【ソムキアット・チャントラ|イデミツ・ホンダLCR】”タイ人初のMotoGPライダー”【2025 MotoGP & Moto2 ライダーインタビュー】
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PHOTO/KUSHITANI, 2025 TRACKHOUSE MOTOGP TEAM,
MotoGP.com, Honda Team Asia 2024, Honda
TEXT/E.ITO
取材協力/クシタニ TEL053-441-2516 https://www.kushitani.co.jp/
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MotoGPマシン初走行の緊張と、興奮
バルセロナ公式テストの朝、LCRのピットの椅子に、ソムキアット・チャントラが腰かけていた。いつも素敵な笑顔を見せるチャントラ。しかし、そこがピットであることを差し引いても、表情がいかにもこわばっている。テスト後の囲み取材で話を聞くと、やはり緊張していたらしい。
今回のインタビューであらためて尋ねると、「MotoGPマシンに乗る前は本っ当に緊張していたよ」と頷く。
「でも、すっごく興奮してもいた。ナーバスだったのは、『本当にMotoGPバイクに乗るんだ』という気持ちだったから。信じられない気持ちだったんだ。だって、これが若い時からの僕の夢だったんだからね」
タイ人として初のMotoGPライダーは、そう言った。
そんなチャントラに、「MotoGPマシンを一言で表すと?」と尋ねると、「Fast(速い)」と即答した。
では、バルセロナ公式テストで、MotoGPマシンをどう感じたのか、具体的に語ってもらおう。

「最終コーナーに来て『よし、ストレートを全開で行こう』と思ったんだけど……。すごく速かったよ。バイクのGがすごくて、めちゃくちゃ速いんだ。それで思ったんだ。『このバイクを、フィーリングを少しずつ理解していこう』って」
ライドハイトデバイスといったMotoGPマシン特有の機能については、今季からホンダのテストライダーとなった中上貴晶にアドバイスを受けたという。中上は、チャントラのサポートとしてテストの日もピットに姿を見せていた。
「最初のテストの前日、タカと話をしたよ。タカは使い方や走り方、ブレーキディスクの温め方など、いろんなことを説明してくれた。そしてテストに臨んだんだ。
僕たちはフロントとリアにデバイスを持っている。少しずつリアのデバイスの使い方を理解しようと努めたよ。最初に使ったときはウイリーしているみたいだった。だって、リアは後方に沈んでいるし、フロント側がとても高く感じるんだ。
でも、2、3周も走れば『なるほど、ここではここ、ここではこのときに使えばいいんだな』とわかったし、慣れたよ」
2月のテストに向けて、チャントラはライディングスタイルの変更に取り組むという。これは前ページの小椋のインタビューに通ずるのだが、チャントラもまた、MotoGPではMoto2よりもコーナリングスピードが必要だと考えている。
「Moto2のほうがストップ&ゴー。MotoGPのほうが高いコーナリングスピードが必要だ。そして素早くバイクを起こしてグリップを得て、コーナーを立ち上がらないといけないんだ。だから、MotoGPよりも高いコーナリングスピードで走るライディングスタイルに変えないといけない。もっと体をバンクさせて、Moto2とは違う体の動かし方をしてみようと思うんだ」
チャントラは、「マルク・マルケスみたいなMotoGPライダーになりたい」と言う。
「夢が叶った」と言ったチャントラにとって、ここからは夢の先のストーリーだ。