KAWASAKI MEGURO K3 インプレッション|元MotoGPライダーとバイク女子が気になるバイクに乗ってみた!
日本のバイク史に燦然と輝くブランド“メグロ”を、カワサキが復活させ誕生したメグロK3。だが、エクステリアこそ細やかに手が加えられているが、エンジンや車体はW800と基本的に共通。単に外装をお色直しした着せ替えモデル? それとも固有の世界観を持つ独立したモデルなのか? 中野真矢さんと平嶋夏海さんが、ホンネで語るインプレッション。
PHOTO/H.ORIHARA TEXT/K.ASAKURA 取材協力/カワサキモータースジャパン (TEL)0120-400819 https://www.kawasaki-motors.com/mc/
着せ替えモデルではなくメグロK3だけの魅力がある
中野:今回はメグロK3に乗ってみたんだけど……どうだった?
平嶋:カッコイイですよね! メグロK3は初めて乗ったんですよ。ベースモデルのW800なら、STREETとCAFEに乗ったことがあります。
中野:比べると、どう?
平嶋:私はメグロK3の方が好きですね。ディティールのこだわりもステキですけど、特に気に入ったのはポジションです。W800 CAFEはハンドル位置が好みじゃなかったんです。私の体格だと、ハンドルを切った時にアウト側の腕が伸びきっちゃうんです。
中野:それは、小回りする時とかに不安を感じるよね。
平嶋:そうなんですよ。もともとネオクラシック系のデザインは大好きですから、W800 CAFEもカッコイイなあって思ってたんです。取材で乗せていただいた時、自分が走っている写真を見て、バイクと人が走っている姿がイイなあと感じました。実は愛車候補の1台でしたけど、ハンドルが合わなくて諦めたんです。でも、メグロK3のポジションはスゴく気に入りました。3年前にメグロK3があったら、買っていた可能性は大きいですね。
中野:ポジションが合うか合わないかは大きいよね。いくらカッコよくても、乗りにくく感じるバイクは楽しく走れないから。
平嶋:メグロK3はハンドル幅自体は広めですけど、高さとライダーとの距離感が良くて、ハンドルを切ってもコーナーで腕が伸びきらずに走れました。バイクが、自然と走りやすくてキレイなポジションを作ってくれるように感じました。
中野:シートがフラットで前後長に余裕があるから、着座位置を選べるところも大きいと思うよ。僕も大柄ではないけど、平嶋さんとは身長で10cm以上は大きい。それでも、ポジションに窮屈さを感じたりはしないから。
平嶋:中野さんは、メグロK3をどう評価しているんですか?
中野:実はね、僕も大好き! というか、自分にとって新しいバイクの楽しみ方に気づかせてくれた、記念碑的な存在なんだよね。
平嶋:熱が入ってますね!
中野:僕はレースで育った人間だから、現役時代は純レーサーばかり走らせてきたし、引退後もスポーツ系のバイクに乗ることが多かったんだ。ネイキッドでもスポーティなタイプばかり。自分自身、メグロK3みたいなオーセンティックな形のバイクに興味がなかったんだよね。バイクは速くてナンボだろ?って。(笑)
平嶋:そこは、やっぱりレーシングライダーですもんね。
中野:メグロK3が出た時、仕事で乗ることになったんだけど、走らせるまでは正直なところ興味がなかった。だって「速さ、軽さ、レスポンス」に見るべきところがないでしょ?でも、乗ってみたら手のひらを返したよね。3000rpm~5000rpmくらいで流すとスゴく気持ち良い。バイクにこんな楽しみ方があったのかって、目からウロコが落ちた。
平嶋:エンジンいいですよね。
中野:いいっ! 鼓動感を楽しむっていうのかな? コーナーの立ち上がりとかで、ドロロロ……って、加速していくところとか最高に気持ちいい。
平嶋:私、実は鼓動感とかあまり興味がないんです。
中野:え、そうなの? このバイクの醍醐味じゃない?
平嶋:エンジンの味とかより、ツーリングで快適に走れるかが気になっちゃいます。今日は走ったのはサーキットでしたけど、下道でのツーリングだったらと想定して走ってみたんです。気になったのは、3000rpmくらいの振動ですね。ちょっと強い、長距離を走ると腕がシビれちゃうかも? と思いました。その回転域さえ外せば、振動は収まるんですけどね。一番気持ち良く走れたのは、5000rpmくらいで流して走る時でした。
中野:そういう見方もあるか。
平嶋:あ、低回転域のトルク特性はスゴく良かったです。下から、しっかりトルクがあって、Uターンとか無敵です。このバイクに乗っていたら、一生エンストしないなって思いましたもん。
中野:そう聞いて、わざとエンストさせるような荒いクラッチ操作をしてみたんだよね。でも、やっぱりエンストしなかった。
平嶋:でしょう?
中野:アイドリングの少し上くらいまで回転落としてもバックトルクが小さいし、そこからスロットルを開けた時もトルクの立ち上がりがスムーズでギクシャクしない。
平嶋:私なんかスロットル操作がヘタですから、低速が扱いやすいのは助かります。構えずに、スロットルを全開にできました。
中野:〝開け口〞のフィーリングいいよね。そこが神経質だと、体が構えちゃうから、乗っていて疲れる。メグロK3は上半身が全然疲れない。リラックスしたまま、スロットルを開けることを楽しめて、その楽しさがズーッと続く。乗り手を驚かせないよね、鼓動感の演出とトルク変動のバランスが絶妙。
平嶋:絶賛ですね。一番気に入っているところはどこですか?
中野:やっぱりエンジン! 乗り味も見た目も好きだな。あとは、曲がって止まればそれでいい。(笑) 十分に曲がるし、ちゃんと止まるしね。
平嶋:スポーツライディングするにはどうですか?
中野:そういうバイクじゃないでしょう? スーパースポーツのように、クイックに曲がるのは得意じゃないよね。その分、大きなコーナーをワイドラインで走るのは楽しいよ。
平嶋:わかります!
中野:サーキットを攻めるとしたら、フロントのサスペンションが動きすぎ。でも、個人的には気にならない。たとえばMotoGPマシンは、ゆっくり走っても敏感。ピットロードを走る時ですら緊張する。メグロK3はゆっくりが楽しいバイクなんだから、サスペンションが柔らかいことも、乗り心地の良さだと受け取れる。
平嶋:タンデムで後ろに乗っても快適です。シートはフラットですけど、後端に高さがあって、ストッパーになっているんです。グラブバーも掴みやすくて、体が安定します。
中野:僕はタンデムで後ろに乗ることはほぼないから、気づかなかったポイントだなあ。
平嶋:女子的にはポイント高いですよ。でも聞いてください、一カ所許せないところがあるんです!
中野:どこ?
平嶋:サイドカバーの「メグロ」の文字がステッカーなんです! タンクのエンブレムみたいに塗装にして欲しかったですよ。
中野:確かに(笑)。 せっかくディティールにこだわっているのにね。
平嶋:ステッカーでも、切り文字にして欲しいですよ!
中野:まあまあ(笑)。でも、乗って楽しいし、所有している自分を想像したくなるバイクだよね。欲しいっ!
平嶋:乗ったバイク全部欲しくなってるじゃないですか(笑)。
中野:だって、欲しいんだから仕方ない。
平嶋:まあ、バイクってそういうものですよね!
MEGURO K3
- エンジン:空冷4ストローク並列2気筒 4バルブ
- 排気量:773cc
- 最高出力:52ps/6500rpm
- 最大トルク:6.3kgf・m/4800rpm
- シート高:790mm
- 車両重量:227kg
- 価格:135万3000円