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元MotoGPライダー中野真矢さんがZ650RSをインプレッション

水冷パラレルツインを鋼管フレームに搭載したストリートファイターのZ650を、大幅仕様変更によりレトロテイストのネイキッドにアレンジしたのがZ650RS。2022年4月28日に国内デビューを迎えるこのミドルヘリテージモデルに、ファッショナブル系やミドルスポーツも好む中野真矢さんが試乗!

硬派に見えるが、軽量なボディが圧倒的な優しさを与えてくれる

かつてのバイクが持っていた雰囲気を、現代的な技術も用いながら再現するというのが、流行が続くヘリテイジというカテゴリーのコンセプト。カワサキは18年に、900スーパー4(通称Z1)を彷彿させるルックスのZ900RS/カフェを投入。日本国内では昨年まで3年連続で大型二輪免許クラスの新車販売台数トップを記録するなどの成功を収めている。 

そのカワサキが’22年型として新発売するのが、70年代Zの雰囲気が与えられたZ650RSだ。Z900RSがストリートファイターのZ900を土台に開発されたように、Z650RSはZ650が開発ベース。発表前から「ザッパーの再来」と、大きな話題となった。 

ザッパーとは、76年に登場したかつてのZ650を指す。その当時、カワサキはZ1で北米市場などを席巻していたが、さらにその地位を盤石のものとすべく投入されたのが、弟分のザッパーだった。Z1よりも軽快に扱えて、ナナハン(具体的にはライバルのホンダ・CB750フォア)よりも速くて、手ごろな価格というのが、ザッパーのコンセプト。ちなみにザッパーとは、風を切る擬音の「ZAP」に由来しているというのが定説だ。 

その当時のZ1とザッパーはどちらも空冷4気筒だったが、Z 9 0 0RSとZ650RSは、4気筒と2気筒となっている。これは現代のミドルクラスに「扱いやすさ」が求められるからで、エンジン形式は違えど、その出自は当時と同じなのだ。 

それはさておき、MotoGPライダーの中野真矢さんにインプレッションをお願いした。

「跨がってまず感じるのは車体のスリムさ。Z900RSイメージのまま燃料タンクが細身になった印象です。足着きがスゴくいいわけではないけど、車体が軽量かつコンパクトなので、不安は少ないです」 

ちなみにシート高は、Z900RSと同じく800㎜。身長167㎝の中野さんがZ650RSにまたがると、両足の母趾球が着く程度となっている。

「ハンドルは、シートに跨がって自然に手を伸ばしたところにある感じ。イマドキのスポーツネイキッドと比べて絞り角は深めです。その分もグリップ位置が手前になるので、あまり身長が高くないライダーでもレバーなどの操作がしやすいです。跨がった段階で、フレンドリーな印象を受けると思います」

ライディングポジションに優しさを感じ取った中野さんだが、その印象は走らせてみても同じだった様子。まず口にしたのは、水冷パラレルツインエンジンの扱いやすさだ。

「低回転域はどこからでも〝ついてくる〞印象。あえて2速発進もしてみましたが、まるで問題ありません。クラッチレバー操作も軽く、身構えることなくスッと走りはじめ、気持ちよくクルージングできます」 

ただし、優しさばかりがZ650RSの魅力ではない。「あまりに低回転域が力強いので、これは8000rpmくらいで終わりかな……と想像しながら高回転域まで引っ張ってみたら、レッドゾーンに入る1万rpmまでしっかり伸びました。すごくパワフルというわけではないけどパワーバンドが広いので、スポーティさをしっかり体感できるというのが意外でした」

ドライ路面だけでなく、ウエット路面でも走行した中野さんは「Z650RSなら雨でも楽しめちゃう」と言う。

「ツーリングでは、ウェットを含めていろんな路面状況に遭遇します。条件が悪い道でも、軽さと適度な出力のおかげで不安を感じずライディングできるのが魅力ですね」 

開発ベース車のZ650に対して、Z650RSはシートレールの跳ね上げを緩やかに設計。これが走りに与える影響も大きい。

「乗り味はゆったりしていて、リアサスペンションはモノショックながら、トラディショナルなジャパニーズネイキッドそのもの。ハンドルとシートとステップの位置関係も同様で、うまくバランスさせていると感じます」 

ドライコンディションのサーキットでスポーツライディングした時の印象は、「ペースが上がるとフロントフォークが奥まで入ってしまうのがややネック」としながらも、ここでも好印象につながる要素があるという。

「基本的にはストリートでカジュアルに乗るのが合いますが、前後サスペンションがよく動くので、体重移動やブレーキ操作を意識しなくても車体姿勢の変化を作りやすく、スポーツライディングにあまり慣れていないライダーが適度なペースで走らせるのにもちょうどいいはず。ルックスだけでなく、走りの楽しさも意外と詰まっていると思います」 

だからこそ、「Z650RSを、Z900RSと比べて評価するべきではない」と言う中野さん。Z900RSに対するZ650RSは、より軽快で手ごろな価格という点においてZ1とザッパーの関係性に似るが、Z650RSの存在意義、あるいは評価される部分は、Z900RSとは別の部分にあると分析する。

「ネオクラシックな雰囲気を持つミドルクラスのバイクとして考えたら、優しい乗り味で走りも楽しいZ650RSは魅力的。一方で、ベーシックな設計のため価格も抑えられているので、カスタムベースとしてもいいと思います。だから最初は、スタイリングに興味を持ってカジュアルに乗ってもらうだけでも十分。バイクの〝入り口〞になって、その先につなげてくれる能力を秘めたバイクだと思います」

“装備は極めてシンプルなのが良い”

細部の意匠は専用ながら、アナログの速度計と回転計の間に液晶パネルを配したメーターデザインはZ900RSと同様。液晶の表示内容も共通化され、航続可能距離や瞬間または平均の燃費も表示できる
アシスト&スリッパークラッチを採用した649cc水冷パラレルツインエンジンは、最高出力や最大トルクを含めてZ650と共通。車体下配置のマフラーレイアウトも同じだが、カバーのデザインは専用
スイングアームピポットからリアアクスルまでをできる限り直線的にデザインすることで、軽快かつナチュラルな旋回性を狙ったスチール製スイングアームも、ベースモデルのZ650譲りのディテールだ
Z900RSと同じく、前後ホイールはレトロなワイヤースポークホイールを連想させるデザイン(リアは900と異なる専用サイズ)。フロントブレーキは片押し2ポットキャリパーのベーシックタイプだ
Z650は段付きタイプだが、Z650RSは前後一体型の専用シートを採用。レトロな雰囲気や走行時の快適性を大切にしながら、前側を絞り込むことで足着き性を高めている。シート高はZ650より10mm増の800mm
丸みを帯びた専用設計の燃料タンクは、コンパクトな雰囲気を強調することでスリムなエルゴノミックパッケージの確立に寄与。容量はZ650より3L少ない12ℓで、WMTCモード値により計算した航続距離は276km
ストリートファイター系の意匠を持つ現行Z650をベースに開発。高張力鋼管製のトレリスフレームを継承し、これにつながるシートレールの角度を緩やかに。単体重量はZ650比1kg減の188kgだ

Z650RS 50th Anniversaryもある!

900スーパー4(通称Z1)をルーツとするZシリーズの50周年を記念した、火の玉カラーの特別仕様も用意される。燃料タンクはキャンディカラーが独自技法で重ね塗りされ、上部に50周年ロゴを装備。サイドカバーや左右エンジンカバーにも専用エンブレムがあしらわれ、前後ゴールドホイール、シボ入りシート表皮、グラブバーを標準装備する。

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