リプレイスのメリットを知る|カスタムパーツの基礎知識【ブレーキパッド】
カスタムはバイクの醍醐味のひとつ。もっと愛車を楽しくするために、パーツ交換の「効能」から学ぼう!
自分の走りと好みにマッチする製品を探そう!
スポーツライディング好きにとってブレーキパッドは、もっともお手軽な〝チューニングパーツ〞だ。少なくとも近年のミドルクラス以上のスポーツ系バイクなら、純正ブレーキに制動力不足を感じることは、そのままの状態でレース参戦でもしない限りまずあり得ない。とはいえブレーキの制動力がもっと増せば、あるいはコントローラブルになれば、よりアグレッシブに気持ちよく愛車を操れるようになる。前号までに特集したキャリパーやディスクもそれを実現するために有効だが、パッドならもっとリーズナブルにフィーリングや性能を調整することが可能。しかも、パッドは走行によっていずれ消耗するものなので、交換のタイミングで純正以外の製品を導入すれば、メンテナンスとカスタムが同時に完了する。
ミドルクラス以上を中心とした近年のスポーツバイクには、シンタードパッドが純正採用されていることも多いが、同じシンタードでもメーカーや製品タイプにより素材の配合はさまざま。そしてこれが、制動力だけでなくフィーリングに違いを与える。自分好みの効き味を見つけられたら、ブレーキングの安心感や楽しさは間違いなく向上するし、ライディングの上達にもつながる。
幸いにも、ブレーキパッドはそれほど高くない。好みのパッドに出会うまで、何種類も試してみよう。
基礎知識①:「効き」だけじゃない!パッドは調整パーツ
「入力に比例して効力が増す」とか「ブレーキング初期からガツンと効く」とか「レバーを奥まで握り込んだときに強力な制動力が得られる」など、ブレーキパッドはメーカーや製品タイプによってさまざまな特性がある。どんな仕様を好むかはライダーによって異なるし、サーキットなのかツーリングなのかといった走行環境によってもベストマッチな特性は違う。もちろんパッドごとに制動力にも差が生まれるのだが、それ以上にフィーリングの違いを得られるのがパッド変更の魅力だ。
好みの製品に出会ったときは、その銘柄を覚えておくと、愛車が変わっても同じような感触を得られることが多い。
基礎知識②:代表的なパッドの素材
一般的に市販されるバイク用のブレーキパッドには、レジン系(オーガニック)と焼結シンタード系(メタル)がある。
レジン系はアラミド繊維などに摩擦や潤滑を高める物質を混ぜ、樹脂を結合剤としながら焼き固める。その他の材料のうち配合率が高い物質の名称に由来して、セミメタルパッドやセラミックパッド、カーボンパッド、有機化合物を中心とした摩擦材を使ったオーガニックパッドなどと呼ばれることもある。
最近の主流となっているシンタード系は、銅を基材としながらカーボンやセラミックなどの摩擦向上材を混合して、レジン系よりも高温かつ高圧で焼結して(焼き固めて)製造する。成分の大半が金属系だ。
摩擦材の配合はブレーキパッドの性能や特性を決定する重要な「レシピ」。細かい配合比率は各社とも秘密にしているが、基本的にはこのような2種類のパッドが存在する。
基礎知識③:パッドの効力を見分ける目安
純正ブレーキパッドのバックプレートには必ず、米国のA MECAという自動車部品の登録機関によって定められた摩擦係数の評価コードが、C〜Hのアルファベット2文字によって記載されている。例えば「FG」などのような表記で、左側は常温時、右側は高温時の摩擦係数を示している。つまり、最高グレードは「HH」となる。
基本的な解釈として、摩擦係数が低いE以下のクラスは、材質が柔らかくて摩耗が早め。また、社外品のブレーキパッドにもこの評価コードを記載している製品は多くあり、それらを含め、HHであれば材質が硬くて長持ちする傾向と判断できる。
ちなみに、一般的な純正パッドの特性は、柔らかい素材だと効きはいいが摩耗は早く、硬いと長持ちするがローター攻撃性が高くてノイズが発生しやすい。ただし最新スポーツモデルの場合、ハイグレードなパッドが標準装備されている車種も少なくない。そして社外品のパッドは、効きがよくて摩耗が少ない材質の採用が追求されている。
評価コード | 摩擦係数 |
C | 0.15以下 |
D | 0.15~0.25 |
E | 0.25~0.35 |
F | 0.35~0.45 |
G | 0.45~0.55 |
H | 0.55以上 |
基礎知識④:メンテナンスの際は「アタリ」に注意
どんなに高性能で自分好みのブレーキパッドを使用していても、キャリパーが汚れていては本来のタッチやリリース感を得られない。そのため、丸洗いを基本としたキャリパーの清掃は、パッド交換と同じくらい重要だ。
キャリパー清掃時にはブレーキパッドを脱着することになるが、パッドを取り外したときはバックプレートに油性マジックで、どのキャリパーの左右どちらに装着されていたパッドなのか書き込み、装着時は元の位置に組み付けることを徹底したい。
それぞれのブレーキパッドは、微妙に押され方やディスクとの平行度合いが異なっている。違う場所に戻すと、ディスクとの〝アタリ〞が変わってしまい、しばらくの間はブレーキの効きやタッチが悪くなってしまうことがあるのだ。