばかり乗ってきましたから、そのクセが身体に染みついていました。今にして思えばオフロードのセオリーからまったく外れた乗り方をしていたんですね。

だから全然上手くならないし、乗っていて少しも面白くないんです。「シーズンオフもトレーニングしなければ!」という、プロのレーサーとしての義務感だけでオフロードを走っていました。 

その意識が変わってきたのは、引退した後です。仕事でオフロードを走る機会が結構あって、そういう時は大体オフロードのスペシャリストの方がインストラクターとして来ています。せっかくだから上手くなりたいので、乗り方のアドバイスをもらうようにしたんです。フォームの作り方や、荷重の掛け方といった、ごくごく基本の部分を教えてもらったら、全然走りが変わるんです。 

少しバイクが操れるようになったら、急にオフロードに対するイメージが変わって、俄然楽しくなりました。オンロードにはない、自分の引き出しにはなかったオフロードならではのテクニックを学べることが、今とっても楽しいんですよ。オンロードのライディングと共通する部分があることも理解できるようになってきましたし、オンロードに活かせるテクニックもありますよね。 

ジャンプする中野さん。ここで重要なのはステップワークとのこと。離陸直前に、ステップを踏み込み、サスペンションの反力を利用する

オンロードとオフロードの一番大きな違いは、やはりタイヤのグリップだと考えています。オンロードはタイヤがグリップしている状態が当たり前。オフロードのテクニックは、タイヤがグリップせず滑ることが前提で組み立てられていると思います。その〝グリップしない〞状態が、とても重要なんです。

自分が、バイクのインプレッションをする時、最初はゆっくり走ってブレーキをかけたり、サスペンションの動き確かめたりします。バイクの限界がどこにあるかを探るんです。それが分からなければ、スピードなんて出せません。「初めて乗るバイクで、速く走れて凄いですね」とよく言われますが、限界を見極めて十分なマージンを取って走っているんです。走り出して、1つ目のコーナーからヒザを擦りはしません。 

ブレーキの効き方とタイヤグリップの限界を見るには、ブレーキをロックさせるのが一番分かりやすい。限界を超えるとロックするわけですから。自分は必ず、そこをチェックします。ブレーキロックを繰り返していくと、どれだけブレーキングすれば限界を超えるのか、どういったブレーキングをするとロックするのかが見えてきますし、ロックした後のバイクの挙動も確認できます。これは、オンロード、オフロードを問わずに大きなメリットがあります。 

ですが、ブレーキロックには転倒の危険が伴いますし、勧めることはできません。オンロードでのブレーキロックは、正常な状態ではありませんから。その点、オフロードなら低い速度域でリスクが少なく、ブレーキロックを体験できます。 

路面のグリップと電子制御により、オンロードでのスライドはかなりレベルの高い領域。オフロードなら簡単にスライドを体験できるので、マシンの挙動や対処方を学べる

スロットルワークが丁寧になるところもいいですね。ラフに開けると、すぐにリアタイヤが滑りますから。スロットルワークにはうるさい方だと自負していたんですよ。でも、オフロードを走ると全然で、荒っぽく操作していたことに気づかされました。モトクロスの走りって、ワイルドに見えますよね? でも、実は物凄く繊細な操作をしているんです。 

オフロードバイクのサスペンションは、柔らかくてストロークも大きいので、ライダーからの入力に対してバイクの挙動が分かりやすいところもいいですね。ステップワークの練習などで、効果が大きいと思います。ステップを踏む感覚を身につけやすい。オンロードでコーナーを切り返す時、サスペンションの反力を利用します。でなければ、バイクが重くて動きません。オフロードバイクは、そうしたマシンの挙動を掴みやすいんです。 

オフとオンとでは、全然違う部分も確かにあります。そこは注意が必要ですが、オンロードに活かせるテクニックは少なくない。現役時代に、しっかりとしたコーチについてオフロード走行を学んでいたら、レースで違う結果が残せたのかな? と思うことがあるくらいです。自分は、オフロードの入り口に立ったばかりです。練習して、もっともっと上手くなりたいですね。  (中野真矢)

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