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海外進出の原動力となった、大排気量モデルの大名跡|Roots of W

Wはカワサキの伝統シリーズの中で、もっとも古く、そして複雑な歴史を持つ。Wシリーズ第1号となる650W1にはカワサキという社名が冠されているが、その車体構成部品の6割以上は目黒製作所のスタミナK2と同一である。そんなWの誕生から最新のメグロK3まで、その系譜を追っていこう。

二輪産業勃興期の紆余曲折に翻弄されつつ生まれたバイク

カワサキ初の大型車650W1は、1966年に発売された。そのルーツは、1960年に目黒製作所が販売したスタミナK1で、これはBSA・A7シューティングスターを規範にしたといわれる。直立した直列2気筒エンジンのみならず、スタイルも英国車然としているのはそのためだ。

しかしその年、目黒製作所は経営難に陥っており、小排気量バイクを生産していた川崎航空機と業務提携する。1962年にはカワサキメグロ製作所と社名変更したが、2年後に倒産。同社を吸収した川崎航空機は、K1の後継機を「カワサキ500メグロK2」の車名で発売した。 

2021年、カワサキがメグロのブランド名を復活させ、車名をK3とした背景にはこんな歴史がある。 

1966年、川崎航空機は650W1を発売。これは北米市場を意識した世界戦略車でもあり、W1S(W2SS)、Wと改良を重ね、650RS(W3)を登場させる。だが皮肉なことに、カワサキ自身が開発した直4スーパーバイク・Z1/Z2により、直列2気筒のW3の存在感は登場時すでに希薄だった。 

そして時を経ること四半世紀、カワサキはヘリテイジモデルとしてW650を発売。その後、W400、W800と発展させたばかりか、メグロK3を発売。ブランド価値をいっそう高めたのである。

【1965】500 メグロK2:メグロの設計を引き継いだカワサキ初の大型バイク

当時の国産車最大排気量の497cc直列2気筒エンジンは36psを発生、最高時速165km/hをマーク。だがホンダCB450の動力性能が上回っており、技術開発において後塵を拝していたことがメグロ倒産の要因といわれる。

500 メグロK2
【1965】500 メグロK2

【1966】650W1:高速道路時代到来に合わせ排気量とパワーを大幅にアップ

ボアを66mmから74mmに拡大して排気量を624ccとし、最高出力を9psアップの45psまで引き上げた。最高時速は180km/hまで伸び、ライバルと比べても遜色のない動力性能を獲得。ミッション別体式の右シフトを採用。

【1966】650W1
【1966】650W1

【1970】W1SA:バーチカルツインの改良で熟成の域に達したダブワン

改良を重ねた空冷OHVバーチカルツインの最高出力は53psまで高められ、最高時速は185km/hまでアップしたほか、リンク機構によってシフト操作を右から左へ変更。大陸モータース製サイドカー付きも販売された。

【1970】W1SA
【1970】W1SA

【1973】650RS(W3):初期Wの最終型となった伝統のOHVバーチカルツイン

車名は650RS(ロードスター)で、W3は通称。空冷OHVバーチカルツインは健在で、インナースプリング式フロントフォークとフロントにダブルディスクブレーキを採用。足まわりの現代化によって走行性能が高まった。

【1973】650RS(W3)
【1973】650RS(W3)

【1999】W650:20世紀末に突如として現れた往年のWシリーズのオマージュ

ネオクラシックと呼ばれる復刻版は、’80 年代以降に突然と登場する傾向があり、W650もそういうモデル。造形美を重視したエンジンは、バーチカルであることと675ccという排気量を継承するが、まったくの新設計だ。

【1999】W650
【1999】W650

【2007】W400:普通二輪免許で乗れて取り回しもしやすいモデル

日本の免許制度に合わせた400cc版。W650と同様、ベベルギアでカムを駆動させる。シート高を35mm下げて765mmとしたことで扱いやすさも向上させた。大型二輪免許を持たない人だけでなく、身体の小さな女性にも扱いやすい仕様としている。

【2007】W400
【2007】W400

【2011】W800:厳しい規制に対応できず絶版になるもすぐに復活!

排ガス規制に対応させるため、排気量アップとフューエルインジェクションを採用した、現代Wの第2世代。ベベルギアが美しいエンジンの造形はそのまま、ビキニカウルを装備するカフェスタイルも併売。’16 年に生産終了となるも’19 年に復活。

【2011】W800
【2011】W800

【2021】メグロK3:往年のブランドを復刻させ未来へと伝統を受け継ぐ

W800スタンダードをベースとして、上質な銀鏡塗装とマットブラックで往年のメグロを思わせる仕上げとしたモデル。タンクにはメグロのアルミバッジが誇らしく飾られるほか、専用表皮のシートを装備。ハンドルバーはW800ストリート用を備える。

【2021】メグロK3
【2021】メグロK3

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