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【宇川 徹】そうそうたるライバルと戦った華麗なるライダー人生

TEXT&ILLUSTRATIONS/M.MATSUYA

現役時代の宇川徹さんは、その速さで際立った存在感を放っていました。僕の中では岡田忠之さん、伊藤真一さんに続く、日本人ライダーとして期待すべきライダーだと思っていました。ただ、怪我が多かった印象があり、かなり危うい怪我もしていました。

しかし宇川さんはレースを走り切り、キチンと上位入賞してポイントをしっかり稼ぎ、全日本チャンピオンを手にする、賢いライダーに見えていました。

今回の宇川さんの考察に至り、驚くべき真実に行き当たりました。’02年から始まったMotoGPクラスですが、なんと日本人として初優勝したのは宇川さんだったのです! さらに気付いたのは、宇川さんが戦ったライダー達のラインナップが凄かったのです。

当時の宇川さんのライバルは、ホンダの日本人ライダーだけを見ても実力派ばかりでした。このメンツの中から抜きん出るのは、どれだけ大変だった事でしょう。

宇川さんは’96年から世界GP250にフル参戦を始めています。調べてみると、これがまた凄い選手と戦っていたのです。原田哲也さん、青木宣篤さん、加藤大治郎さん、マックス・ビアッジさん、オリビエ・ジャックさん、沼田憲保さん。まだまだ多くいて、枚挙にいとまが見つかりません。

さらに青木治親さん、辻村猛さん、中野真矢さん、松戸直樹さん、玉田誠さん、バレンティーノ・ロッシさん、ケニー・ロバーツJr.さん、アレックス・バロスさん。そしてノリック阿部さん、セテ・ジベルノーさん、アレックス・クリビーレさんなどなど、そうそうたる世界GPのトップライダー達と戦い続けていたのです!

改めて考察してみましたが、もう半分ひいています……。もし自分が宇川さんの立場になってしまっていたら、もう怖さばかりが先に立って、何もできなくなってしまうでしょう。

宇川さんのレースキャリアは、相当長いものでした。’89〜’05年までの17年間を現役選手として走り続けています。

’92年に国際A級に昇格し、ホンダ系の有力チームである、九州のチーム高竹に所属していました。そこは凄いチームで、宇川さんの他にも加藤大治郎さん、玉田誠さん、清成龍一さんも出身者です。

NSR250を駆り、’93〜’94年に連続で全日本チャンピオンとなり、’96年には晴れて世界GPに昇格。GP250にNSR250を擁してフル参戦となりました。1年目からランキング5位に入り、’99年には2位を獲得しました。

そして、’01年から当時の最高峰クラス、GP500に昇格したのです。その間の’00年には鈴鹿8耐において、加藤大治郎さんとのペアで優勝も果たしています。ホンダの中では鈴鹿8耐の優勝は、GPでの1勝と同格と言われており、宇川さんの評価は高まっていきました。

宇川さんの快進撃はさらに続き、MotoGP元年に当たる’02年から、ホンダが開発した4ストロークマシンRC211Vを駆ってロッシさんと共に参戦を始めています。そして、このシーズンには前述の通り、早くも第2戦南アフリカGPにおいて、日本人ライダーとして初めての1勝を挙げて見せたのです。

世界GPでは、NSR250からNSR500、そしてRC211Vを乗り継いでいます。何とも羨ましくも思います!

宇川さんは’03年シーズン終了と同時にMotoGPから離脱する事となり、’06年にレーサーとしては引退となりました。その3年間でホンダの社員となり、各種マシンの開発を担当しながら、鈴鹿8耐では2度の優勝を飾り、そのレースキャリアを羨ましいくらいの有終の美で締めくくりました。

その後はHRCの監督も経験し、自らはテイスト・オブ・ツクバにプライベーターとしてCB1100R改で参戦しており、純粋にレースを楽しまれているようです。

宇川さんのライディングは実に綺麗な乗り方でした。腰は引き気味でリアステアに見える腰の位置となっていました。腰が引き気味ですから外足は綺麗にマシン側面に張り付いていました。ステップに掛かる外足は、意識的に体重を掛けているわけではなく、自然に足をステップに載せている感じでした。

まるでリーンウィズにも見えたフォームでしたが、腰は半尻分、イン側に入っていました。お尻は下には落ちず、横にズレていたので、結果的には頭の位置は高めにあり、腰も自然に伸び、ナチュラルな雰囲気の綺麗な乗り方でした。

実は、このライディングフォームは岡田忠之さんや清水雅広さんと非常に似ており、岡田さんと一緒に走るタイミングでは、まるで双子(?)のようにも見えていました。この時期のNSR250は、そういう乗り方のライダーが速かったのでしょうね。

宇川さん、岡田さん、清水さんはお三方とも、腰を引き気味に乗っていましたが、清水さんだけは上半身の使い方が違っていました。しかし、下半身の使い方はお三方とも同様に見えていました。このような言葉はないと思いますが、「ホンダ乗り」という言い方が的を射ている印象を持っています。

僕のようなレースヲタクからすると、もし自分がプロレーサーになったなら、宇川さんのようなレース人生を送ってみたいなぁ! と思っていました。

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