1. HOME
  2. COLUMN
  3. 【Honda Racing 2024 Season Finalo】MotoGPライダーがファンに見せた”オフ”の顔

【Honda Racing 2024 Season Finalo】MotoGPライダーがファンに見せた”オフ”の顔

レースだからといって、ライダーがいつもシリアスな表情をしているわけではない。笑顔を浮かべても、それは本当のリラックスとは、少し違う。けれどこの日のライダーたちは、サーキットでは見られない、オフシーズンの姿だった。

PHOTO & TEXT/E.ITO
取材協力/本田技研工業 
0120-086819 
https://www.honda.co.jp/motor/

選手たちも大興奮の対決プログラム

2024年12月14〜15日にかけて、ホンダのウエルカムプラザ青山で「ホンダ・レーシング2024シーズン・フィナーレ」が行われた。例年はモビリティリゾートもてぎで「ホンダ・レーシング・サンクスデー」として二輪、四輪のライダーとドライバーが一堂に会してきたが、今回は会場を移しての開催となった。

様々なファンを楽しませるプログラムが行われたが、中でも「ライダー&ドライバーGOGO身体能力対決」では、ライダーとドライバーが協力してお題に挑戦。MotoGPライダーのジョアン・ミル、中上貴晶、そして本誌でもおなじみ中野真矢さんなどがタッグを組んだ。

二輪ライダーと四輪ドライバーが同じイベントでトークを繰り広げる。こうしたモータースポーツイベントはレアだろう
二輪ライダーと四輪ドライバーが同じイベントでトークを繰り広げる。こうしたモータースポーツイベントはレアだろう
MotoGPライダーとしては、中上、ミル、ルカ・マリーニ、ヨハン・ザルコが参加。各プログラムでファンを楽しませた
MotoGPライダーとしては、中上、ミル、ルカ・マリーニ、ヨハン・ザルコが参加。各プログラムでファンを楽しませた

早押し問題では、ミルは前のめりに回答に参加するし、問題を読み上げる前に早押しボタンを押す選手も続出。アスリートの性なのか、勝負事において選手たちの辞書に「負け」の二文字はないのである……たぶん。普段は見られない選手たちのオフの姿に、会場も爆笑の渦で大盛り上がりだった。

初日の最後には「中上貴晶 挑戦の軌跡」が行われた。今季からホンダの開発ライダーに就任する中上は、ホンダのMotoGPマシン改善への意欲を隠さない。フル参戦ライダーとしては最後のファンイベントだったが、中上の〝変わらない〞姿勢もまた、印象的だった。

会場には中上貴晶の特別展示が設けられ、RC213Vやレーシングスーツ、ヘルメット、トロフィーなどが展示された
会場には中上貴晶の特別展示が設けられ、RC213Vやレーシングスーツ、ヘルメット、トロフィーなどが展示された
「中上貴晶 挑戦の軌跡」では、後任となるソムキアット・チャントラ(右)から、中上貴晶に花束が手渡された
「中上貴晶 挑戦の軌跡」では、後任となるソムキアット・チャントラ(右)から、中上貴晶に花束が手渡された

ライダーならではの観点で手助けをしたい

2024年シーズンをもって、中上貴晶はMotoGPのフル参戦ライダーを引退した。久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしている……かと思いきや、そんなことはないという。

「拠点を日本に戻すので準備を進めないといけないし、来週にはすでにテストを控えているので、その準備もあるんです。(引退して)シーズンオフが変わるかな、と思いましたが、今のところ大きな変化はなくて、むしろオフが短いイメージですね」

このイベントの翌週には、マレーシアのセパンでのテストに向かい、初めてテストチームに合流して、今季に向けたミーティングや、いろいろな比較、確認を行う、ということだった。

もちろん、変わったことはある。その一つが、プレッシャーだ。

「レースでは大きなプレッシャーがあって、ずっとそういった生活をしてきました。今はレースのプレッシャーはありません。開発でバイクをよくしていかないといけない、というプレッシャーはありますが、レースのプレッシャーとは全く違います」

