Z900RS SEカスタムの実力に迫る|Build by K-FACTORY
先月号で紹介したケイファクトリーのZ900RS SEカスタム。今回は“世界最早でカスタマイズ”されたマシンの“世界最早インプレッション”を敢行。レーシングライダー高田速人さんが、サーキットを攻める!
ケイファクトリーのZ900RSカスタム
低く構えたセパレートハンドルに、強さを主張するフロントまわり。“攻めろ”と、マシンが要求しているようにも感じられるケイファクトリーのZ900RS SEカスタム。ならば、その挑戦に応えよう。試乗を担当するのは高田速人さん。全日本や鈴鹿8耐といった、トップクラスのレースで多くの実績を持ち、メカへの造詣も深い。カスタムマシンを走らせるには、この上ないスキルを有するライダーだ。
走行を終えた高田さんの、最初のコメントはパワーフィールについて。「マフラーがいいですね。少しおかしな表現になりますが、パワーの出方に“キャブレター感”があります。キャブレターは精密な制御は苦手ですが、その分ファジーでスロットルの開け始めなどが扱いやすい。このマフラーは、その辺りのフィーリングがキャブレターっぽいんです。扱いやすく、開けやすい。楽しいですね。高回転まで気持ち良く回ってしまうので、すぐレブリミットに当たってしまうのが残念です。もっと伸びそうですし、レブリミットを上げたくなりました」
さすが、マフラーはケイファクトリーの看板パーツ。Z900RSユーザーからも、多くの支持を得ているだけあり、完成度は折り紙付きだ。だが、このマシンで気になるのは、オーリンズ製フロントフォークとセパレートハンドル化だろう。果たして、その効果は如何なものか?「フロントフォークは、やはりしっかりと減衰が効くところがいいですね。ノーマルとはレベルが違う。アンダーブラケットがボルト3本留めなので、剛性過多を気にしていたのですが、立ちが強いといった悪癖もない。実は、セパレートハンドル化されていることで、走らせる前は少し身構えていたんです」
セパレートハンドル化は、ネイキッドバイクではカスタマイズの定番手法のひとつ。何か問題があるとでもいうのだろうか?
「スタンダードのポジションは、メーカーが膨大な時間をかけ、テストにテストを重ねて決定したものです。ライダー個々の好みに合うかは別にしても、非常に高い次元でバランスしています。Z900RSは元々アップタイプのバーハンドルを採用しています。そういったモデルをセパレートハンドル化すると、ライダーからの荷重バランスが大きく変化しますから、ハンドリングに悪影響を及ぼす例は少なくありません」
高田さんは、市販車を改造して戦うプロダクションレースの経験が豊富で、マシンのセットアップを数多く手がけてきた。ある意味で、メーカーが作り上げたバイクのバランスを崩し、再構築する作業であり、その難しさを知り尽くしている。
「このセパレートハンドルは、ポジションの設定がかなり好印象です。現代のスーパースポーツ的な絞りが浅めで、タレ角も小さい。その上で、低すぎないところがいい。ネガティブ要素は感じられません。ハンドルだけの効果ではありませんが、マシン任せではなくライダーが積極的にコントロールして楽しめる。
最初はヒザを閉じて走っていたんです。その時は、マシンを寝かせてから、ステアリングが切れてくるタイミングにズレを感じていました。ヒザを出してハングオンしてみると、そのタイミングがしっくりきました。バイクが“勝手に曲がる”のではなく、ライダーが意思を持って“曲げる”ことができる。サスセッティングもまとまっていますし、スイングアームの変更も効いているのでしょう。リアタイヤが蹴り出すような、トラクションを感じられます。攻めて楽しいバイクですね」
Z900RSは誰もが気軽に楽しめるネイキッドとして評価が高い。けれど、枠からハミ出したい、違う世界を見たいという欲求は誰にでもある。よりスポーティに生まれ変わった、ケイファクトリーのZ900RSカスタム。惹かれずにはいられない。
足まわりの構成を大胆に変更しながらバランスに優れた高い運動性を実現
KAWASAKI Z900RS
ノスタルジックなフォルムを持つが、最新技術で作られているZ900RSを、ツインショック&正立フォーク化。その走りは個性的かつ魅力大だ。
あえて選んだ前時代的な車体構成は後退ではなく個性
「Z900RSのようなレトロテイストを取り入れたデザインのバイクは、スタイルの面ではツインショックの方がしっくりきます。やっぱり、カッコイイですよね」
と、まずはツインショック仕様のルックスが気に入った様子の高田さん。では、走らせての感触はどうだったのか?「面白いですね。当たり前といえば当たり前ですが、ちゃんとツインショックの乗り味になっている。古臭いわけではないんですが、車体の挙動にどこか懐かしいものを感じます。リアショックユニットが、かなり深くレイダウンしてマウントされていますから、サスペンションが入る方向の時に動き過ぎるくらい動きます。ですが、ダンパーがしっかり機能しているので、反発する時も唐突に伸びたりはしません。スイングアームの剛性も関係していると思いますが、スロットルを開けるとパワーを受け止めてトラクションに繋げてくれます」
高田さんは、ツインショック仕様のZ900RSは初体験だったが、完成度の高さにおどろいた様子。「足まわりの軽さを感じますね。タイヤの転がり感がものすごく強い。さすがカーボンホイールですね。
フロントフォークが正立になっていることも影響しています。倒立フォークは剛性面などで多くのメリットがありますが、トリプルツリーも含めて大柄になりますから、ステアリングのモーメントも大きい。正立フォークはパッケージがコンパクトですから、その分反応が俊敏になります。それも含めて、このバイクのハンドリングは素晴らしく軽快です。
ある意味で、車体を構成する要素が前時代的です。懐かしさを感じるのは、そのせいでしょう。けれど、独特の乗り味には捨てがたいものがありますし、軽快さからくる車体の反応の素早さはスポーツバイクとしての可能性を感じます」 あえて、オーセンティックな車体構成を選びながら、スポーツ性はしっかりと確保。Z900RSカスタムの世界を広げる一台だ。