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60歳以上のライダーによるレース “OVER60Kid’s”初開催

60歳以上を対象にしたエンジョイレースが、6月26日(日)に茨城・筑波サーキットで初開催された。その名も“OVER60Kid’s”。60歳から82歳までの“子供たち”が自分自身との戦いを楽しんだのだ。

OVER60Kid’s

日本ロードレース選手権第5戦に併催して、〝オーバー60キッズ〞という60歳以上のライダーを対象にしたレースが、筑波サーキットで行われた。このレースの趣旨は3つあり

『①後進の手本となるような紳士のレースを見せましょう。過激な走行、激しい転倒は禁止です』

『②エントリーフィーの一部を、世界を目指す若手ライダーに授与します』

『③予選・決勝は通常のレースと同じ流れで行います。上位だけの表彰式は行わず、チェッカー後に全員がストレートに並んで一人ずつ改めて紹介されます』

というもの。

レースを企画したのは、レース専門誌の編集長をしている青木淳氏で本人もエントラントとして参加。「企画した立場なので勝っちゃいけないからね」と言いつつ、2位でゴールしていた。エントリーの大半を占めていたのが、BMW G310R。

BMWモトラッドの武藤昇氏が、SNSでプライドワン和田功一氏の投稿を見てこのレースを知り「G310なので爺さん10人は集めますよ」と青木氏に連絡。〝爺さんいちまる〞Tシャツもノリで製作し、14人のG310ユーザーがエントリー。残念ながら1人だけ都合がつかず欠場となったが、全20台中13台と半数以上のG310Rがグリッドに並んだ。

決勝当日は、このレースに合わせるように厳しい暑さに見舞われ、普通に外にいるだけでも汗だくになるほどだった。

そんな中で、レーシングスーツを着て走るのは大変なコンディション。参加者を少しでも楽にしようと、Bパドックからピットまで送迎車が運行。「お迎えが来たよ〜」「シャレにならないな〜(笑)」などと冗談をいう場面もあったが、これは好評だった。

最年長は群馬のBMW正規ディーラー・モトパークの八木原昇さんで、何と御年82歳!猛暑のためミーティングで周回数を減らそうかという話しも出たが、最終的に八木原さんの「12周くらい大丈夫」というひと言で、予定通りに行われた。

「走るのが好きな人が、けっこういるもんだな。20人も集まるなんてね。みんな無事に走り切ることができたので、よかったんじゃないかな。このレースは、一部の人は競争していたかもしれないけれど、基本的に自分自身との戦いだからね。走り終わってからは、取材とか一緒に写真を撮ってとか声をかけてもらいましたが、歳を取っているだけで注目されても困るんですよね(笑)」

と八木原さんはいうものの、NHK水戸支局も取材に駆けつけるほど、82歳という年齢はインパクトがあったのだろう。もてぎの〝もて耐〞にも参加しており’02年に初めて最年長賞を受賞してから何度ももらっていたため、’18年を最後に、その賞自体がなくなってしまったという。やっぱり82歳ってすごい。

原田哲也・伸也兄弟がミニバイク時代に一緒に走っていた野崎幸雄さんは67歳。原田兄弟と再会してから、G310Rでサーキットを走り始めたという。野崎さん自身もバイク屋さんを営んでいるが、伸也氏がBMWモトラッド八千代に務めていることもあり、すべてを任せている。

「レースは一人ではできないですし、まわりにレースのプロがいるので安心して任せています。順位ははなからアタマになく、転ばずに完走できればいいというスタンスです。同年配の方ばかりなので、親近感が湧きますし、初めてでも友だちのような感覚で楽しかったですよ」

そして今回、最年少で参加された吉田功さんは、5月に還暦になったばかり。G310Rで’18年からレースを始めたそうで、昨年までは、G310トロフィーに参戦。今年から筑波TTを走っている。

「武藤さんに『参加資格取れちゃいましたよね?』と誘っていただきました。今シーズンから筑波TTに出ているので、練習になるかと思いましたが、とにかく暑すぎました。当然僕よりご年配の方ばかりなので、負けられないですよね。いつもより上位を走ることができたので、楽しかったです」
 
12周を走り切った20名の〝60歳以上の子供たち〞は、グランドスタンド前のホームストレートに並び、一人一人アナウンスされると思い思いの笑顔を見せていた。

予選、決勝とKTM RC390をライディングし、圧倒的な速さを見せた山崎武さん(右から2人目)。昨年まで全日本で活躍した小室旭さん(右から3人目)が全面的にバックアップしていた
「ゆきおさーん」とみんなから慕われている野崎幸雄さん。今回も応援に多くの方が筑波サーキットに駆けつけていた。本誌アドバイザーの原田哲也さんとは、プライベートでツーリングに行く仲だ
「走っているときは大丈夫なのですが、とにかく暑かったですね。ガソリンスタンドでバテていました。ゴール後に筑波のスタッフが配ってくれたお水で生き返りました」と13人を集めた武藤昇さん
「若いころは情報もなく、いつかはレースをしてみたいと思っていた」という吉田功さん。今ではサーキットを走るのが日常生活の一部となっており、9月開催のもて耐にも出場するそうだ
13~19歳の若手ライダーがNSF250Rで参戦するチャレンジクラス。表彰台に上がったライダーに、OVER60Kid’sトップでゴールした山崎さん(右から2人目)が、代表として賞金目録を渡した
エントラントに配られた“爺さんいちまるTシャツ”。『還暦過ぎても走りは現役!』とプリントされているが、皆さん生涯現役なのでは⁉

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