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カスタムパーツの基礎知識【ブレーキキャリパー】

カスタムはバイクの醍醐味のひとつ。もっと愛車を楽しくするために、パーツ交換の「効能」から学ぼう!ブレーキキャリパー編

ブレーキのカスタムをさらに追求するなら、ブレーキレバーやマスターシリンダー、ディスクの次に導入を検討したいのが、アフターマーケットのハイエンドなブレーキキャリパーだ。

近年のスーパースポーツには、ブレンボ製などの高性能なキャリパーが標準装備されていることも多いが、量産タイプとアフターマーケットのハイエンド製品では、剛性や作動性、冷却性など、あらゆる点でランクがひとつ上になる。ダイレクトでコントローラブルなブレーキタッチは、スポーツライディングの質を高め、上達にもつながるはずだ。

またブレーキキャリパーは、ドレスアップパーツとしても効果的。削り出しなら、一般的な純正採用品の鋳造タイプにはない切削痕が高級感をもたらすし、製品によっては表面処理やペイントにより、存在感を高められるケースもある。愛車の足元に個性をプラスできるのも、ブレーキキャリパーカスタムの魅力だ。

市販のキャリパーにはストリート向けとレーシングタイプがあるが、今回はストリート向けを中心に紹介している。レーシングタイプはダストシールがないことがほとんどで、フィーリングには優れているが、頻繁なメンテナンスが必須となる。一般ライダーが導入するのは、あまり現実的でないと認識しておきたい。

基礎知識① 各部の名称

ブレーキキャリパーの構造については下でも説明するが、近年のスポーツバイクに使われる一般的な対向キャリパーの場合、構成部品と各部の名称はだいたい下の写真のようになっている。

マスターシリンダーからホース内部のブレーキフルードを介して油圧が伝わると、ピストンがコンマ数㎜単位で突出し、パッドがディスクに押し付けられて制動力を生む。

ブレーキを解除すると、キャリパー内部のピストン円周上に密着するように配されたオイルシールが元に戻ろうとする弾性により、ピストンが少し引っ込む。これが超基本的な原理だ。

パッドスプリングは、ブレーキパッドを押さえて振動によるブレーキの鳴きを抑止したり、パッドピンの緩みや脱落を防いだりする機能を持つ

基礎知識②アキシャルとラジアル

市販二輪車では’69年型ホンダ・CB750フォアが初採用したフロントディスクブレーキ。その初期は、キャリパーがフロントフォークの前側に装着されていたが、ハンドリングへの影響を減らすことや確実な作動性を得ることなどを目的に、10年ほどでフォークの後ろ側に装着されるようになった。

それから約20年間、アキシャル(取付ボルトがアクスルシャフトと並行)と呼ばれる装着方法のみだったが、’99年にブレンボが、ロードレース世界選手権の最高峰クラスだった500㏄クラスのスズキワークスマシンに、ラジアルマウントを世界で初めて導入(取付ボルトがアクスルシャフトに対して放射状)。その後、’03年型のカワサキ・ニンジャZX-6Rがこの構造を市販車に初採用した。

ラジアルマウントのメリットは、剛性を高められる点にある。制動時のねじれに強く、ブレーキ性能を高めやすい。

フローティング式
アキシャルタイプには、いわゆる片押し式(浮動式)もある。ピストンが片側のみにあり、キャリパー自体がスライドしながら作動する

基礎知識③製造方法

アフターマーケットの二輪用ブレーキキャリパーには、本体がひとつの部品になっているモノブロック構造と、ボディの左右をボルトで締結した2ピース構造があり、それぞれに鍛造アルミ合金の塊を削り出した製法を用いたものと、型にアルミの液体を流し込んで成型してから細部を整えた鋳造がある。

モノブロックの長所は、剛性に優れて制動時にキャリパーが左右に開こうとする力を抑えられる点や、軽量化しやすい点。逆に2ピースは、加工の制約が少ないためボディをコンパクト化でき、コストを抑えられるなどのメリットもある。

ただし近年は、設計を進化させることでデメリットを補い、モノブロックに迫る剛性や軽さを実現した削り出しの高性能2ピースタイプも多い。

レース用は削り出しのモノブロック
削り出し/2ピース
鋳造/モノブロック

基礎知識④取り付けのピッチに注意

ブレンボが、WGP用に初めてラジアルマウントキャリパーを開発したとき、剛性と硬度の確保に最適という判断から、取り付けピッチは108㎜(4.25インチ)に設定された。

その後、市販車にラジアルマウントを採用するにあたり、ブレンボはキャリパーのサイズダウンを目的にピッチを削減。そして欧州の二輪メーカーでは、100㎜ピッチが普及した。しかし日本のバイクメーカーは、レース用と公道用で取り付けのサイズは共通化させておくべきとの判断から、市販車にも108㎜ピッチを採用。これにより、ふたつの異なる取り付けピッチが世界標準となった。

ちなみにヤマハはかつて、YZF-R1などに130㎜ピッチの純正6ポットキャリパーを使ったこともある。

ラジアルマウント
アキシャルマウント

基礎知識⑤冷やすのがトレンド

ブレーキはある程度発熱することで適正な制動力を生むが、サーキット走行のハードブレーキングで熱容量がオーバーすると、今度は効きが悪くなり、フェード現象でブレーキレバーを奥まで握らないと効かないなどのトラブルにもつながる。

大昔のフロントキャリパーは、レーサーでもフロントフォークの前側に装着されていたが、現代はフォークの後ろに位置し、走行風は当たりづらい。そこでレースの世界では、キャリパー周辺にダクトを装着して、走行風を積極的に当てて冷やすパーツが普及するようになってきた(レギュレーションで禁止されているクラスもあり)。また、キャリパーの設計時に表面積を増やすフィンを設けるなど、冷却のための工夫は他にも取り入れられている。

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