会場に置かれたイデミツ・ホンダLCRカラーのRC213Vと中上の写真撮影の機会が設けられた。このカラーリングとLCRのシャツを着た中上の組み合わせは、おそらくこれが最後

中上は、今季から開発ライダーを担うが、新しい自分の役割に非常に前向きだ。開発ライダーとして精力的に取り組んでいこう、という意気込みが随所に見えた。

「僕はまだスピードがあると信じているので、そのスピードも見せないといけないとも思っています。日本のメーカーで、日本人で、スピードがある僕が開発に携われるというのは、チャンスだと思うんです。HRCのテストチームがどういう風にやってきたのか、やっているのか肌で感じたいです。気付いた点ややり方について、改善案をどんどん伝えて、スピードアップにつなげたいと思っています」

2月、マレーシアのセパンで行われるテストでは、走行はしない予定だが、現地には行くという。

話を聞いたのは、イベント中に設けられた中上の囲み取材だ。テストライダーとしての仕事に、中上は積極的な姿勢を示していた
話を聞いたのは、イベント中に設けられた中上の囲み取材だ。テストライダーとしての仕事に、中上は積極的な姿勢を示していた
【中上貴晶】

速さのある僕が開発に携わるのは、チャンス

「レギュラーライダーたちの、現場のコメントを聞きたいという、僕自身の気持ちがあります。冬の間に2025年マシンの方向性をしぼって、(セパンで)レギュラーの3人が乗った時、僕とのコメントの違い、彼らが何を求めているのか、何が大きな問題なのか、改善点があるのかを直接聞いて、テストチームに落とし込んでいきたいんです。ライダーとエンジニアではニュアンスの違いがあったり、受け取り方も違うと思うので、ライダーならではの観点で、手助けできたらと思うんです。そういう仕事として、(セパンに)行きます」

その種類は2024年とは少し違うけれど、中上は今季も、サーキットで役割を果たし続ける。

新しい発見多数電動はすごく楽しかった!

今回のイベントでは、屋外でトライアルのデモンストレーションが行われた。その1台は、2024年の全日本トライアル選手権の終盤3戦に投入された、電動トライアルバイク「RTLエレクトリック」である。このバイクを走らせたのは、2021年に世界選手権から引退した藤波貴久。藤波はこのバイクで、参戦した3戦全てで優勝している。

イベント中の囲み取材で、電動トライアルバイクについて話を聞いた。

「(電動と内燃のいちばんの違いは)トルクです。スタートの(トルクの)出方が電動の武器でもありますが、マッピングで調整するのが難しいところでもあったんですね。そこを集中してマッピングでセッティングを合わせました。

この写真を撮影したとき、藤波はバイクのパワーをオンにしていた。排気ガスの出ない、音がない電動だからこそのシチュエーションだ
この写真を撮影したとき、藤波はバイクのパワーをオンにしていた。排気ガスの出ない、音がない電動だからこそのシチュエーションだ
【藤波貴久】

電動トライアル車の可能性は高い

課題としては、内燃機関のバイクよりも反応がいいんですが、連続でのコースになったとき、1回目の反応と、2回目、3回目となると反応が鈍くなる方向になるので、そこをもう少し改善していかなければいけないな、と3戦走って思いました。

トライアルについては、電動化の可能性はすごく高いと思います。乗っていていろいろな発見があって、すごく楽しかったんですよ! 内燃機関のバイクにはない新しい行き方や、内燃よりも簡単に行けるところがたくさんあったんです。(スペインでは)トライアル車としては、電動はすごく売れています。お子さんがバイクに乗るとき、音が怖いと言う子もいますが、電動ならとっつきやすいんです。トライアル、モータースポーツを始めるきっかけとしては、僕はいいんじゃないかと思います」

関連記事