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【KAWASAKI Ninja ZX-10R KRT EDITION】乗ればわかる熟成のスーパースポーツ|中野真矢&平嶋夏海 インプレッション

プロダクションレースの世界最高峰、SBKで6連覇という偉業を打ち立てたNinja ZX-10R。そのSBK王座獲得マシンの試乗経験もある中野真矢さんと、リッタースーパースポーツはビギナーの平嶋夏海さんの二人が、それぞれの立場からNinja ZX-10Rを走らせての想いを語る。

PHOTO/H.ORIHARA TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン 0120-400819 
https://www.kawasaki-motors.com/mc/

カワサキスポーツの象徴は優しい? それとも難しい?

中野:さあ今回は、カワサキの誇るスーパースポーツのフラグシップ、Ninja ZX-10Rに乗ってみました! 僕は、歴代Ninja ZX-10Rに大体走らせてきた経験があるんだけど、平嶋さんは?

平嶋:初めてです。フルサイズのリッターバイクに乗る時は、いつも緊張しちゃうんですけど、今回はスーパースポーツじゃないですか? いつも以上にビビりが入って、昨日の夜からカタくなってました。

中野:そんなに緊張しなくても、大丈夫だと思うけど?(笑) で、走らせてみて、どう感じた?

平嶋:正直に言っていいですか?

中野:もちろん。

平嶋:私には敷居が高いなあ……って、思いました。

中野:え、そう!? すごく良いバイクだと思うけど? 熟成に熟成を重ねられていて、僕はNinja ZX-10Rシリーズの完成形とすら思っているんだ。

平嶋:もちろん、乗りにくいとかじゃないんですよ。私のスキルとか、体格からくる話です。まず、シートが高いじゃないですか? 車体にもボリュームがあるし、跨った瞬間に、コレは厳しいなあ……って。

中野:ソレはあるかもしれないね。足着きがスゴく良いってバイクではないからね。最近のリッタースーパースポーツとしては平均的だけど。

平嶋:私は、リッタークラスのバイクには、やっぱりカベを感じるんですよね。小柄ですから。あと、乗りこなすのが難しいと感じました。パワーが凄まじいこともありますけど、車体が手強いというか……。

中野:そうかな? エンジンは扱いやすいし、フレームはしなやかで乗りやすいと思うけど?

MotoGPの息吹を感じるSBKで時代を築いたのは必然【中野真矢】
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平嶋:ソレは中野さんだからのコメントじゃないんですか?(笑)

中野:いやいや、一般的なライダーの目線で考えてるつもりだよ?

平嶋:そうかなあ?(笑)さっきも言いましたけど、乗りにくいってわけではないんです。これまで、Ninja ZX-Rシリーズは、Ninja ZX-25RとNinja ZX-4RRに乗ってきたじゃないですか? それで私は、スーパースポーツバイクって、少し体重移動するだけで、クルッとバイクが勝手に曲がってくれるものだと思い込んでいたんです。ですけど、Ninja ZX-10Rは、ライダーのやることが多いな、と。コーナーではしっかりブレーキをかけて、意識してバイクをバンクさせて、ガッツリ体重移動してって……。自分のウデの無さを、バイクに教えられた感じです。こう走らせたいという思いはあるんですけど、どうしたらいいのかわかりません。

中野:そういうことか。まあ、200psオーバーだし、高荷重設定のセッティングではあるからね。リッタークラスのスーパースポーツって、クルマでいえばスーパーカーだと思うんだよね。ハイっと気軽に乗れても、乗りこなすのは難しいかもしれない。Ninja ZX-10Rは、本物のピュアなスーパースポーツバイクだから、ライディングスキルのレベルの話じゃなくて、乗り方から変えていった方がいい。

剛性は高いがしなやかなフレーム安定感と軽快さのバランスが絶妙
サーキットでのハイスピードランを前提としたフレームは、高荷重の限界走行でのしなやかな乗り味が特徴。「基本的に安定志向で、それでいて鈍重ではない。この車体はレースで強い。自分はサーキット育ちですし、こういう車体は大好きです」
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サーキットでのハイスピードランを前提としたフレームは、高荷重の限界走行でのしなやかな乗り味が特徴。「基本的に安定志向で、それでいて鈍重ではない。この車体はレースで強い。自分はサーキット育ちですし、こういう車体は大好きです」

平嶋:そうなんですか?

中野:下半身の使い方が重要なんだよ。ここで説明を始めると、ライテクの話になっちゃうから省くけど。スーパースポーツの乗り方がわかるようになると、このバイクの良さもわかると思うよ。

平嶋:そうなんですね。乗り方は教えてもらいたいですね。じゃあ、乗り方がわかったとして、中野さんがこのバイクで気に入っているところを聞かせてください。

中野:うん。バイクに跨って、最初に感じたのが、ZX-RRに通じるものがあるってこと。

平嶋:中野さんが、走らせていたカワサキのMotoGPマシンですね!

中野:そう。フレームは幅があるんだけど、カウルはキュッと絞られていて、視覚的にはスリム。まず、そこがスゴく好き。

平嶋:好みのカタチをしてるってことなんですか?

