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【鈴鹿2&4レース 鈴鹿サーキット/打ち破るパワー】

全日本ロードの地殻変動は、鈴鹿山脈から吹き下ろす冷たい風とともにやってきた。名実ともに「絶対王者」の呼称にふさわしいヤマハファクトリーレーシングチーム&中須賀克行の高くて厚い壁が、ついに打ち破られようとしている。熱い勢いと巧みの走りがぶつかり合い、鈴鹿サーキットにカラフルな火花が散った。

打倒・絶対王者に燃えるチャレンジャーたち

鹿サーキットは、真冬の寒さに覆われていた。3月9日、土曜日の予選は低温による高リスクを理由にキャンセルされ、夜には雪が舞った。 

決勝が行われた10日も、朝からキリリと冷え込んだ。だが、全日本ロードJSB1000クラスのレースは、すこぶる熱かった。 

ここ数年のJSBは、ヤマハYZF-R1と中須賀克行に支配されていると言っていい。中須賀は’08年に初タイトルを獲得したが、以降、’23年までの16シーズンのうち、12シーズンでチャンピオンとなっている。現在、ヤマハだけがファクトリー体制を敷いていることを差し引いても、7割5分の勝率は圧倒的だ。 

左から2位水野涼(ドゥカティ)、優勝した中須賀克行(ヤマハ)、3位岡本裕生(ヤマハ)。今季のチャンピオン候補たちだ
左から2位水野涼(ドゥカティ)、優勝した中須賀克行(ヤマハ)、3位岡本裕生(ヤマハ)。今季のチャンピオン候補たちだ

しかも42歳の中須賀は、「まだまだ進化している自分を感じる」と、モチベーションを保っている。彼を指して多用される「絶対王者」の呼称は、決して比喩ではない。 

ーー中須賀を、ヤマハを止めろ。ーー 

この分厚く高くそびえ立った壁の陥落が、今シーズンはついに現実味を帯びてきた。 

加賀山就臣が、スーパーバイク世界選手権でチャンピオンを獲得したドゥカティのファクトリーマシン、パニガーレV4Rを得て、ドゥカティ・チームカガヤマを結成。ライダーは水野涼という強力な布陣で、JSBに乗り込んできたのだ。それだけではない。モト2での優勝やMotoGPへのスポット参戦経験がある長島哲太、スーパーバイク世界選手権やブリティッシュスーパーバイク選手権にフル参戦していた高橋巧、スーパーバイク世界選手権とモト2にフル参戦していた野左根航汰ら、世界のレベルを肌身で知るライダーたちが勢揃いした。 

ドゥカティ・チームカガヤマの水野も、ブリティッシュスーパーバイク選手権で2シーズンを過ごしている。そして長島、高橋、野左根、水野はいずれも全日本ロード各クラスでのタイトルホルダーであり、文字どおりの強者たちだ。 

長島哲太(ホンダ)、高橋巧(ホンダ)、野左根航汰(ホンダ)、津田拓也(スズキ)。いずれも世界を知る者たちだ。実力派ライダーが集結した今年の全日本ロードJSB1000クラスは、国内最高峰にふさわしい
長島哲太(ホンダ)、高橋巧(ホンダ)、野左根航汰(ホンダ)、津田拓也(スズキ)。いずれも世界を知る者たちだ。実力派ライダーが集結した今年の全日本ロードJSB1000クラスは、国内最高峰にふさわしい

開幕戦決勝は、四輪スーパーフォーミュラとの同日開催ということもあり、14周の短いレースだった。赤旗でのスタートやり直し、さらにはセーフティーカー導入時の赤旗でレース終了と、各ライダーたちが本領を発揮できた内容ではなかった。 

終わってみれば、いち早くスパートをかけた中須賀が優勝し、2位水野、3位に中須賀のチームメイトである岡本裕生。荒れた短いレースで、中須賀が強さを見せつけた。 だが、スタートと同時に猛然と中須賀に襲いかかり、抜き去るシーンも見せた水野や長島の姿は、強烈な印象を残した。6台ほどで形成された色とりどりのトップグループは、今後の混戦を想像させるに十分だ。 鈴鹿の冷風には、いずれ熱い旋風になるパワーの源が含まれていた。

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