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帰ってきたスーパーモタード|KAWASAKI KLX230SM【中野真矢インプレッション】

国産スーパーモタードの先駆者としてDトラッカーシリーズを手がけたカワサキが、一時的なブームは下火となった2022年に、突如として新たなモタードモデルを発売。搭載するエンジンは232㏄空冷仕様で、フレンドリーな乗り味も魅力といえる。

過去の250ccモタードよりひとまわり小柄で軽快

スーパーモタードとは、8割程度の舗装路(ターマック)と2割程度の未舗装路(ダート)で構成されたコースで競われるレースのこと。そのルーツは、ロードレースやモトクロス、フラットトラックのレーサーたちを集めて、その中で一番速いライダーを決めた米国のテレビ企画とされる。これに参戦していた欧州のライダーがコンテンツを自国に持ち帰り、とくにフランスで競技として人気に。そのため、「スーパーバイカーズ」だった米国での呼称が、フランス語の「スーパーモタード」に変換された。 

日本でこの競技が広く知られるようになったきっかけは、当時の欧州のトップ選手だったボリス・シャンボンが’99年秋に来日して、筑波サーキットで実施したデモ走行。大迫力のドリフト走行に多くのライダーが衝撃を受け、それまでこの競技がほとんど知られていなかった日本でも、レースやストリートでのスーパーモタードブームに発展していった。 

ちなみにスーパーモタードは’02年から世界選手権も開催され、エクストリームスポーツを集めた米国のXゲームズにも取り入れられていた時期がある。そのため、現在は英語の「スーパーモト」と呼ばれるほうが世界的にはメジャー。日本でもレースは「全日本スーパーモト選手権」として開催するが、一般ユーザーには現在も「スーパーモタード」や、これを日本的に略した「モタード」と呼ばれることのほうが多い。 

カワサキは、日本でモタードブームに最初の火が着く1年前の’98年に、オフロードモデルKLX250をベースに開発したモタードモデルのD-トラッカーを発売していた。’90年代には日本でもスーパーモタードのレースが開催され、オフロードモデルにオンロード用ホイール&タイヤを装着したカテゴリーも多少は浸透していた。だが、まさかカワサキも、その後に大きなモタードブームが日本にやってくるとは思っていなかっただろう。 

さてそんな国産メーカーメイドのモタードのパイオニアであるカワサキが、’22年10月に新たなモタードモデルを発売開始。それが、オフロードモデルのKLX230SをベースとしたKLX230SMだ。

「KLX230シリーズは気になっているバイクだったんです。とくに、同じエンジンと車体を使うコンペティションモデルのKLX230Rが……」と話すのは、オフロード遊びにも興味を持つ元MotoGPライダーの中野真矢さんだ。

このシリーズは、しなやかなスチール製フレームに空冷仕様の232cc単気筒エンジンを搭載し、幅広いユーザーにオフロードライディングの楽しさを訴求。日本では’19年10月に公道走行可能なKLX230が新規導入されたが、こちらは前後サスペンションのストローク量が超本格的でシート高が885mmもあったため、’22年にはローダウンサスなどを採用してシート高を830mmとしたKLX230Sに切り替えられた。今回のSM仕様は、Sをベースに前後輪を17インチ化しロードタイヤを装着、フロントフォークの倒立化やフロントブレーキディスクの大径化、新作LEDヘッドライト&バイザーやラバー付きステップの採用などが施してある。

「まず感じるのは、非常にフレンドリーなエンジン特性ということ。オフロードを走ることを主目的に設計されているため、クセもなく滑らかなフィーリングで、パワフルではないけど低回転トルクがあります。モタードと聞くと戦闘的なイメージを受けやすいですが、発進でクラッチをつなぐのにも気を遣わないので、ストリートで操るのも簡単です」 

それでいて、232cc空冷単気筒で19psというスペックが、大排気量車とはまた違うスポーツライディングの楽しさも生み出すという。

KAWASAKI KLX230SM

「トルク重視のエンジンとはいえパワーバンドもしっかりあるので、何速でどのあたりの回転を使って走るのか……というようなことを考える勉強になります」 

ただし、「このKLX230SMがもっとも輝くのは、サーキットではなく公道」と中野さん。「低速のコーナーが乗りやすく、車体はとにかく軽いので、市街地で力を発揮するバイクです」と話す。