中野:そうなのかな。僕は跨った時の視点で、大きく見えるバイクだと思い切って攻められないんだよね。だから、ZX-RRのライダーだった時は、スリムにして欲しいって言い続けてた。風洞実験とかで、数値的な空力を追求していくと、バイクって丸みを帯びた形になっていくんだよね。それじゃ、自分は戦えないんだって、開発の人に言っていたんだ。このNinja ZX-10Rは、僕の望んだカタチになってる。

平嶋:中野さんの心の声が届いたんでしょうか?(笑)

中野:どうだろう? でも、Ninja ZX-10Rの開発陣には、MotoGPを担当していた人が多くいるから、そういうこともあるかもしれない。そうだといいな(笑)。

平嶋:そういうことにしておきましょう(笑)。まずカタチが好きなバイクだと。

中野:いや、デザインもカッコ良いと思うよ。でも、それよりも攻める気分にさせてくれるサイズ感とフォルムが好きだってこと。

平嶋:なるほど。じゃあ、性能的にはどうですか?

中野:やっぱり車体がイイよね。さっき、フレームがしなやかだって言ったでしょ?

平嶋:はい。

中野:ちょっと補足すると、単純に剛性とかの話をすれば、一般的なストリートバイクからすれば、かなりフレームは固い。

平嶋:ですよね。

中野:けど、このバイクはレースを見据えたスーパースポーツだからね。それ前提で評価すれば、ものすごく扱いやすい。フルバンク中にタイヤからのインフォメーションが豊富だし、ギャップを拾っても車体がショックをキレイにいなしてくれる。そういう意味でのしなやかなフレームなんだ。

平嶋:レベルの高い話ですね。

正直、手にあまるハイスペックでもスポーツしたくなる!【平嶋夏海】
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中野:車体は基本安定志向だよね。その分、ライダーは思い切って攻めていける。SBKで6連覇したジョナサン・レイは、ブレーキングのスタビリティを重視するんだって。彼の望む車体、そのものだと思う。

平嶋:エンジンはどうですか?

中野:ピークパワーは言うまでもなく強烈。でも、それより評価したいのは、低中回転域のパワーデリバリーだね。メチャクチャ開けやすい。コーナーで一旦スロットルを閉じて、そこから開け直す時って、ドン突きが怖いでしょう?

平嶋:ですね。

中野:パーシャルからの開け口がホントに絶妙。パワー特性がフラットなこともあるけど、インジェクションの制御が素晴らしい。パワーの立ち上がりが、乗り手の感覚から微妙に遅れるところもあるんだけど、そこがシンクロした時は強烈に速いね。シフターのセッティングもハイレベルだし、電子制御の介入も自然。とにかく開けやすいところが最高。

平嶋:確かに、エンジンは扱いやすく感じました。パワーがもの凄いから、なかなか全開にするのは難しいですけど、パワーデリバリーはスムーズでスロットルを開けやすく感じました。

車体はボリューミーだけれどポジションは意外にコンパクト
リッタースーパースポーツを走らせた経験が少なく、緊張して試乗に挑んだ平嶋さん。過激な走りに怯んだ部分はあるようだが、ポジションは好印象「足着きは厳しいんですけど、ライディングポジションは意外なほどコンパクト。私の体格でもOKです」
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中野:でしょう? 乗りやすくて速いバイクなんだってば! 今日は緊張し過ぎて、思ったように走れなかっただけだと思うよ。

平嶋:そう言われると、挑戦したい気持ちになってきました!

中野:もう一度乗れば、きっと印象が変わるよ。ポイントは下半身だね。

平嶋:ハイッ! やってみます。

中野:しかし、いいバイクだな。また欲しいバイクが増えちゃった。

KAWASAKI Ninja ZX-10R

リバーススラントを採用したカウルは、Ninja ZX-10Rのアイコン。ヘッドライトの左右に、インテグレーテッドタイプのウイングレットを装備する
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フロントブレーキは大径φ330mmディスクローター+ラジアルマウントφ30mmピストン4ポットキャリパー。マスターシリンダーはブレンボ製だ
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吸排気バルブやヘダーズパイプがチタン製であることなど、贅を尽くしたエンジン。レースでの使用を見据え、さらなるチューニングにも対応可能だ
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軽量でスペース効率に優れる、ホリゾンタルバックリンクリアサスペンションはカワサキの独自技術。ショックユニットはSHOWA BFRC Liteを標準装備
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今やスーパースポーツでは標準的な装備となった、シフトアップ&ダウンが可能なクイックシフターだが、中野さんはそのタッチとフィーリングを絶賛
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ステアリングダンパーはオーリンズ製の電子制御式。走行状況に合わせ、減衰力を自動調整。低速域では軽快で、高速域では安定したハンドリングを実現
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エンジン水冷4ストローク並列4気筒DOHC4 バルブ
総排気量998cc
ボア×ストローク76.0×55.0mm
圧縮比13.0:1
最高出力203ps/13200rpm
最大トルク11.7kgf・m/11400rpm
変速機6段
クラッチ湿式多板
フレームダイヤモンド
キャスター/トレール25.0°/105mm
サスペンションFφ43mmフルアジャスタブル倒立フォーク
Rフルアジャスタブル・モノショック
ブレーキFφ330mセミフローティングダブルディスク+
ブレンボ製モノブロック対向4ポットラジアルマウントキャリパー
Rφ220mmシングルディスク+
片押し1ポットキャリパー
タイヤサイズF120/70ZR17
R190/55ZR17
全長×全幅×全高2085×750×1185mm
ホイールベース1450mm
車両重量207kg
燃料タンク容量17L
価格236万5000円

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