BMW M 1000 R懐の広い最強ネイキッド
S1000RR試乗会と併せて行われたのが、ブランニューモデルのM1000Rの試乗会。こちらはマシン特性に合わせ、一般公道で行われた。史上2台目となる、Mモデルの走りとは?
強烈なエンジンパワーをフレンドリーに調教
このM 1000 RはBMWモトラッドにとって、M 1000 RRに続く2台目のMモデルであり、四輪のMシリーズ同様、非常に優れたスポーツ性能をもっている。その最たるコンポーネントが、新型S1000RRと同仕様のエンジンである。
例えばS1000Rの場合、スーパーバイクであるS 1000 RRをベースにネイキッド化されている。もちろん、単純にフロントカウリングを取り払い、アップタイプのハンドルバーを取り付けただけではなく、ディメンションやサスペンションセッティングなど、しっかりとバランスを取り直してリリースされている。
そのなかで、RRと大きく異なっているのが、搭載されているエンジンである。一般道メインであるRに、RRほどの強烈なパワーは必要ないため、9000rpmを境にカム特性が切り替わる可変バルブタイミング機構が省かれた、165hp仕様のエンジンが搭載されている。とはいえそれでも、正直必要性を感じないほどパワフルなのだが……。
一方、このM 1000 Rには、前述の通り新型S 1000 RRと同仕様となる210hpのエンジンを搭載。スプロケットもS 1000 Rの45Tから47Tとしてより高速化が図られ、45hpもパワフルに。ウイングレットも伊達ではなく、220㎞/hで前輪荷重が11㎏増大する。さらにSモデルとはハンドルバーの形状が異なり、パワーが増したマシンに対応するため、よりフロントエンドに荷重が乗る設定になっている。それでいて、前傾がきついわけではなくフレンドリーさも兼ね備えている。
走り出してみると210hpを感じさせない乗りやすさを見せてくれた。S 1000 RRにしても、スーパーバイクのベースマシンとしてはトップクラスのフレンドリーさを持っているのだから、これは納得であるが、ライディングポジションだけでなくサスペンションの設定にも扱いやすさを感じさせる。
イージーに変更できるライディングモードに連動して、エンジンの出力特性だけでなく、各制御系も最適化。そしてサスペンションの減衰力特性も変更される。M 1000 RRが機械式サスペンションとなっているのに対し、こちらはセミアクティブ式。これも刻々と状況が変わる公道においては歓迎すべき点である。
しなやかな足まわりりと過激過ぎないスロットルレスポンスに、210hpのマシンを操っているという緊張感はあまりない。とはいえである。その実力を味わおうとアクセルをワイドオープンすると……ワープしていくかのような加速フィーリングは、アップライトなポジションの影響もあり、RR以上である。
過去のBMWに感じられた「バイク側から手を出し過ぎてくる」感触はなく、ライダー主体のコントロールに重きを置きつつも、マシンが安全を担保する。その手法と精度には、大いに感服させられる。
SPECIFICATIONS
エンジン | 水冷4ストローク直列4 気筒DOHC4 バルブ |
総排気量 | 999cc |
ボア×ストローク | 80×49.7mm |
圧縮比 | 13.3:1 |
最高出力 | 210hp/13750rpm |
最大トルク | 113Nm/11000rpm |
変速機 | 6 速 |
クラッチ | 湿式多板クラッチ(アンチホッピング)、自己倍力機能付き |
フレーム | アルミニウム製ブリッジタイプ フレーム |
キャスター /トレール | 24°/96.3mm |
サスペンション | F=φ45mmフルアジャスタブル倒立フォーク R=フルアジャスタブルモノショック |
ブレーキ | F=4ポットキャリパー+φ320mmダブルディスク R=1ポットキャリパーφ220mmシングルディスク |
タイヤサイズ | F=120/70ZR-17 R=200/55ZR-17 |
全長×全幅×全高 | 2085×996×1176 |
ホイールベース | 1455mm |
シート高 | 830mm |
車両重量 | 199kg |
燃料タンク容量 | 16.5ℓ |