「サーキットだと高回転を多用しますが、ラバー付きのステップになっていることもあって振動もあまり多い感じではありませんでした。これなら、ツーリングでも快適だと思います。それ以上に公道向きだと思える要素は、かつての水冷250ccモタードと比べてもひと回りコンパクトな車体。おかげでとにかく扱いやすいフィーリングがあります」

前述のように日本でもかつてスーパーモタードがブームとなった時期があり、当時はカワサキだけでなくホンダ、ヤマハ、スズキもメーカーメイドの公道用モタードを市販していた。しかし排ガス規制強化の影響も受け、’17年までに相次いで生産終了。シリーズ末裔のDトラッカーXも’16年5月にファイナルエディションが発売された。

「だからこそ、今モタードに乗っていたら新しい感じがして注目を集めやすいし、オシャレなイメージもあると思うんですが、ユーザーがオフロードモデルをモタード化してきちんとバランス取ろうとすると、コストも手間もかなりかかります。じつは以前に、モトクロッサーベースで製作経験があるのでよくわかります。メーカーがこうやって市販車として発売してくれるというのは、そういうことを考えたらとても価値があると思います」 

しかもその価格は57万2000円で、オフロードモデルのKLX230Sより6万6000円アップしたとはいえ、かなりリーズナブルだ。

「もちろん欲を言えば、リアのABSキャンセル機構とかギアポジションインジケーターなど追加して欲しい機能もありますが、この時代に50万円台というのはスゴいこと。それでいて、軽量コンパクトで乗り味はフレンドリーです。本誌読者には、サーキット走行も楽しむスーパースポーツ好きな方も多いと思いますが、そういうライダーが普段のツーリング用に、セカンドバイクとして所有するのにも確実に向いています!」

KAWASAKI KLX230SM

  • エンジン:水冷4ストローク直列4気筒 4バルブ
  • 排気量:232cc
  • 最高出力:19ps/7600rpm
  • 最大トルク:1.9kgf・m/6100rpm
  • シート高:845mm
  • 車両重量:136kg
  • 価格:57万2000円
KAWASAKI KLX230SM
232㏄空冷単気筒エンジンは燃料噴射マップや大気圧補正が見直されているが、最高出力や最大トルクの数値と発生回転数はオフ車のKLX230Sと同一
KAWASAKI KLX230SM
ステップは、ストリートでの快適性を向上させるため振動伝達を軽減するラバーパッド付きに(オフ車のKLX230Sはグリップ重視でラバーなし)
KAWASAKI KLX230SM
KLX230Sをベースに前後輪は17インチスポークホイール化され、オンロード用チューブタイヤを装着。フロントブレーキディスクは300㎜に大径化
KAWASAKI KLX230SM
シングルピストンキャリパーと組み合わされるリアブレーキディスクは、220㎜径でKLX230Sと共通。シンプルなスチール製スイングアームを備える
KAWASAKI KLX230SM
メーターは液晶フルデジタル表示式ながら、ベースがオフ車なのでとてもシンプル。燃料計や時計の表示機能を備えるが、ギヤ段数は表示されない
KAWASAKI KLX230SM
純正アクセサリーには、コンパクトなリアキャリヤ(1万9140円)やこれとセット装着できるETC2.0車載器キット(4万8180円)などが用意されている
KAWASAKI KLX230SM
ブレース付きハンドルバーはKLX230Sと共通。燃料タンクは7.4L容量と少ないが、WMTCモード値燃費では約247km走れる計算
KLX230SよりもコンパクトなLEDヘッドライトとメーターバイザーを装備。フロントフォークも、Sの正立式から37㎜径の倒立タイプに換装されている。ホイールトラベルは204㎜でSより長い
KAWASAKI KLX230SM
ノッチ式のプリロード調整機構を備えたニューユニトラック式リアサスペンションは、168㎜のストローク長。これはKLX230をベースにローダウン化が図られた現行のKLX230Sと同じ
KAWASAKI KLX230SM
純正装着タイヤは、過去にカワサキのDトラッカーXやホンダのCRF250Mも採用したことがあるiRC製のRX-01。iRC井上ゴム工業はモトクロスやミニバイクで高い評価を得ている日本のタイヤメーカーだ

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